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アルスベーレ・モノクローム  作者: パグオラ
烏合の集いは時に龍をも喰らう
16/18

家庭内ヒエラルキー頂点に逆らうのはやめましょう。

残った一体を目の前にしてステラビリティが切れる。だからと言って問題があるかと言われれば、それはほぼないに等しいのだが。



「残り一体」



最後の一体に向けて駆ける。モンスターに感情があるのかは分からないが、少なくとも反撃してきたということは多かれ少なかれ生存本能はあるのだろう。だからといって動きを止めるなど馬鹿なことはしないが。唾を吐きかけてくるが、そもそもそこまで物量が多いわけではないので難なく避け、目の前まで近づく。



「そうだ、せっかくだから追加でアシストしようかな!」



持っていた刀を片付け素手にする。左手の拳を握り、子体の顔面のやや下側、人間でいうところの顎に目掛けてアッパーカットを放つ。



「pisyaaaaaa!!!!」



アッパーにより少しだけ身体が宙に浮き、弱点部分である腹を晒す子体に対して今度は右の拳を握る。スキルを使わずに放ったアッパーカットと違い、今度は(スキル)を纏う。



「僕からのプレゼント、受け取ってね。」



そういうと全力でその拳を放つ。クリティカル判定となった拳はしっかりと子体の芯をとらえ、勢い良く吹き飛ぶ。その先にあるのは…




ー◇ー



時はほんの少しだけ遡る。

すごい勢いで子体を倒していく希空の姿を傍らに、こちらも攻撃の手は止めない。



「はぁ!」



あれ以降何度か攻撃を加えているがまるで効いているように思えない硬さに少し嫌気がさしてくる。

自分で形態変化前に倒すと言ったからにはそれができなければなかなかの間抜けだろう。

気が付けば希空の方は二体同時に倒したのか、残り一体となっている。



(勝負を仕掛けるならここかな?)



聞いた話によるとラーヴァの弱体化は子体をすべて倒してから約十秒のみらしい。そこからは形態変化が入り数値が上昇するとのことだ。だとすれば、形態変化直前から一気にラッシュを叩き込む事が一番の最善手だろう。「剣術基礎・力」の進化スキル「剣術応用・(ケンジュツオウヨウ・)浸巡(シンジュン)」を発動、効果自体は微小ながら全ステータスを強化するもの。更に追加で覚えたスキル「シャープソード」と「飛脚(ヒキャク)」を起動。火力と機動力の確保。所詮は芋虫、黒や希空ほど敏捷にステータスを振っていないが、それでも最低限の走力は持ってる。難なく懐に入り込み、全力の突きにスキルを掛け合わせる!ピアッシングからの進化「ピア・スティング」!



「pigyaaaaaaaa!!!!!」



先ほどより良い手応えに、ダメージを確信する。更に追撃をしようとしたところで背後から声が響く。



「白ちゃん避けてねー!」



振り返ると同時に最後の一体と思しき子体がこちらに向かって勢い良く飛んでくる。



「ぴゃあ!!」



突然の出来事に思わず変な声出る。驚きながらも身体はしっかりと反応し飛んでくる子体をしっかりと避ける。避けた先には当然、親個体であるラーヴァがおり、素早さの低いラーヴァではそれを避けることなど不可能であり、そのまま衝突した。その瞬間、希空の意図を理解する。



「piiiiiiiiiiiiiryaaaaaaaaa!!!!!!!!!!」



それはダメージによる痛みから来るのか、はたまた自身の子供がすべて殺されたことによる悲しみからなのか、もしくは自身が弱体化したことを示すただの咆哮(システムボイス)なのかはわからないが、今までで一番大きな叫び声がこの戦闘エリア全体に響き渡る。

だがそんな隙を見逃すほどハクアではない。希空の意図を理解した直後には、再度攻撃態勢に入っており、既にラーヴァの近くにいた。制限時間残り十秒。短くも長いこの時間のうちに倒しきる。

ウォーターベールの進化魔法【アクアレーヴ】と追双刃の進化スキル「堅双強刃(ケンソウキョウジン)」を同時起動、直前のスキルを含めて、ハクアが現段階でできる最大限のバフを発動させる。先駆けとして【エアリアルカッター】で微量ながらダメージを与える。


