【嘘よりも美しい真実】
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「──その罪を背負え」
「うわぁ──」
ユイシロが持っていた箸を大げさにテーブルの上に転がす。
「あんた、私をからかってるだろ?」
「違うよ──相手の罪を乗せる、それがカイナの持っている能力なんだ」
そう、ユイシロがカイナの能力を分析し、説明する。
それを、当の本人は目を細め、疑う眼差しを向けている。
「──ほら、軽い」
転がった箸をカイナが持ち上げ──
再び、私をからかったなという瞳でユイシロを睨む。
「──能力には魔力が必要なんだ、そう効果は長くは持続しないし、たぶん──カイナの能力は相手にその罪の重さを枷にするものだから──」
「──ふーん」
「あらら、どうして信用してくれないのかな──見て」
「──シャボン玉?──硬い」
「僕の能力──円状にこうやって結界を造るんだ」
「魔力の消費量で、大きさや硬さなどが変わるのだけどさ──信じた?」
「──ん、まぁ」
「──それよりも、カイナ、随分太ったね」
「あぁっ!?」
「──あれ、言葉の選び方間違ったかな、やめてよ、その圧のある怖い顔」
「誰の子だと思ってる、あんたが孕ませた子だろ」
「酷いな、僕はどちらかというと──カイナに──」
「あぁっ!?」
「ご、ごめん──カイナが魅力的で──僕が襲いました」
「うんっ」
怖い顔のまま、カイナが納得したように頭を縦に振る。
「──で、この子、なんて名乗らせればいい?」
「ん──?」
「名前だよ──」
「名前──か」
ユイシロは自分の作り出した円状の透明の結界を眺めながら。
「透過って言葉好きなんだ、奇麗な透明──そんな奇麗な心で誰かを守る──トウカって名前はどうかな?」
「トウカ──うん、悪くない──その名前なら男でも女でも大丈夫そうだ」
「で──いい加減、あんたのフルネームを教えなよ」
「フルネーム?」
「ユイシロ、それがあんたの苗字なのか、名前なのか私は知らない」
「僕も──“そう”呼ばれたことしかないんだ」
「……だったら、今日から“私たち”もその姓を名乗ってもいいのか」
「え──?」
「産まれてくる子は、ユイシロ トウカ、そういうことだ」
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シュウと一緒に学園の屋上へと向かう。
「いっ──がぁ、いてぇ」
明らかなDQNが数名、地面に転がっている。
「先輩──人の事呼び出しておいて遅いじゃないか、おかげで余計な奴らに絡まれた」
バタフライナイフの刃を出し入れするように右手で遊ばせながら、煩理リエンの邸でシュウともめた、確か──スバルだったか。
その奥には、興味なさそうに仮面を眺めている女性──タツキの姿がある。
「あぁ──絡んできたのはこいつらからだぜ、シュウ先輩、俺はそれを俺のやり方で対抗しただけだ」
「──その転がってる連中はどうでもいい、お前らに聞きたいことがある」
シュウはスバルとタツキを強い目線で見る。
タツキはただ──手にした仮面を眺めている。
「──スバル、逆上、俺たちの担任と煩理リエンの邸に出入りしている奇妙な男ってやつのことわからないか?」
俺は二人に尋ねる。
「──トウカのクラスの担任、莉絶カナ先生だっけ?」
「前の担当のクラスや、先輩たちが虐め過ぎて入院してたって聞いてるぜ?」
「リエン様との関係性は聞いたことないけど」
「違う──そこになにかあるはずなんだ、たぶん、あと少し──何かきっかけがあれば“正せる”はずなんだ」
「ねぇ、トウカ──未来改変、過去改変なんて言葉信じる?」
逆上が仮面の表面を手のひら全体でつかみ、顔の手前で浮かせるように──その隙間から瞳を横に俺の顔を見る。
「──時間を操ってるとでもいうつもりかよ」
シュウがそんな逆上を見て言う。
「私はさ、時間なんて概念信じてないんだ──だから、未来も過去も改変などありえない」
「時間なんてものは、どこかの天才がこの世界の在り方を奇麗に表現させたものでしょ──だから敷き詰めればどこかで矛盾が発生する」
「だけど──それを言えば、世界に人間が作った概念なんてものを出したらきりがないだろ」
