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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【壊れろよ、弱者らしく】

 「────トウカ?」


 そんな心配そうな水無瀬の声──

 振り向くと──

 トウカはまるでシュウに殴られたように──


 「てめぇ──ッ!どうなってるッ」


 「あはははっ──どうした?構わないだろ──仲間たにんがどうなってもさ」


 「殴れよ──今度は女でも殴ってみるか?」

 シュウが問い詰めるように返刃の左手で胸ぐらをつかみ、振り上げた右手の手甲を振り下ろすことを躊躇う。


 「離せよッ」

 掴んでいた──左手を返刃が振りほどく。


 「ぐぅっ──」

 科学室の椅子、丸椅子の脚を掴み──それでシュウを殴る。


 「ぼくがお前にした攻撃がぼくに返ることはない──だが、どうだ?少しは理解したかい?殴られることしかできない者の立場ってのをさ?」



─────


 5年ほど前──

 中学に入って──すぐに弱者ぼくはそんな問題児ぼうりょくの標的になった。


 そんな学園のルールも教師おとなも──誰もそんなぼくを守りなどしない。

 ちょっとした悪ふざけ──そんな調子で笑いながら──同じ人間では無いかのように──遊びあきた玩具でも壊す様に──


 同じクラス──猫背、なで肩──背はぼくよりも少し低く、少しぼくよりも体格が良いくらい。


 あぁ──今日の玩具はそっちか。

 ぼくと同じ匂いのする男はあっという間に──標的になる。

 ぼくは──そんな男に哀れながらも、今日の無事に感謝する。


 だが──


 「がっ──おいっ、大丈夫かっ、壊島ッてめーー」

 一人の男をそのぼくの分身のように見えた男は殴り飛ばす。


 結局、そいつは多人数に囲まれボコボコにされているのに──


 「てめぇ──壊島──」

 そいつは一度も──壊れることなどなく──何度床に叩きつけられようが──


 「かかってこいよ──ひきょーもんども、俺はまだ負けてねーぞ」

 そいつは何度も起き上がり──次の日も、次の日も──壊れずにその暴力に暴力で立ち向かう。




────


 「お前は結局──そっち側だっただけだ──お前には耐える事しか許されない者の気持ちがわからない立場だっただけだ──」


 「ごちゃごちゃと──何言いたいのかわかんねーって言ってるだろ、もやし野郎──くだらねぇ逆恨みしてんじゃねーよ、それに他人なかまを巻き込むんじゃねーよ──殺すぞ」


 「やってみせろよ──暴力は暴力で返す、どうした、君と同じやり方だろ?何が違う──言ってみろよ?」

 「おっと──動くないでよ、水無瀬さん……ぼくは君の事も同類だと思っていたんだ──でも、結局……君もそっち側──だったみたいだけど」


 「あぁ──不幸だ……ねぇ、トウカ──私、あれと一緒にされたよ」


 「ノックアウト中の人間に言ってるんじゃないよ──」

 意識を失っていたと思っていたトウカが反応する。


 「たく──俺に今の結界の能力が無かったら、こんな風にノックアウトされていた訳か」


 「ねぇ、委員長──返刃の能力、先生に飛ばしてもらうってのはどう?」

 名案が思い付いたというようにナギサは夢咲ユイに言う。


 「ほら、さっき──先生、能力を和らげられるみたいなこと言ってたじゃん」


 「そうね──例え、それが名案だったとしても、そんな都合よくいう事聞いてくれる訳無いし、たぶん丸聞こえですよ、ナギサさんの声」


 「えーーー、先生、無能じゃん───」


 「俺を巻き込むな──水無瀬」


 「はぁ……一つ提案してもいいかしらトウカくん」

 そんなバカな言い争いを終わらせるように──


 「あれなら、トウカくんでも普通の喧嘩するくらいなら勝てるんじゃないですか?」


 「おぉ──委員長がもっともらしく野蛮な事言ってるぅ」


 「馬鹿ですか?彼も誰かに“操られている”と言うのなら、適任はトウカくんではないのですか?」

 トウカの能力──その何かの支配から解放する──


 「なるほど──トウカ、あいつ殴ってこいっ」


 「簡単に言うなよ──」

 そう言いながらもトウカは手に魔力を巻きつけ──

 


