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白竜に選ばれた俺は、負けない力で君を守る  作者: Mです。


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【悪役を演じよう】

─────


 月面のような世界。

 世界というものを維持するため──

 希望と混沌、その魔力を均等に維持する場所。


 しかし溢れかえる負の魔力。

 それは化け物のように姿を変え──

 その均衡を破ろうとしてくる。


 その日も、終わりのないその戦場で──

 ただ一人戦い抜いてきた男は、疲れた体を近場の岩場に座り休む。



 「ん──?」

 「もしかして、リエンちゃんかな──」


 ユイシロは、現れた気配に、

 傷だらけの体、顔──

 開けなくなった──両目を気配のあった方へと向ける。


 「違う──みたいだね、ごめん、もう僕の目で君の姿は見られないんだ、君が誰なのか教えてもらえないかな?」


 「──随分としぶといな、大罪人──」


 「──催稀カイドウ?いや──彼は確か──その息子かな」


 「そんなボロボロになって──お前は何を守る?」


 クウドは──ゆっくりとユイシロの方へと歩み寄る。


 「──憎い、今と真逆のことをしたいと思わないのか?今のお前の行為をだれが感謝している?誰も──知らない、お前のその努力も自己犠牲も──」


 「守りたいものが──あるんだ──世界じゃない──」


 「煩理博士──あの男がこの場所の存在に気づき、そしてそれを私欲のために、正と負の魔力を小竜の姿へと具現化させた──そして、もともと負の魔力が余りにも大きくその天秤が傾き始めていたものを修正するために、お前が作られた──だが、それをお前が放棄したうえに、その小竜を外の世界へと逃がした」


 「そうだね、それが僕の大罪だ」


 「そう──あんたには感謝しているよ、大罪人──あんたのおかげで、システムは再び崩れた、カイドウを唆し、煩理博士とその妻を亡き者にした、そして──その際にカイドウも深い傷を負い、俺に救いを求めてきた──」