微量ながらも、多重の強化を施された魔力がこもった風の刃は、ヘラクリダム・ラーヴァの弱体化したその身体に確かな「弱点()」を作り出す。その傷目掛けて放つのは、スキル「クリティカルスラッシュ」。名前の通り、弱点部位に攻撃が当たると、クリティカルに補正が入る追加効果を持つ。これまでで一番のダメージに形態変化まで残り五秒となっていた、ヘラクリダム・ラーヴァの体力が残り僅かとなる。


体力バーこそ見えないが、今度こそ致命傷を確信したハクアは最後に一言、ヘラクリダム・ラーヴァに対してぽつりと呟く。



「じゃあね。」



言い終えると同時に、とっくの昔にリキャストが終了していた高速の刃(ソニックエッジ)紛い物の炎(パースドゥ・フレア)が重ねられ、最後の体力を削り切った。





「お疲れ~」


「お疲れ~じゃないよ。こっちに飛ばしてくるなら先に言いなさいよ。」


「えへへ、急に思いついたもので…」


「キモ」


「ひどくない!?」



いやリアルでえへへなんて言うやついないでしょ。黒が聞いても間違いなくキモって言うよ。

まぁなんにしても、宣言通り変化前に倒せたので良しとしようかな。



「それじゃ、さっさとアイテム回収して街の入り口に行くよ」


「ぐっ、なんか納得いかないけど仕方ない…」


「そういえば黒が出て来る(推定)の場所ってどこかわかるの?」


「いや、クリア後に出てくる転移魔法陣の転移先はこのエリアよりドライヴィア側にランダム転移だから何処かはわからないんだよね」



なんとも面倒な設計だ。でもなんでかな、意外とすぐに合流できる気がする。根拠は無い。

ヘラクリダム・ラーヴァが落とした素材アイテムをたんまりと回収した後に、戦闘フィールドを抜けてドライヴィアへと足を運ぶ。



「「あ…」」



直感が当たった。フィールドを出た直後に、何処からかポリゴンが形成され、そこにクロトの姿が現れる。どうやらほんとに運が良かった(悪かった)らしく、表示された黒のレベルを見ると、数時間前とは比べ物にならない程上がっているのが分かる。



「どうやらかなりの激闘だったようで?」


「まぁな。そっちはどうだった?」


「まあまあかな。どっちかというと私は介護されてた側だし」


「ならもうちょい鍛えなきゃだな」


「まだ始めて数時間でしょ。これからこれから。―――ん。」


「それもそうだな…。―――おう。」



再開早々に軽口をたたきながらも、お互いに拳を突き合わせる。二人のその眼には充足感と満足感が色濃く浮かんでいた。



「……僕のこと忘れてない?」



ただ一人を残して。






ー◆ー






短くも長い時間をかけてエリアを攻略し、俺達は無事に合流し、ドライヴィアに到着するのだった。


そう、ここまでは良かった。()()()()()



「あれそういえば今何時だ?」


「四時半…」


「…」


「二人共どうかし…」


「悪い希空!俺たち抜ける!また来た時に連絡するわ!」



そう言うと俺達は急いで宿屋(セーブポイント)に向けて走り出す。



「まずいまずい!」


「ちょっと二人とも!?」



希空が何か言っていたが気にしてる場合じゃねぇ!




ー◆◇ー




人は禁を破ってはならない。それは罪になるからだ。

学生は徹夜をしすぎてはならない。それは遅刻と授業中の居眠りにつながるからだ。

それは誰に対しても当てはまる事であり、一つの真理でもある。つまり何が言いたいかというと、



「二人とも。何か言うことは?」



時は現在。俺達は偉大なる母上(マイ・マザー)を前に正座をしていた。理由は言うまでもなく...



「はい。学校に支障が出る時間までゲームをしていた挙句、学校で爆睡をかましてしまい申し訳ございませんでした。」



「申し訳ございませんでした。」



くっ、いったいどこでバレたんだ。情報の隠匿は完璧だったはず…



「まったく、あんたたちは…紅吏ちゃんに聞かなかったらそのまま流すところだったわ。誰に似たんだか。」



あいつかぁぁぁぁ!後でお礼参り(仕返し)してやる…

というか似たのどうのに関しては推定貴女様だと思いますが……というのは口に出さない。賢い者は荒ぶる炎に対し、更なる燃料を投下しないのだ。



「そこらのボスモンスターよりよっぽど恐ろしい」


「俺達にとってのラスボスだからな」


「何か言った?」


「「いえ!何も!」」



反応した俺も俺だが余計なことを言うな!

やはり母という存在には一生をかけても抗える気がしねぇ…



表向きの家長は基本的に何も言ってこないのが世の常。

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