表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫かぶり勇者の無自覚無双 〜『頼りない僕ですみません』と泣き落としつつ、裏で魔王軍をボコボコにする〜  作者: Iori-y-


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/20

第1話:か弱き(?)SSS級勇者、本日も猫を被る

「ひぃっ……! ご、ごめんなさい、僕なんかが盾になってしまって……っ!」


激しい金属音が洞窟内に響き渡る。

目の前には、鋭い牙を持つAランク魔獣『ダークウルフ』の群れ。


僕――ルカ・レインワースは、ボロボロになった鉄の盾を抱え、涙目でガタガタと震えていた。


「おいルカ! しっかりしろ! お前が前線タンクを維持しなきゃ、後ろのメイの詠唱が間に合わない!」

「す、すみませんリーダー! 足がすくんで、ううっ……!」


パーティのリーダーである戦士が焦燥の声を上げる。

回復術師の女の子は、必死の形相で呪文を唱えている。


彼らの目には、僕は「才能はあるが、臆病で使い物にならない、いつも泣いているお荷物勇者」と映っているはずだ。


――うん、完璧。今日もいい感じに「猫」が被れている。


(……っていうかさぁ。ぶっちゃけ、こいつら弱すぎない?)


僕の脳内(本音)は、至って冷静だった。


(ダークウルフごときの攻撃、僕の素肌の防御力だけで1ミリもダメージ通らないんだけど。わざと盾を削りながら『効いてるフリ』するの、マジで職人芸の域だと思うわ。早く帰ってフカフカのベッドで寝たい。あー、だる)


僕がなぜ、こんな面倒な「猫かぶり」をしているのか。

理由はシンプル。『目立ちたくないから』。


この世界には、ステータスやスキルが全て可視化される【神託の水晶】というものがある。

16歳の成人儀式の日、僕がそれに触れた瞬間、頭の中に直接アナウンスが流れたのだ。


『個体名:ルカ。全ステータス:計測不能カンストのため。保有スキル:【全属性無効】【因果歪曲】【即死付与】……計400個』


文字通りのバケモノ、SSS級の異端児だった。

だが、そんなものが世間にバレてみろ。国に拉致されて「人類の最終兵器」として魔王軍との最前線に24時間年中無休で駆り出されるに決まっている。社畜ならぬ「戦畜」だ。絶対に御免被る。


だから僕は、水晶の表示を偽装し、「ちょっとだけ防御力が高いだけの、気弱な一般人」として冒険者登録をした。

適度に「お荷物」としてパーティにぶら下がり、適度に依頼をこなし、日銭を稼いで平穏に暮らす。これが僕の理想のライフプランだ。


「ルカ! 持ちこたえろ! ギガ・火炎フレイムを放つ!」

メイの魔法が完成した。


だが、タイミングが悪い。

ダークウルフのリーダー格――さらに一回り大きい個体が、背後からメイに向かって跳躍したのだ。


「しまっ――!?」

リーダーの戦士の顔が絶望に染まる。メイは悲鳴をあげる。


(あーあ。ここで全滅されたら、僕が『唯一の生き残り』になっちゃって、ギルドで怪しまれるじゃん。めんどくさ……。しょうがない、ちょっとだけ手伝ってやるか)


僕は、涙で濡れた(ように見せかけた)顔を伏せながら、ダークウルフのリーダーに向けて、そっと「人差し指」を向けた。


声には出さない。完全なる無詠唱。

放つのは、数ある攻撃スキルの中で最も威力を抑えた、豆鉄砲レベルの微風魔法。


(……ほんの、そよ風程度にね。そぉい)


――ドゴォォォォンッ!!!


洞窟の壁一面が消し飛び、ダークウルフのリーダーは影も形も残さず消滅した。

凄まじい衝撃波で、残りの群れも一瞬で肉片へと変わる。


「……え?」


杖を掲げたまま、メイが呆然と呟く。

リーダーの戦士も、口をぽかんと開けて、消し飛んだ洞窟の壁(その向こうの夜空が見えている)を見つめていた。


「な、なんだ今の……!? メイの魔法か!?」

「ち、違うわよ! 私、まだ撃ってないもの……! え、じゃあ、一体何が……?」


ガタガタガタガタ。


「ひ、ひぃぃぃぃ! 怖かったですぅぅぅ! 神様が助けてくれたんでしょうかぁぁぁ!!」


僕は、自分の放った風の余波でひっくり返ったフリをしながら、頭を抱えて地面を転がった。

泥を顔につけ、いかにも「腰が抜けてパニックになっています」という哀れな姿を完璧に演出する。


「そ、そうか……。魔獣の同士討ちか、あるいは局所的な天然の魔力爆発か……。ルカ、大丈夫か? よしよし、怖かったな」

戦士が僕の肩を叩く。


(よし、チョロい。完全に誤魔化せたな)


僕は心の中でガッツポーズを決める。

今日も僕の平穏は守られた。この調子で、一生「ダメな僕」を演じきって、のんびり隠居生活を送ってやるんだ。


そう、この時は本気で思っていた。


翌日。

ギルドに呼び出された僕たちの前に、なぜか「聖騎士団長」と「帝国の第一皇女」が、深刻な顔で待ち構えているなんて、夢にも思っていなかったのだ。


皇女は、僕の顔を見るなり、美しい目を輝かせて言った。


「見つけました……! 昨日、魔獣の森の結界を『内側から一撃で破壊した』、伝説の隠れ勇者様ですね……!?」


「……へ?」


僕の精一杯の猫かぶりが、国レベルで大崩壊するまで、あと5分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