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観測者ダリア ーC級冒険者ダリアの記録  作者: エドモンド椿


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6/10

喰らう者、見つめる者

投稿少し遅れました!

「おっちゃん・・・・・・?」


「いや、すまん。すこしぼーっとしててな。」


「お、おう。大丈夫か?顔色とかはわかんねえけどよ」


「ああ、大丈夫だ。それと、おれはちょっと野暮用を思い出してな。ここを離れるが、コロンは町へ戻れそうか?」


「そりゃあ戻れるけど、ほんとに大丈夫か?」


「何、大丈夫さ。町であったら飯でも奢ってやるよ」


「あっ、おい」


ダリアは一人小鬼の住処へ向かって歩き出す。


いつからか――などと考えるまでもない。

あの未発見領域に迷い込んでからだ。

問題なのは、あの領域のどこでこうなったか?だ。


(あの魔物から逃げているときか?川に落ちたときか?それとも、あそこに足を踏み入れた瞬間か?)


未発見領域、ないし新領域はC級上位からB級下位のダンジョン。ダリアの適正レベルを超えている。


・・・・・・今度こそ生きて帰れないかもしれない。


それでも、こうなった原因は間違いなくあそこなのだ。


もはやダリアには再びダンジョンに戻る以外の選択肢はなかった。




ダンジョンの入り口に人はいない。立ち入り禁止令は、許可なく入った場合、ギルドが一切の責任を負わないという宣言に過ぎない。


つまり、命の保証なくしてダンジョンに潜るしかないダリアにとって、立ち入り禁止は勝手に人払いがされてむしろ好都合だったのだ。


もはや通いなれたダンジョンだ。地図は頭に入っている。


知らない道を探せば勝手に新領域に突入できる。


覚悟を決めたダリアにとって、D級ダンジョンの魔物など大した相手ではない。


無駄な傷を負わぬよう、さりとて体力を使いすぎないよう慎重にダンジョンを進んでいく。


そして、思ったよりもあっさりと。あの領域は姿を現した。


(ここだ。この先に俺に何が起きたか?の手がかりがあるはずだ)


あの時は仲間のために足を踏み入れた。


今、ダリアは自分のために新領域に足を踏み入れようとしていた。


帰らずの森のギミックは相変わらずだ。しかし、ダリアは違和感を感じていた。


(・・・・・・光る川も、岩もない。それどころか崖のような地形すらない。)


新領域は大部屋が複数つながり、正しい道を進まなければ最初の部屋に戻される。というものになっていた。

あの、空間をごちゃまぜに繋ぎ、進んでいるのか、戻っているのか、

それすらわからないあの道は――どこにもなかった。


そして、あの時はいなかった魔物も、今は居る。


先ほどまでは小鬼の住処の標準的な魔物と大差なかったため、大して苦労せず進むことができた。


今、目の前には狼の首が2つに獅子の胴体、蛇の尾を持った魔物が爛々と輝く目でダリアのことをじっと見つめていた。


――逃げ場はない。


ダリアは覚悟を決めて剣を構える。


二つの頭が、同時にこちらを見る。


片方が唸る。


もう片方は、ただ見ている。


来る。


魔獣が地を蹴り、巨体に似合わぬ速さで突っ込んでくる。


ダリアは半身でそれを躱す。


さっきまでいた場所を爪が裂く。


すれ違いざまに剣を振るう。


狙いは首。


だが、浅い。まるで鉄だ。


刃が通らない。


(剣が通りそうなのは、喉と、目か・・・)


そう簡単に狙える場所ではない。一歩間違えればダリアが食われて終わる。


いや、間違えなくても食われて終わるかもしれない。


それくらい、今までに出合ったことのない強さの魔物だった。


距離をとりつつ観察する。


生き物の動きには必ず”起こり”がある。


脚の筋肉にさえ目を向けていれば、とびかかりを回避することはなんとかできた。


だが、


再び飛び掛かってくる獣を避けると、すれ違いざまに蛇の尾が毒液を吐き出す。


予想できたはずの攻撃を、まともに食らい、ダリアはよろめく。


(やっちまった、蛇を確認した時点で、毒には警戒すべきだったのに・・・・・・!)

(柄にもなく冷静さを欠いていたのか。しかもそれに気が付かないとは・・・・・・間抜けだな)


後悔してももはや遅い、凶悪な爪がダリアを切り裂かんと振り下ろされる。


半目で目を開け、かすれる視界でギリギリ爪を剣で受ける。


だが、膂力が違う。無理やり押しつぶされるには、もう数秒も必要なさそうだった。


(どうする、どうすればいい!ここで距離をとってももう避けられない。俺が死ぬまでの数秒で動きを止めるか、倒しきるしかないんだ・・・・・・!)


(さっき俺は何を考えた?柔らかそうなのは目と喉。目は狙えそうにないが、喉は・・・?)


数秒が永遠に感じる。純然たる死を目前にして、かつてない速さで頭が回転する。


(喉なら・・・・・・ギリギリ狙える。馬鹿みたいに大口を開けてくれれば楽だが、そう甘くない。)


(質量で歯を突き破って無理やり喉を貫くしかない。両手がふさがってる。剣じゃ無理だ)


(槍だ、氷の槍を出すしかない。そんな魔法の詠唱は知らないが、やるしかない――)


「ぐうおおうあああおおあああっっっ!!!」


全力で歯を食いしばり魔力を回す。


頭の中でイメージするのはすべてを突き破る大槍。


詠唱などない。だが、間違いなく魔力は形を作っていく。


―――ダリアの体がつぶれるまであと、0コンマ数秒


氷の大槍が魔獣の牙を砕き、喉を貫通する。


思いもよらない反撃に、魔獣は怯み、後ずさる。


まだ生き残っている頭が、怯えた目でダリアを見る。


が。


体のほうが先に耐えきれず、その場に崩れ落ちた。


倒れはしたが、まだ動く。


ダリアは迷わず、その目に剣を突き立てる。


一歩引く。


――全力の電撃を叩き込む。


ようやく魔獣は、動かなくなった。

読んでいただいてありがとうございます!


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