捨てる神あれば拾う神あり
体調崩してて執筆できませんでした。;;
遅れましてごめんなさい!
さっきまでの体験は夢だったのか?
それにしては妙に現実味がある。
疑問は尽きないが、もう一度このダンジョンに潜るのは些か厳しいだろう。
心地としては狐につままれた気分だが、ダリアの体は確かに魔獣との激戦で悲鳴を上げていた。
(町に戻って休むべきだな)
あの「ナニカ」のいうことを信じるなら、ダリアは町に戻れば魔物扱いで討伐されかねなかったが、かといって町に戻る以外の選択肢もなかった。
一番近くの町までは馬車を使っても半日かかる。
今のダリアの足では二日は見ておいたほうがいいだろう、それまでに護衛もなしで移動しきれるとは思えない。
少し緊張しながら町へと戻ることにする。
幸いあまり離れた場所でもない。そのうえ立ち入り禁止令が出ている関係で町まで誰にも遭遇することなくたどり着くことができた。
ダリアが拠点を置いていた町をゼブンスという。
王都からは少し離れた田舎にあり、野党の類は少ないが魔物は出るため、町を囲む壁と見張りの兵士はいる。国境から遠いため町に入るための身体検査は厳しくない。
それでもダリアは気が気ではなかった。
(どこから来たか聞かれたらなんて答えるか・・・)
しかし、そんなことは杞憂に終わり、簡単な持ち物検査だけであっさりと町に入ることができた。
(妙に簡易的な検査だったな。以前はもう少し詳しく調べられた気がするんだが・・・)
町に戻ったダリアはまっすぐにギルドへ向かわず、まずは自宅の様子をうかがいに行く。現状指名手配状態にあるため、自宅に戻れるかどうかを確認しておく必要があったからだ。
結果として自宅には戻れなかった。
周りを兵士とギルド職員が取り囲み、いかにも物々しい雰囲気だったからだ。
自宅に置いてきた装備も金も回収できないだろう。
住所不定無職所持金なしの28歳独身男性という、どう考えても不審者にしか見えない男が爆誕してしまった。
どう考えてもダンジョンに潜るとか、自分に何が起きたかとかを考えている場合ではない。そういうことを考えられるのは衣食住が満たされ、余裕があるからなのだ。
地に足が付くどころか崖から空中に放り出されたダリアは住所不定無職らしく公園のベンチに座って今後どうするかを考えていた。
少なくともギルド職員とすれ違ったときに何も言われなかったため、自分がダリアであるということはぱっと見ですぐに割れるということはなさそうだ。
公園の近くには飲食店がある。一文無しのダリアに飲食店など関係のない話だが、漂ってくる香りに本能的に顔を上げた時、見知らぬ一団が大通りを歩いていくのを見かけた。
そして、その中に昔なじみの顔を見つけダリアの中に希望が現れる。
その一団は王都から来た学者団だ。ダンジョンに未発見領域が出ることはかなり珍しいため、おそらく調査のために派遣されたのだろう。
(町のどこかに宿をとっているはずだ。そこを訪ねれば一晩泊めてもらえるかもしれないぞ・・・!それにあいつはダンジョンの異変にも詳しいはずだ。俺に何が起こったのか知ってるかもしれない。)
田舎の町で学者の集団は珍しい。人々のうわさを聞けば簡単に宿を特定できた。
後は知人が一人で宿に戻ってくるところで声をかければいい。
そこまで思い立ったところで重大な真実に気がつく。その知人は女性なのだ。
ダンジョン帰りでボロボロの服装に加え、自分の素性も明かせない住所不定の28歳男性が王都からやってきた学者の女性を宿の前で待ち伏せしている。
(どう考えても不審者だ。声をかける前に俺が衛兵に声をかけられちまう)
つまりは見た目を何とかする必要があった。そのためには家に戻るか、金を手に入れなければいけないが。現状家に戻れないし、ギルドでクエストも受けられない。
まさに八方ふさがりである。住所がないから家を買いたいのに、家を買うには住所が必要だといわれたと、酒を飲みながら愚痴っていた先輩を思い出した。
(あの時は笑っていたが、自分がその立場になるとたまったもんじゃないな)
一縷の希望の筋が薄くなっていく。改めてベンチに座り直し、途方に暮れなおすことにした。
日が暮れかける。思えばしばらく寝ていない。浮浪者らしくベンチで寝るしかないのか?これだったら森で世捨て人として過ごしていくほうがまだ惨めじゃないんじゃないか?とか現実逃避でしかないことを考えていると、ダリアは突然声をかけられた。
「おっちゃんじゃんか!町に戻ってきてたんだな!」
声をかけられたほうを振り向くと、コロンがそこに立っていた。
「なんか顔がちゃんと見れるようになってんだな。最初からそうしてくれればよかったのによ。なんだか、前より近寄りがたい気もするけどな」
キョトンとした顔でダリアは言葉を返す。
「あ、ああ。というか俺って事がわかるのか?」
「俺、鼻がいいんだ。見た目じゃわからないけど、獣人の血が混じってるんじゃないかってシスターは言ってたぞ」
(なるほど、孤児院出身だったのか。それで一人で冒険者に・・・・・・)
「同じ匂いがしたからな、見に来たらやっぱおっちゃんだったからよ。渡さなきゃいけないもんもあったし」
「渡さなきゃいけないもの?」
「おう、あの猪、よく処理されてるってギルドの買取の姉ちゃんにも褒められてさ、高く買い取ってもらえたんだ。あの猪を狩ったのはおっちゃんだし、分け前があって当然だろ?」
「いや、それは・・・」
言いかけてダリアは口よどむ。あの猪はコロンにあげたものなのだ。分け前をもらうつもりは一切なかった。しかし、現実を見ればダリアには見た目を整えるための金が必要だった。
「すまない、受け取っておく。少しは冒険者のことがわかってきたか?」
「ああ、レコンのクエストもクリアして戻ったら驚かれたからな。そこでギルドでもおっちゃんと同じ話を聞いたよ。俺って運がよかったんだな。」
「それなら安心だな。今後はどうするんだ?」
「獣の処理ができるってアピールして、ほかの冒険者にまずはついていって経験を積もうと思うよ。」
(思ったより地に足がついているな。若い冒険者にしては珍しい。)
「んじゃ!またな!次は血抜きのやり方も教えてくれよな!」
コロンは足はやに去っていく。冒険者用にギルドが提供している宿舎のほうではなく、教会のほうへ向かっていく。おそらくコロンは今でも孤児院で寝泊まりさせてもらっているのだろう。
(……助かった)
現金を手に入れたダリアは急いで身だしなみを整える。
これで、ようやく人として話ができる。
――あとは、あいつが来るのを待つだけだ。




