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白竜に選ばれた僕は、不運少女を守るため“負けない力”を手に入れた  作者: Mです。


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【壊れなかった側】

 「白状するよ──その俺も能力者なんだ」

 催稀先生は両手を前に手のひらをひろげながら叫ぶ。


 「能力者?先生も?」

 俺は先生へと目を向ける。


 「あぁ……ってもな、俺の能力は結代、お前みたいに優秀なサポート能力もなければ、水無瀬のような奇抜性もない──自分が受けた能力、その魔力に少し干渉し受け流す程度だ」


 「それで、毒島の毒の能力に干渉して意識を保てたってことか?」

 シュウが毒島を見る。


 「あぁ──言っても、最初はそんな毒をばらまかれていた事も気が付かず、我一番に情けなく気を失ったわけだけどな、能力者の端くれだ、ほとんど後半だったが意識を取り戻した──」


 「いったい──どこから意識があったんですか?」

 俺はそう尋ねる。


 「あぁ──水無瀬が過酸化水素水をメスに変化させたあたりだな──」


 「よく、あれが過酸化水素水とわかりましたね」

 横から委員長が尋ねる。


 「仮にも科学の教師だぞ──」

 馬鹿にするなと催稀先生が委員長を見る。


 「結局──今回も手掛かりはなしか──」

 俺はそんな小さな失言もその時は気が付けず──


 「おいっ──おまえっ何をやっているっ!!」

 催稀が急に叫ぶと──


 「だめだろ、水無瀬さん──こういう人間にはこれくらいしないと」


 「きゃぁっ!!」

 不意に毒島がいつの間にか目の前に立っていた男子生徒に何かの薬品をかけられた。


 「返刃かえしば?」

 返刃シンペイ──確か、正直──俺やナギサよりもその影は薄い。


 「先生、毒島は──?」


 「希硫酸──すぐに洗い流せば、水無瀬ッ!!」


 「私は水道じゃないっての──委員長、水道ひねってくれる?」



 「まぁ、あんたにも魔力があるんだし、べつに平気でしょ──それに、私にあんたを助ける義理も価値もないからね──ただ、あんたには散々、バケツで水をかけられたから、その仕返しって事で、おねがいしまーす」

 

