表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のタムナジア  作者: Aster/蝦夷菊
【2】劇場の演目記録
15/38

演目︰踊れることを知れれば

 僕はゆっくりと身を起こし、着替えようと寝間着を脱いだところで手が止まる。捲れた袖から見えた自分の焼け爛れた醜い肌が、目の奥を刺してくるような気がした。胸焼けのように胸元が痛む。

 やっぱり気にせずに生きていくことなど、いつまでも続けられることではなかった。


 部屋に近付いてくる歪な気配と、それが鳴らす足音に気付いた。急いでいつもの服に着替える。

 深い赤の花柄コート、フリルのついたシャツに、六枚の花弁をかたどった髪飾り。それから長い、緑の映える山であるようなスカートを履いて、最後に目に毒なそれを隠す手袋を嵌めた。


 振り返り、扉の前まで来ているであろう人物に集中しながら扉を叩かれるのを待つ。


「シア・ホムンクルスさん」


「どうぞ」


 扉から入ってきたのは、予想通りの人物だった。

 長い髪、頭に巻かれた包帯、耳の代わりにはえている牡羊の角。それから、白色のワンピースのような服、そのさけた部分から同じ白の短いズボンが見える。暗い双眸は健在で、何を考えているのかも見当がつかない。スピカと同等といっても差し支えないくらいだ。

 どこかしこも包帯ばかりなところは、絵斗に似ている。


「ふふ、どうやら気配を覚えられてしまったようですね」


 何が面白かったのか、ライツェアはクスクスとその淡く低い声音で喉を鳴らす。鼓膜を叩く気持ちの悪さは、なぜだか落ち着くようにも思えた。なんともいえないが、“母親”というものがいるなら、それだと勘違いするような。


「それで。ライツェアさん、なんの御用でしょう」


「分かっていると思いますが……代償の変換を提案しに」


「具体的な内容は、お伝えしてくれるのでしょうか」


 ライツェアは静かに顎を引いた。


「今回、シアさんにとって一つ難題になることが予想されるようなものですね」


 ゆっくりと、僕の胸元に指を置いて淋しげに微笑む。それは腕に落とされ、そのまま突然に力が入り、僕の体を引き寄せてきた。突き飛ばそうとも考えたが、眼前に迫ったその瞳が、ひどく胸を締め付ける。


「“嘘”についてなんですが。貴方は、嘘は全てが悪いものと考えてはいませんか?」


「…………それは当然です。僕が一番許せないのは、人間のつく嘘ですから」


「嘘を、自身の有利性や得になるということを理由にしていなくとも、ですか」


 ライツェアは瞳を細める。先程よりも声に篭った何かが濃くなった。


「……僕は、嘘が嫌いなんです」


「貴方は本当に、誰にも嘘を吐いたことが無いと言い切れますか」


「急に、何を」


 突き飛ばされる。


「────貴方が周りに吐いてきた優しさと遠慮の数々さえも、視点を変えれば嘘と捉えることだって出来ませんか」


「…………」


「貴方が目標とする内容は、誘拐した子供を酷く扱う廃れた孤児院へ赴き、嘘を吐いてでも、嘘を受け入れてでも、子供を救うことです」


 手袋を眺め、またライツェアを見る。暗い双眸には、何も映っていない。


 ※ ※ ※ ※ ※


手繰り屋 シア・ホムンクルス

能力︰あやとり

→糸を操る

代償︰腕(継承部位)の火傷

Code.︰64bcc7 新橋色

人称︰僕 貴方

武器︰誓いの糸 “Stamina Juramenti”

→物質・形等様々なものに変えたり、糸の強度を上げて刃物にすることもできる。

 (裁縫や園芸で見られるような)ハサミ

継承︰腕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