 「がっ──」

 回避されないように軽く本気にパンチを繰り出す。

 あっさりと返刃はその一撃を受けている。


 「あっいたぁ」

 ナギサが軽く頬をおさえる。


 「殴った相手──本人、もしくは周囲に居る関係の高い誰かにその痛覚共有さかうらみするというところか──」


 「あぁ──だから、俺が殴ったら、トウカにダメージが返ったってことか──」


 「えっえ……えっ?じゃぁ、トウカ──私のこと大好きじゃん」

 ナギサが痛む頬をおさえながら少し興奮気味になぜか委員長を問い詰める。


 「それは、ただ──トウカくんが他にお友達がいないだけじゃないでしょうか?」

 ユイがトウカをディスりつつそれを否定する。


 「しかし──なんでだ……こいつ、戻って──」

 殴らなくては害はない──


 「くっ」

 振り回してた椅子をシュウが手甲で破壊する。



 「──ぐっはぁ」

 苦しむシュウ。


 「触れて居れば──自分以外の被害も相手に返せるのか?」

 トウカがその様子を見る。




────


 大人も誰も──弱者を守りはしない──誰も悪を捌きはしない。


 ニュースで犯罪者が裁かれている──

 それは多くの人間に脅威を与え始めて裁かれる──


 そんな弱者を陥れる悪など──見えないふりをする。

 教師おとなはそんな集団の暴力より──たった一人の弱者ぼくたちに迷惑する──。


 聞きなれない──呪文のような言葉。

 大きな箱の上には妹の写真があって──


 一人の命を奪った──そいつらはようやく社会的に裁かれた。

 その犠牲を産んで初めて裁かれた──


────


 「なぁ──壊島シュウ、ぼくもお前みたいに暴力に暴力で抵抗できればよかったのか?ぼくにもだれかを救ってやれたのか──壊れろよ、弱者は弱者らしくさ──一緒に」


 「どうして──委員長っ、トウカが殴ったらあいつは正気に戻るんじゃなかったの?」


 「私にもわかりません──ただ、正常に戻す方法に他に必要なことがあるんじゃないでしょうか──」


 「他にも──必要な事?」


 「──あくまで……私の場合からの憶測ですが、完全に──ではありませんが、私は心の憎悪みたいな部分を──トウカくんと対立していた中で完全にではないけど、その負担を軽くしてくれた──敵対の意思は完全に失っていた」


 「多分──アゲハさんもナギサさんに完全に打ち負かされ、その因縁に──少なからず何らかの決着がつけられた──」


 「じゃぁ──あいつもシュウが完全にぶちのめさないと駄目ってこと?」


 「──たぶん、そんな簡単な話ではないかもしれません」

 「──彼は落ちるところまで落ち──そこを誰かに付け込まれてしまっているのかもしれません」




─────


 「くそっくそっくそーーーっ」

 デタラメに腕を振り回す。

 ゲラゲラと笑っている。


 その一つ目の大きな絶望も少しニュースで取り上げられただけ──

 その悪意はすぐにぼくに戻ってくる──


 今さら抗ったところで──妹が返ってくるわけじゃない──

 一つの悪が裁かれたところで、忽ちそいつらは獲物に寄ってくる。


 うまくいかない──どうして──

 どうして──あいつは抗って、抗って──

 暴力で──暴力を解決できたじゃないか──

 なんで、ぼくにはそれができない──


 「くそっくそっくそーーっ」

 ゲラゲラと笑う声──



 「気持ち悪い声で笑ってんじゃねーよッ──耳障りだ」

 同類だと思った男は──

 今度はあろうことか──

 自分では無いぼくのために暴力を振るう──


 「くそっくそ──どうしてだ、壊島シュウッ!!」


 「あぁん?」

 俺はそんな恩人に──


 「どうして──お前だけ、どうして──」

 ぼくではなく妹を助けてくれなかった──


 「──だれだよ、お前?」

 男はただ──暴力でぼくを救い──

 ぼくになど興味無さそうに立ち去る。




────



 「あははははっ──あはははははははっ」

 「あの時みたいに──殴ってみろよっ──お前らはそれでなんでも解決できるんだろ?思い通りにできるんだろ?ほらっほら──ぼくを殴って見ろよ──証明しろよっ──」


 「だから、誰だよ──てめーはっ」


 「あはははは──あははははっ──でなきゃ──ぼくはこんなに壊れたりなんてしないんだよーーーっ」

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