【目に見えるものは信じない】
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昔、両親と暮らしていた国で──
起こった大震災。
両親がそんな国で──
小さな教会の神父として──
そして一人の犯罪者を会心させるために、
その教会で働かせた。
そんな両親を男は裏切り──その手にした銃口を向ける。
そしてそんな時に起きた震災は──
そんな両親を瓦礫の下敷きにした。
そして私はその両目を失い──
その男だけが何事もなく生かされた。
神は──ずっと崇め使えてきた両親を見捨て──
そんな両親の与えたチャンスをも無駄にした男だけに救いを与えた。
そして──
そんな日々を忘れさせてくれる──
そんな私の両眼を治すため医学の勉強をする男性に出会った。
愛していた。
彼もそんな私を愛してくれた。
だけど──
一人のお金持ちの男が──
娘との結婚。
そして、その財産をすべて彼に捧げ、
そんな彼とその技術を買い取った。
目は見えなくても──見えていたと思った感情は──
簡単に──変わってしまう。
それは嘘だったのか?どれが本物だったのか──私がただ錯覚していたのか?
見えない──もう何も──
見たくない──もう何も──
理解などしたくはない──
醜い世界──醜い感情──
あぁ──染まっていく──壊れていく。
そんな私はリエン様に拾われ──
それでも満たされない私は──
あの催稀という男に──に壊された──
もう二度と──開くことのない瞳を私は開く。
─────
「神を信じますか?己の見るものだけを信じますか?」
もう何十年と開くことなかった瞼。
ゆっくりと──産まれて初めて開くように──
「私はそのどちらも信じません──」
黒い網膜に真っ白な瞳。
通常とは異な逆の色をしている。
「あのクウドという男から──貰ったとでも言うの」
「──あぁ、“ミエル”──見たくないものも──アァ──アァ──」
まるで、感情を制御できていないかのように、ルミネは白い瞳を泳がせながら声を漏らす。
「ぐっ──まぢ?」
咄嗟に回避はしたが、明らかに錯覚し見失ったはずのノアの居場所を見つめる様に白い瞳がノアを捉え、手にしたクナイをノアの方へと投げる。
同時に──上空からのタツキが放った、コマ、拘束しようと放った糸も逆手に持った数本のクナイでコマを叩き落し、糸を切り刻む。
自分の目で“見えないモノ”──カラスの目で“自分には見えないモノ”を見る。
「ルミネさん──人って臆病なんだよね──」
タツキはそんな完全に不利となった状況で──冷静にその真逆の色をするルミネの瞳をじっと見つめる。
「別に──ルミネさんだけがって訳じゃない、でも──あんたは信じたくないんじゃない、見たくないわけじゃない──“見たモノ”を信じるのが怖いだけさ」
「えーーー、どういうこと?」
「誰よりも──見えないことに恐怖している、見ることで安心したいんだ──でもそれが“本物”じゃないことに恐怖する」
「アァ──信じている、信じていた──神もあの人も──でも、信じたものは誰一人──私をタスケナイ──ワタシヲミナイッ」
「人は嘘を着飾る──でも、その嘘を永遠に着飾れるならそれは“偽物”だ──」
「ようするに──自分自身も錯覚してるってことでしょー」
「──感情なんてものは状況に支配されているのさ、どんな善人だって、拳銃を持たされ、目の前にナイフを突きつけられれば、銃弾をぶっ放す」
タツキは左手に持った仮面で顔を隠し、右のてのひらで鉄砲の形を作り、人差し指を上に少し傾ける様に動かす。
「──その感情のどちらかが“本物”かなんて本人にもわからない、だから──人間は嘘を着飾るのさ」
「ウソ──ウソ──ウソ、そんな言葉で全部済まそうと思うなッ」
両手に数本のクナイを持つ。
「逆さどれ──」
タツキはルミネではなく──カラスの影の視界を逆さにし、投げられたクナイから視界から外す──相手に自分の視覚の情報を共有する能力。
そんな数多の視覚の情報を一気に送り込まれれば──情報過多で脳が自分の本当の視覚を処理できなくなる、それでもカラスの影にそのクナイを視界に映させなければ、自分の視覚だけがクナイを映している。
「っ!?」
ノアもそんなタツキの意図を読んでいたが──
ノアもタツキもかろうじてガードしたものの、クナイをまともに体に受ける。
「“私の視覚”をあなたたちに“共有”しました──」
「見えるものが見えない──逆にあの鳥でルミネさんが見えていたモノが見えなくなったことで、クナイが見えなかったってことー?」
「見えないものに恐怖しなさい──私はそう生きてきた──見たくないものだけを見てきた──」
「わかるよー、私も──見たくないものから目を背けて、“ありもしないもの”だけを見てきたからさーーー」
ノアがルミネに瞳を向ける。
「“錯覚”することでなりたい自分を“演じてきた”──」
白い瞳がノアを捉える。
「自分の“不幸”を言葉にする人が羨ましくて──許せなくてねぇ」
タツキの瞳もノアに向く。
「でもさ、誰かになりたいとしていた私の錯覚、そして今のルミネさんを見て気づいたんだーー」
そんな二人にノアは見つめられながら言葉を続ける。
「幸せから転落することが不幸なんじゃない──今の自分の方が“普通”じゃない、そう思い込みたいから不幸だと“錯覚”するんだね」
「──物事の比較の話です、私は──私はっ」
「私は──私の抱えていた悩みは、さっきの白い小竜に食べられてしまったらしいからね、もう自分が不幸なのかなんてよくわからないんだけどね」
「逆さどれ──」
「そんな──あなたの能力──私には」
ルミネが手にしたクナイが、暗闇の中で光、カラスの影の目線が一気に向かう。
「──!?」
そんな何十羽も居るカラスの影、その何十もの視界を共有した上でその視界の情報を処理できていたルミネがその視界に戸惑う。
いつの間にか、カラスの影たちの足に糸を巻き付けられていた。
そんなカラスの影たちが一斉に天井へと吊るされる。
「目に見えるものは信じない──そうだったよね?」
タツキはその戸惑う白い瞳を見ながら、言葉にする。