 「───それで?」


 「もちろん、俺がとどめをさした」


 「彼は君の父親だろ」


 「そう思ったことはないな──ユイシロ、自分を作り出した煩理夫妻を親だと思っていたか?」


 「──君は何者なんだ?」


 「──どうでもいい、俺がどこでどう産まれたなど──大罪人、お前は十分に頑張った──後は任せておけ」


 「──これは僕の大罪《やくめ》だ」


 「俺ならお前よりも上手くやれると言っている──俺ならすぐに終わる」


 「終わる?」


 「簡単だ──壊せばいい、お前一人にその大罪を背負わせ守られるだけの世界など──希望も何もないだろ?」


 「何を言っているか──理解ができないね」


 「する必要はないさ──」



 「ウッ──ウゥ──オトウ──サマ」


 「カオス、カオスがそこに居るのかっ」


 「これからは、本来通り、負の魔力は全部、黒竜《こいつ》に取り込ませる」


 「そんな勝手は許さない──」


 「大罪人が──誰かを許そうなど偉そうな言葉を吐くなよ──」


 「安心しろ──取り込んだ瘴気すべては俺が有効活用してやる」


 「君は本当にそれで世界が守れる、保てると思っているのか?」


 「いいや──最初から言ってるだろ、俺は世界を壊すために、ここに来た」


 「くっ──」


 ジャラッ──戦闘態勢に入ろうとしたユイシロの体が何かすでに制御されている。


 「──鎖?」


 「丁度いい──頃合いだ──てめぇも壊れろ、大罪人」



──────



 ───知っていた、それは手に入らないと。

 ───知っていた、それは手に入れたら価値が変わるのだと。


 ───それでも、ぼくにとってそれは──たった一つの希望《えいゆう》だった。

 ───だから、ぼくはそんな彼にあこがれる自分を演じ続けた。


 目を開く。

 そんなリエンの視線には見慣れない、狭い部屋の中。


 「目が覚めましたか──リエン様」


 「──サイカ、ここは、ぼくは──」


 「ごめんなさい、私はまだ身分は学生──リエン様の素性を隠すためにも私名義で借りられるような部屋がここしかなくて」


 「──いい匂い」


 「──お腹、空いてますよね、せめて料理だけでも、リエン様の好物のものと──」


 「──ありがとう、サイカ」



 *  *  *



 出された料理──それが何時間ぶりの食事なのか──

 何日ぶりなのか──


 「どうでしょうか──」


 「あぁ、いつもながらに美味しいよ、サイカ」


 「リエン様──あの──」


 「どうした──ぼくのためにここまでしてくれた、君の頼みならなんだって叶えよう」


 「あの──もう──手を引きましょう──ここで私と静かに──」

 少しだけおびえるようにサイカがリエンへと訴えかける。


 「ぼくに──演じることを止め、逃げるように生き続けろと言うのかな?」

 優しい口調、怒っているのか──どちらにもとれる。


 「──リエン様、もう──もう、十分です」


 「──それは、君が決めることじゃないな、サイカ」


 「──リエン様、私はただ、あなたのお隣で仕えることだけが願いです──どうか、どうかその願いを」


 「──サイカ、ぼくにそれを演じろと言うのか?」


 「──なりま……せんか?」


 「───散々に君を利用してきた演技だ」


 「だったなら、だまされ続けます──ずっとずっとそう私も演じます」


 「サイカ、バカだな──君も」


 「──はい」


 それは承諾なのかはわからない。

 ただ──サイカの体を軽く抱き寄せるようにリエンは受け止める。



 * * *


 小さなマンション。

 その部屋の中に呼び鈴が鳴り、サイカが対応する。


 「──サイカ、だれだ?」

 リエンが対応中のサイカを少し心配するように──


 「よう、リエン様──元気そうだな」


 「グラシカ──?」

 ガタイの良い大男。


 「──グラシカ、ここは知られたくない──リエン様、ちょっと外でお話をしてきます」


 「───」


 サイカとグラシカが外へと出ていく。



────


 塀に囲まれ、草木が余り手入れのされていないマンションの裏。


 「くっ──」


 乱暴に体をたたかれるサイカの体がそんな地面へと転がる。


 「──リエンからクウド様に乗り換えて正解だったぜ」


 「クウド──?」


 サイカは地面に倒れながらもその名に──



 「──悪いが、俺は──リエンを始末するように言われてるんだ」


 「させない──もうあの人を、争いに巻き込まないでください」


 「黙れ──散々、人を利用し──その結果無様にこんな場所に逃げ隠れるなんて許されるわけがないだろ」


 「てめぇの命──どうでもいいが、てめぇをどうにかしたらあの常に誰かを見下すような余裕そうな面ではない顔が拝めるか」



 「──演じよう、それは“富”──その身を貫けっ」


 「ぐぁっ──なっ」


 「リエン様、どうして──」


 グラシカの体を一本の剣が貫いている。



 「──ぐっ、リエン、負の破壊の力を手にした俺にはそんなもの──」


 体を貫通していた剣が、グラシカの体が鋼鉄化すると、

 バキリッと剣が砕ける。


 「もと格闘家という割には、戦い方に品がないな、グラシカ──」


 「黙れよ──結局、お前も敗者だ、リエン」


 「いいだろう──今の君にとって──都合の悪い人間はどんな人間だ?」


 「はぁ──何を言ってる」


 「演じよう──グラシカ、お前にとっての“悪役”を──サイカ、やはりぼくにはこれが相応しい」

 「待っていろ、クウド──貴様にとっての“悪役”をぼくが演じよう」


 「──演じよう、“名声”──」


 「──リエン様」


 リエンの瞳はすでにグラシカを見てはいない。


 「無駄だ──そんな攻撃、今の俺には通じない」


 そのレイピアの先はグラシカの鉄の身体に通らない。


 「演じよう──それは“王”ッ──我《ぼく》の裁きを受けろ」


 「なんだ──」


 王《リエン》の新たに産み出された豪華な剣がその身体を覆う鉄を砕く。


 「演じよう──それは“富”」


 赤と青の刀身の、二振りの刀を右手と左手に持つ。


 「演じよう──それは“名声”──グラシカ、君にぼくとサイカの邪魔《あくやく》など、不可能だよ──」


 その演技は──その己の深手の傷すら感じさせ無い。


 新たな能力、強化をされたグラシカすらも圧倒するように──

 グラシカはリエンの前に──成すすべもなく倒れる。

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