俺は──そう逆上へと返す。
「──まぁ、私が言いたいのは“嘘”か“本当”かって話」
仮面をつけ、逆上は俺を見る。
「過去は改変されたんじゃなく、“嘘”だったか“本物”かということか?」
「トウカ──私はあんたの探している人の事は良く知らない、私たちもその記憶の干渉というものを受けている可能性も怯めない──さて、トウカ──私は思う、“嘘”とは“本物”以上に真実には成りえないだろうか」
「嘘が本物以上の本当、トウカ──この女は何言ってるんだ?」
「その作り出された日常の一部が、偽物だったとしても──トウカ、君たちはその偽物を誰かと一緒に過ごした、日常は、あるんじゃないのか?」
「そいつは、俺らの担任に成りすまし──俺たちの数日間この学園に居た──そう偽り続けた、その男と俺たちは一緒に居た」
タツキの助言、頭を巡らせる。
『正せ──』
もちろん、それは俺の幻覚だ。
薄い霊体のような姿で──屋上と校舎を繋ぐ塔屋の入り口を、
正義の探偵が指を指している気がした。
「──莉絶先生」
俺はそこに立っていた莉絶カナ先生の名を呼ぶ。
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煩理リエンの邸──その邸に隠されるように存在する深い地下。
「リエン──お前は神に絶望したのだろう?この世界を創る神とやらにな」
「──クウド、貴様には関係がないな」
「たった一人の男のため、お前は演じ続けた、なのに世界のハッピーエンドなんてものはこんなものさ、リエン──ならば、……壊せ」
「クウド、貴様にぼくは操れないそう言ったはずだ」
「ふふっ──リエン、十分だ、十分にお前はあの“大罪人”のためではなく、“俺”のために演じてくれたよ」
「“演じろ”──それは“富”、ぼくが演じる──クウド、貴様がッ」
魔力が回復したわけではない。
ただ、クウドという男に自分が利用されていたなんて事実を否定するように、
できるだけの魔力でクウドの周囲に武器を実体化させる。
「──結代トウカ、あの男にできて、俺にできないわけがない」
黒竜──そのクウドの魔力の鎖は常にその体とリンクするように繋がっている。
そして、この部屋もまた、クウドの魔力の干渉の中にある。
クウド目掛け飛んだ武器が部屋中に張り巡らされている漆黒の鎖に捉えられるように、リエンの意思に反しその動きを停止する。
「その武力、その能力に溺れろ、リエン」
漆黒の鎖が絡みついた武器をぐるりと回転させると、リエンの体に向き直る。
鎖の遠心力でその武器を動かすようにリエンの体目掛け刃が向かう。
「リエンさまっ」
「演じろ──それは名声」
レイピアを手にする。
そして、自らの作り出した刃物が自分の体に向かってきたものを叩き落す。
叩き落した武器がすぐに鎖に持ち上げなおされ、リエンの体を目掛け再び襲い掛かる。
リエンは瞳だけでそれらの動きを追い、何度も叩き落す。
ジャラッ
「リエン様ッ」
漆黒の鎖がリエンの右腕に絡みつく。
「ぐっ──くっ」
グサッ──グサッとその刃がリエンの体を貫通する。
「ははっ──滑稽だなリエン、無様に壊れるお前の演技、実に愉快だ」
「演じろ──それは権力、跪けッ」
「──随分と必死だな、必死なお前ほど無様に見えるモノはない」
鎖で自分の体を縛り上げ、無理やりその体を起こすクウド。
「凍り付け──アイスブランド」
ジャラッとリエンを拘束していた鎖を断ち切る、サイカ。
そして、何かの装置のボタンを押すと──
大きな落とし穴が現れる。
「そこに俺を落とすとでも?にしてももう少し策を投じてからのほうが良かったんじゃないのか女?」
ジャラリと鎖に操られる武器がサイカに支えられているリエンに向く。
飛び交う武器を振り払おうと、レイピアを強く握るが──
「くっ──」
レイピアを地面へと落とす。
「リエン様ッ」
「なっ──?」
サイカがリエンの体を抱いたまま、その大きな落とし穴に飛び込む。
「どこへ──繋がっている?」
ただでさえ深いこの地下。
底の見えない床。
「どちらにしても、ただでは済まないだろうな」
「さて──舞台は整った、俺が世界を創生しよう」




