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No.107 飛空艇レース参加申請

惑星防衛システムは、いつの間にか空の遥か彼方へと飛び立っていた。


カルルの飛空艇は、ベルラード大陸中央部を抜けてヴィスターク王国の国境を越えたが、集落らしきものはなく標高1000m程度の山々が連なる山脈が延々と続く。


そこを抜けると、城壁に囲まれた都市が現れた。


城壁の外に飛空艇を着陸させると、武装した数人の兵士が走ってくる。


「お前達、そこに飛空艇をとめるな。あそこに飛空艇の駐艇場があるからそこに置け!」


兵士が怒鳴り声を上げて場所を指差したため、その指示に従い飛空艇を駐艇場に置いたが、そこにはカルルの飛空艇のみが置かれていた。


飛空艇を出てカルル、アリス、ハンド、パトリシアとゴーレムのヴァイオレットの5人で城壁の門へと向かい、この街に来た理由を門番へ告げる。


「この国で飛空艇のレースがあると聞き、出場したいのですがこの街で手続きはできますか?」


カルルの言葉に門番は、少し考え込むとこんな返答をした。


「街に飛空艇ギルドがある。そこで受付けしているんじゃないか?」


カルル達は、街へと入り門番が言っていた飛空艇ギルドの建物へとやってきた。


飛空艇ギルドの建物は、こじんまりとした3階建てのレンガ作りだ。


建物内に入ると他国にある冒険者ギルドとは雰囲気は同じだが、壁に貼り付けられた紙にはクエストではなく、荷物の運搬、人の輸送、飛空艇の修理依頼、飛空艇の建造依頼など、飛空艇に関する仕事や依頼ばかりだ。


カルルは、カウンターに向かうと受付の女性に飛空艇レースの話を切り出した。


「この国で飛空艇のレースがあると聞いたので出場の手続きをしたいんです」


受付嬢は、少し間を置きカルルの姿を見定めるとこう切り出した。


「飛空艇レースに出場するのは、飛空艇ギルドの会員になる必要があります。会員証をご提示ください」


受付嬢の言葉には、感情を排除した機械的な対応に感じる。


「飛空艇ギルドの会員証は持っていません。会員になるにはどうすればいいですか?」


受付嬢は、カウンターに入会の案内が記された紙を並べると、その内容を要約して読み上げる。


「ここは飛空艇ギルドです。飛空艇に関する仕事に従事する者を支援救済することを前提に活動しています。飛空艇に関する仕事というのは、物資輸送、旅客輸送、護衛、傭兵、飛空艇用の魔石製造、飛空艇修理、飛空艇製造などがありますが、どれに従事なさいますか」


カルルは、カウンターに出された入会案内に目を通しながら、自身の職がどれにあたるのかを見定める。


「僕は、飛空艇製造だね。それと飛空艇用の魔石製造もできるし飛空艇修理もできる」


カルルの言葉を聞いた受付嬢は、自身の耳を疑いつつもそれを復唱する。


「飛空艇製造と飛空艇用の魔石製造ということですか。でも両方をおひとりでこなせる職人は、この国でも10人もおりません。にわかには信じられませんが」


「だったら飛空艇を創るところと魔石を錬成するところをお見せしますよ」


「では、ギルドの職員を呼んでまいりますので、この建物の裏にある作業場で確認いたします」


すると奥の事務所から老齢の男性職員が現れ、カルル達を建物の裏手にある作業場へと案内する。


作業場には、数人が乗れる程度の小さな飛空艇が1艇だけ置かれていて、その外壁が剥がされ新しい外壁に張り替えれていた。


「ここで飛空艇の修理をしているんですか」


「そうだ。ただ場所が狭くて大きな飛空艇の修理はできなくてね」


カルルは、作業場の天井の高さや作業できる広さを目測で確認し、ここでなら飛空艇を創れると判断した。


「では、今から飛空艇を創ります。創るのは通常型の飛空艇で操術師など乗員5人、他に客として搭乗者を8人と見積もります。到達限界高度は1500m、限界速度は250km、使用する魔石は魔力の魔石3個、浮遊の魔石3個、飛空の魔石3個です。武装や防壁などは装備しません」


「そっ、それで構わない」


カルルが話す飛空艇の仕様についてギルドの職員は思わずたじろいでしまう。


飛空艇の仕様について詳しい者など、飛空艇ギルドの職員でもそうはいない。


それを目の前にいる少年は簡単に言ってのけると、作業場で飛空艇創りを始めてしまう。


まずは飛空艇の床部分を創り、次に躯体を創り、各部に強化魔法を施し、2階の床を創り、内壁、外壁、さらに各部に強化魔法を施し、2階の操術席の前に魔石ガラスを創り、操術師席の前に操作卓を創る。


1階の床と内壁を伝って2階の操術師席の操作卓の前に魔道回路を創り、2階の操作卓に2個の魔力の魔石を埋め込み、1階の床内に魔力の魔石1個、浮遊の魔石3個、飛空の魔石3個を埋め込み、全ての魔石を魔道回路で繋げていく。