 「さいあくっ」

 バシャーッとバケツをひっくり返したように毒島に水がぶっかけられる。


 「私があんたを助けるなんてそれくらいの理由が無いと無理でしょっ」


 「んなことより──てめぇ、誰だよ?」


 「ふーん、もっとも君らしい言葉だね──だけど、ぼくは君のことをよく知っているよ」


 「あっ?きもちわりぃこと言ってんなよ──」


 「どうした?来なよ──君らしくも無い、いつもみたいに暴力で解決すればいいじゃないか──ぼくごとき、拳一発だろ?それとも無理かな?」


 「あんっ?」

 圧をかけるようにシュウが返刃を睨む。


 「昔から、壊島シュウ──あんたは見かけだけ、小さい身体を必死に大きく見せて──敵わない相手に無謀にも噛みついているだけだ」


 「──よくわかんねー挑発だな、まぁ、てめぇは殴られてもおかしくねーことやったんだ、おい──毒島、てめぇの代わりに俺がこいつぶん殴るけどいいよな?」


 「こら、言い訳無いだろ──二人ともやめるんだっ」


 「止めるの、おっせーーよっ!」

 能力は使わずにシュウが思いっきり返刃の左の頬を殴り飛ばす。


 「ぶっがぁっ」

 それは余りにも呆気なく──


 「ほんと、何したかったの?マゾとかいう希少生物じゃない、トウカ?」


 「俺に聞くな──」

 そんな様子を一緒に眺めているナギサに言う。




 「なっ──つぅ、どうなって──」

 急に左手で鼻と口を押さえ片膝をつくシュウ。


 「どうした──?」


 ポタポタと床にシュウの顔から赤い液体が落ちている。


 「なんだ──こいつ、能力者?おい──トウカ、俺こいつに何された?」

 誰にも何をされたかんて見えていない──


 鼻から垂れる血を雑にぬぐいながら、シュウが立ち上がる。


 「くくくっあははははぁ」

 倒れたまま返刃が笑いだす。


 「何者だ──おまえっ」


 「いい加減、名前で呼べよ……ぼくは君のようにすぐに暴力で解決する人間が嫌いなんだ」


 「意味わかんねーだろ、俺はてめーみたいな人間一度も殴った覚えはないぞ──」


 「だろーね、君はぼくのようなひ弱な人間──相手にもしない、決まって喧嘩を売るのは自分よりも格上の人間だ」


 「よくわかんねーことばっか言ってんなよっ──だが、能力者ってなら容赦しなくていいんだよなっ」

 右腕にシュウが黒い手甲を纏う。


 赤黒い瘴気を纏った手甲を振り上げる。


 「やめろっ──殴るんじゃないっ壊島ッ!!」

 催稀が叫ぶ。


 「だから、いまさら──おっせぇーって」


 「そうじゃないっ──相手の能力をッ」


 「あぐっ──ぶはぁっ」

 先ほどとは比べ物にならないくらいに返刃の身体は床を背中で滑る様に吹っ飛ばされる。


 「あらら──呆気なッ」


 「おい──シュウ?大丈夫か?」

 なんだかフラフラとしているシュウ。 


 口から──血を吹き出し後ろに返刃から遅れて後ろに倒れる。


 「あははははっあははははーーっ」

 「ざまーないね、壊島シュウッ」


 「──受けた攻撃をそのまま、シュウに返しているのか?」

 俺は倒れている返刃を見る。


 「恐らく──間違いないだろう」

 催稀先生が加わる。


 「あの苦しそうな表情、実際に吹っ飛ばされる痛みは恐らく負っている」


 「──なるほど」

 シュウが起き上がる。


 「んじゃ──変わんねぇよ、アイツが起き上がれなくなるまで殴り続ければいいってことだろ?」


 「これ以上、こんな奴に手こずったら、先生以外にも見られちまうだろ」


 「あははははっ……だから、力ずくでぼくを黙らせる──実に君らしい」


 「余裕こいてんじゃねーぞ、雑魚野郎──泣くまでぶっ殺すッ!!」


 「だから、待てっ──相手をよく見るんだッ」


 「なんだよ、だから──いちいち止めるなよっ、見たって明らかなモヤシ野郎がよくわかんねー能力でイキってるだけじゃねーか」


 「特大なブーメランだよ、壊島シュウ──お前こそ、小さい身体を馬鹿にされて、プライドだけで無駄にイキってるだけの人間だろ?」



 「あぁ──悪いか?」

 「だったら──悪いのかって聞いてんだよッ!!」


 「ぶはぁっ」


 「ぐぅっ」

 返刃が吹っ飛び──

 シュウが膝を突く。


 確かに返刃の能力は異様──厄介だ。

 だが、同じダメージを受ける、とはいえ──

 それならば優勢なのはどちらかといえば──


 「待て──壊島をとめろ、結代ッ」


 「先生?」


 「よく見るんだ──確かに壊島が殴った攻撃は、返刃に通っている──明らかに痛みの耐性も明らかに返刃が不利だ」


 「──トウカくん、先生は返刃くんの方をよく見ろと言ってるんです」

 委員長が先に理解するように──


 「──全く血を流していない?」


 「お互いに同じ痛みを負っている──だが、その後のダメージとして引きずっているのは壊島の方だけだ」


 「トウカくん──このまま続ければ先に倒れるの……どっちかしら?」


 「おいっ……シュウ、一回……落ち着けっ」


 「関係ねーよ──余は一撃で再起不能までぶっ飛ばせばいいんだろ?」


 「あははは、そうだったよ──君はそういう奴だったな」


 「だから、誰だっててめーは、知ったような感じに言いやがってよ──」


 「思い出せないなら──今、覚えさせてやるよ──文字通り、先にぼくを壊して見せるんだね──だから、ぼくは少し違う方法で君を壊してやるっ」


 「いちいち、癇に障る野郎だな──どうせ、それにも限界はあんだろっ──俺より先にてめぇの魔力を切れさせちまえばいいだけだッ」


 「拳が強いだけでぼくの上に立った気になるなよ──お前らのそういうのが気に入らないって言ってんだッ」

 今までで一番強い一撃 ── 返刃の身体が科学室の壁にぶち当たる。


 軽く白目をむいている。


 シュウにダメージは返らない。


 勝った──もしかしたら俺以外の全員はそう考えていたのかもしれない。



 「あははは──あははははぁ──っ」


 「てめぇ──なに笑って……」



 不意に口の中に込み上げたモノ。


 みんなに心配をかけたくないから飲み込もうと思ったが──


 ナギサが珍しく心配そうな顔で俺を見る。



 「───トウカ?」

 俺は耐えきれずに口いっぱいの血を吹き出しながら後ろに倒れる。


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