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観測者ダリア ーC級冒険者ダリアの記録  作者: エドモンド椿


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5/10

顔を失っていた誰か

それが相手が動物であっても、ついさっきまで生きていた()()を取り出すのは、誰であっても苦しい物である。

特に今まで町で生きてきた者にとって、肉とは既に加工され、食べれない部分は取り除かれた商品であるからだ。原型など気にしたことすらない。

屠殺場自体は町の外れにあるが、好き好んで訪れる者はいない。

しかし、そういった職業に従事している者がいるからこそ、皆は食肉の恩恵にあずかれるのである。

ましてや冒険者は、動物よりももっと人に近い形の生き物を搔っ捌くくらいできなければ、逆に自分が食肉にされて終わりである。

臓物と血のにおいと、それを自分で捌くことの出来る精神を持っていることは必須条件であった。


つまり何が言いたいかというと。


コロンは現在、完全にグロッキーになっていた。


無論、それはダリアがコロンに強制的に猪解体ショーを開催させたためだ。

なお、解体ショーの観客はダリア一人だけである。


「おいおい、冒険者の卵とあろうものが、猪一匹捌くのにびびっててどうする?」


「くそっ、おっちゃん覚えとけよ・・・・・・」


「野生動物の解体は初心者冒険者でもできて、しかも身入りが良いんだ。今やらされたことに感謝した方が良いぞ?」


「それは、なんとなくわかってきたけどさ」


依頼の中には動物を狩ってきてほしいという物がある。これは解体まで含んでいることが多いのだが、それをやりたがらない冒険者も多い。

そういう場合はギルドに手数料を払って解体を頼むのだが、その額も馬鹿にならない。

その点自分で解体が出来れば手数料も浮くし、自分で狩れなくても先輩冒険者がパーティに入れて連れて行ってくれることもある。


精神的な負荷を考えなければ、動物の解体はまず真っ先に覚えるべき技術だった。


「まあよく頑張った、狩って血を抜いたのは俺だが、残りはコロンの手柄だ。報酬代わりにこの猪は持って帰ると良い。」


「ほんとか!男に二言はねえよな!」


「無いとも。この牙だけはもらっていくけどな」


「なんだ、結局一番金になるとこはもってくんじゃねえか」


猪の牙は様々な加工品に使われる上、美術品にも需要がある。傷が少ない物は高い価値がつくのだ。

しかし、コロンの実力で猪を町まで担いでいけば、冒険者狩りに遭うのは目に見えていた。

ダリアの優しさでもあったが、あえてそれは伝えないでおくことにした。


「世間はそんなに甘くないってことだ。」

「それと、頼み事はちゃんとしてきてくれたんだろうな?」


「おう、いろいろ聞いてきたぜ。」


ダリアはコロンの話を注意深く聞いていく。


「町の近くのダンジョンで、新しい領域が見つかったらしい」


「名前は……子鬼の住処だっけな」


「ギルドのやつが言うには、C級上位からB級下位くらいの難易度だってよ」


ダリアは眉をひそめる。


「……続けろ」


「王都に応援を呼んでるらしい。それまで立ち入り禁止だってさ」


「あと、一人戻ってきてねえって話もあった」


「それと、未知の魔物が見つかったって話も聞いたな」


「けっこうどこも大騒ぎしてたぞ。あそこはほとんど探索され尽くしてて、新しい場所なんてもうないって思われてたのにって」

「あとさ、一個聞きたいんだけど、ギルドの連中が騒いでたんだけど、マター汚染ってなんだ?」


マターというのは、どんな物にも変化する万能物質だ。

純粋なエネルギーとして使うことも出来、少しづつ体に取り込むことで身体能力や魔力量を強化することが出来る。


だが――


「マター汚染って言うのはな、一言で言えばマターって物質で信じられないほど能力が強化される代わりに理性を失った強力な魔物になっちまうことだ。」


そう、過剰なマターにさらされた生き物はその理性を失う。仮に元が人間だったとしてもマター汚染された人物は魔物として扱われる。


「ふ~ん、おっちゃんは実際に見たことあんのか?」


「いや、実際にはないな。だが、マター汚染された人や魔物にはそれぞれ個性的な特徴が出ることがあるっていうのは聞いたことがある。」


「へぇ、どんなだ?」


「聞いた話だが、強力な魔法を秘めた目を手に入れたり、姿を完全に自在に変化させたり、霞のように消えたかと思えば、全く別のところで見つかったり。とかだな」


「ふぅん、あんま詳しいわけじゃないんだな」


「まあな、マター汚染に詳しいってなると、それこそ王都の学者たちになる。」

「俺たち冒険者はマター汚染はやばいってだけわかってればいったん大丈夫なんだ」


「なるほどね。ところで気になってたんだけどよ、おっちゃん、その顔って何があったんだ?」


「顔?顔がどうかしたのか?」


「どうかもなにも、顔を見ようとするともやがかかったみたいになるし、声もさ、なんていうか……頭に直接響くみたいでさ、昔何があったのか気になるだろ?」


コロンは聞いちゃいけないことを聞いてしまったのかと、すこしうつむく。


――しかし。


ダリアは絶句していた。顔にもやがかかって声が直接響くなんて聞いたことがないし、第一そんな状態になっていることにダリアは自覚がなかった。


ダリアが何もしゃべらないので、気分を悪くしたのかと慌てて言葉をつなぐ。


「魔法が使えるっていうからてっきり喉がやられてて、そういう魔法を使ってるのかと、顔も似たようなことかなって思ったんだ。聞いて悪かったよ。」


少し的外れなコロンの弁明も、ダリアの耳には届いていなかった。

ちなみに、少量づつマターを取り込む場合は体になじんでいってやがて完全に体の一部に変化します。この方法なら通常の鍛錬をすっ飛ばすことができ、実践経験は増えませんが素の能力がアップし、デメリットも特にありません。過剰に摂取するとマターのエネルギーに飲み込まれてマター汚染という状態になります。

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