そして最後の仕上げとして魔力の魔石の魔法術式を開き、魔道回路で繋がれた全ての魔石を制御する魔法術式を構築していく。


以前は、この全ての作業に2日を要したが、飛空艇を300艇近くも創ってきた経験により半日ほどの工程でこれらを完成させるまでになっていた。


飛空艇作りを初めて見たギルド職員は、各工程の手際の良さに思わず目を見張る。


「あの少年は今までにどれくらい飛空艇を作っているのですか」


ギルド職員の問いかけにハンドが答える。


「確か300艇近くの飛空艇を作ったはずです。今では飛空艇を作るゴーレムと魔石を錬成するゴーレムを使役しているので、カルル殿が飛空艇を作らなくても量産することが可能です」


「ゴーレムが飛空艇を作るですと!」


「声が大きいです。そのことはご内密に願います」


「あっ、ああ。すまない」


カルルの飛空艇創りは、陽が暮れる頃には終わりを迎えた。


「飛空艇創りは、これで終わりました。武装、防壁、その他の魔石装備も出来ますが別料金で対応しています」


カルルは、飛空艇にギルド職員を乗せ2階の操術師席に座り、操作卓に埋め込まれた魔力の魔石に手を乗せる。


すると飛空艇はふわりと浮き上がり、作業場の大きな出入口を抜けて空へと舞い上がった。


「この飛空艇の装備は標準仕様です。価格は金貨1000枚。1艇のみの購入でしたらお支払いは一括でお願いします。数艇から数十艇をご購入の場合、年1回の30年分割払いも承っております」


ギルド職員の男は、カルルの流暢で慣れた説明と全く揺れない飛空艇の操術に声も出ず、夕暮れの空を飛ぶ飛空艇の乗りごごちに目を見張っていた。


数十分後、山の稜線に陽が隠れて夕暮れから夜へと移った頃、ギルドの作業場へと戻った飛空艇は地上へ静かに着陸した。


「僕が飛空艇創りと魔石の錬成を行えるのは信じていただけましたか?」


職員は、静かに頷くとギルドの事務所から入会の書類を持ち寄り、職を現す欄に"グランドマイスター"と記入した。


「このグランドマイスターという称号は、ひとりで飛空艇を製作できる人にのみ飛空艇ギルドが与えるもで、この国には10人にも満たない者しか持っていないものだ」


作業所には、既に勤務時間が終わったというのにギルドの職員が集まり、カルルが半日で作りあげた飛空艇を見物していた。


「それでだが、この飛空艇はどうするんだね」


「飛空艇ギルドの会員証の職を確認してもらうために作っただけなのでこれから廃棄します」


「廃棄、この飛空艇をかね。だったら少し待って欲しい」


ギルド職員は、カルルに待つように伝えると事務所へと戻り、しばらくしてカルルに契約書を提示した。


「この飛空艇をギルドが買い取る。カルル殿の入会料は不要だ。そのかわり支払いは先ほど言っていた30年間の分割払いでお願いできないか」


カルルは、少し考えるとこう告げた。


「でしたら、防壁の魔石をサービスで装備しましょう。今後、僕と飛空艇ギルドが良好な関係を築けますように」


カルルは、ヴィスターク王国は麻薬をばら撒き他国を侵略する敵という認識でいたが、だからといってヴィスターク王国と飛空艇ギルドは同一という考えてはいけないと思い直すことにした。


この国で飛空艇を使った職業が存在し、それらに従事する人々を支援救済する団体であるならば、無碍に扱うのは違うと思えたのだ。


「では、飛空艇の契約は成立だ。ギルドの会員証は明日にでも発行する。それと飛空艇レースの説明もあるから、明日朝にまた来てほしい」


カルルは、この時点では全く気付いてはいなかったのだが、カルルの飛空艇創りを観察していたギルド職員は、このギルド支部の責任者であるギルドマスターであった。


その夜は、ギルドが紹介した街の宿屋に泊まることになり、5人は宿へと向かう。


夜の街は薄暗く通りを照らす魔道ランプの灯りもまばらだ。


「何だか寂れた街ね」


アリスの何気ない言葉にカルルが口の前にひとさし指を立てる。


「アリス。街の人が聞いたら嫌な思いをするから、そういった言葉は慎んで」


アリスは、無邪気に思ったことを口にしただけだったが、それが他人にどう聞こえるかまで考えてはいなかった。


紹介された宿屋は、この街でも高級な宿屋であり飛空艇ギルドの職員が書いた紹介状を宿屋の従業員に見せると、最高級の部屋へと案内された。


「あのギルドの職員さんは、かなり偉い人だったのかな?」


アリスの言葉に頷くカルル。


「宿屋の従業員に聴いたら、あの男性職員は飛空艇ギルドの責任者みたい」


「責任者って、ギルドマスターってこと!」


「だから飛空艇を購入する決済ができたんだと思う」


カルル達は、飛空艇レースへ参加するために立ち寄った街で、飛空艇ギルドのギルドマスターと関係を築き、飛空艇を売る契約まで結ぶことができた。


だが、それはこれから起こる嵐の前の静けさというものに他ならなかった。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:265

 1000艇まで残り735


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※予備として収納の魔石に保管

 ・飛空艇試作四号艇 ※カルルが使用



◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)

・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)

・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)


◆ベルラード大陸


ヴィスターク王国・飛空艇ギルド支部向け飛空艇 1艇(通常型1艇)


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