交錯しない視線
「はぁ、、はぁ、、」
(一体何が起こってるんだ、あいつらは間違いなく仲間たちだった。なのに・・・・・・)
ダンジョンの奥へ奥へと逃げ続け、気づけば追っ手はもういなかった。
それに気づくとようやく足を止め、息を整える。
「考えててもわからないな。まずは事実確認からだ」
「まず、俺はダンジョン未発見領域に足を踏み入れて、魔物に襲われ光る川に落下した」
ここまでは間違いないはずだ。
「次に気がついたとき、俺は助かっていて未発見領域の探索をした」
「そして気がついたら目の前に彼らがいて、魔物と呼ばれ追い立てられた・・・・・・」
ここだ、おかしな点はここにしかない。
「まず一つ目、川に落ちて助かるまでに一体何が起きた?」
「二つ目、再開した場所はいつものダンジョンの内部だった。だが、おれは未発見領域から脱出した覚えはない・・・・・・」
しかし、いくら考えても原因はわからない。そもそもなぜ魔物と間違われたのかもダリアには心当たりがなかった。
「姿は人間のはずだ。現に腕も足も付いてるし、角も生えてない」
人間に極めて近しい姿の魔物は存在する。例えば吸血鬼や上位の鬼種などがそれにあたる。
だが、彼らはその知能の高さと実力から、そう簡単に人間と見分けのつくものではない。
吸血鬼はその牙を隠し、鬼は角を隠すものだ。
「人に極めて近しい姿をしていながら、魔物と一目で認識される魔物か・・・・・・」
心当たりは、あった。
それはレイスと呼ばれるアンデットに分類される魔物で、ダンジョン以外でも目撃情報はある魔物だった。
「レイスは個体ごとに特徴があったはずだ。よくあるのは足がないとか、体が透き通っている。とかだったな」
足もある、体も透き通っていないはずだ。だが、レイスになってしまった人間の話など聞いたことはない。もしかしたらレイスという魔物からは自分が正しく人間に見えている可能性もある。
「とにかく、考えるのは後にしてまずはダンジョンから脱出しよう。」
彼らはここまで追ってくることはないだろうが、一旦町に引き返した後、改めて人を組織してくる可能性は十分に考えられた。なにしろ、このダンジョンでレイスが目撃されたことなどないのだから。
「外に出て、光に当たったら浄化さえて死ぬ。なんてことは・・・・・・ない、よな?」
「大丈夫、俺はレイスじゃないはずだ。さっきから壁はぬけられないし、床に足も付いてるじゃないか」
ついさっきレイス本人にはそう見えてるかもしれないと考えたことは棚に上げた。つまりは自分について考えることを一旦保留したのである。
(もしかしたらほかの冒険者となら普通に話せるかもしれない。そのときどう見えるか聞くのも良いだろう。)
ダリアにとって通い慣れたダンジョンである。紙の地図がなくても頭の中に地形は入っていた。
途中何度か魔物を見かけるも、今は一人であることを考えて避けて通った。幸い冒険者にも出くわさずにすんだ。
そして、ダンジョンから外へはいともあっさりと出ることが出来た。
(いろいろ考えたが、杞憂だったな。外に出られることがわかったのはでかい。)
(だが、すぐに町へ戻って良いのか?ギルドには俺の報告がいっているはず。その中で変装もせずに戻るのはリスキーじゃないか?)
追い立てられてから、既に半日は経過している。もうとっくにダンジョンを出て、報告がいっていてもおかしくはない時間だった。
「それにしても、腹が減ったな。しばらく飯を食ってないし、当たり前か。」
「近くに森があったはず。深くまで潜らなければ安全だし、食料も何かしら手に入るはずだ。」
冒険者はダンジョンに潜るものというイメージがつきがちだが、それ以外の場所に行くクエストも当然ある。薬草採取なんかは意外と難易度が高く上級者向けだが、畑を荒らす獣を狩るクエストやその荷物運びなんかは駆け出しの定番のクエストだった。
ダリアも当然その道は通ってきているため、困らないだけのサバイバルの知識は持っていた。
手際よく寝床を作り、獣よけの火をおこす。幸い今の時期はまだ森の恵みも豊富な時期で、食料にも困らなかった。
「これからどうすっかなぁ、町に戻るにしても、町の状況がわからないことにはうかつに戻れないし、」
ダリアが今後について思案していると、草陰から一人の影が現れた。
「誰だ?」
少年だ。見覚えはないからおそらく新人冒険者だろう。
だが、いくら冒険者とはいえ、一人で森に来ることはまずない、ダリアは少し警戒する。
「おっちゃん・・・・・・だよな?こんなとこで何してんだ?」
ダリアは少年の顔を見据える。
――目が、合わない。
こちらを見ているはずなのに、
視線だけが、わずかにずれている。
――見られているのに、見られていない。
4話あたりから面白くなってくる。はず。つもり。です。ご期待ください




