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No.106 火龍の縄張り

惑星防衛システムの上空には真っ赤な巨体で空を飛ぶ火龍、少し離れて黒く小さな梟の姿をした暗黒龍、その後ろにはカルル達が乗る新しい飛空艇が直線上に並ぶ。


火龍は、カルル達が乗る飛空艇など眼中にはなく、その前を飛ぶ黒く小さな梟に視線と全神経を集中させている。


<以前にも会ったな>


<そうだな。ここも貴様の縄張りという訳か>


<そうだ。他の龍が我の縄張りに入れば排除する>


黒く小さな梟は、本来の暗黒龍の姿へと戻り空の上に自身の魔力で創造した透明な足場の上に4本の足で立ち尽くす。


<うぬはなぜ矮小で傲慢な人族と行動を共にする。あのような存在など我らからすれば取るに足らぬ虫けら同然の存在であろうに>


<確かにそうであることは認める。だが、その虫けらが我らが住むこの星を守っていることを知らぬ訳でもあるまい>


<それは遥か昔の話だ。この星を守ると我ら龍族と約束した種族はとうの昔に滅んだ。今は矮小で傲慢な種族が幅を利かせ、我の縄張りを踏みにじる。だから我は奴らを滅ぼす>


<だが、遥か昔にこの星を守ると約束した種族が残した遺跡は今も活動している>


<そんなことなど我が知ったことではない>


<この星を守るという行いは今は彼らが引き継いでいる。故に我は彼ら人族を助ける>


<ふん。矮小で傲慢な人族と迎合する龍族の面汚しめ。どうせ縄張りも持たずに世界中を放浪しておるのであろう。龍族の面汚しめ!>


火龍の巨体は、暗黒龍の倍程もありその姿だけを見れば火龍の強さは圧倒的だ。


対して暗黒龍は、火龍の半分程の大きさしかなく翼も無いが、顔の片側には6個もの目があり両側には合計12個の目が存在している。


それによりどの方向をも見ることが出来、さらにどの方向からの攻撃にも対処できる。そして暗黒魔法と防壁魔法を使いこなす魔法に長けた龍族である。


火龍は、戦線布告とばかりに暗黒龍に向かって火弾を放つも、それを軽々と避ける暗黒龍。


<そんなもので我を倒せると思ったのか。ならば残念だ>


<ふん。口先だけなら誰も世界の覇者になれるわ!>


暗黒龍の物言いにさらに火弾を浴びせるも、空中でダンスでも踊るかのように火弾を避けていく暗黒龍。


<ええい、ちょこまかと面倒くさい奴め。我の火弾がそんなに恐ろしいか!>


火龍の言葉に呼応するよう暗黒龍は、その足を止めると体の周囲に防壁を展開し、火龍が放つ火弾を全て受けて見せる。


<この程度の攻撃を防げなくてどうする。少し遊んでやっていることも分かぬとは、目の前の火龍はよほどの傲慢か相手の力量を見定めることができない無能龍だ>


<我を無能龍と言うのか!>


火龍は、暗黒龍に近づくと口から炎のブレスを吐き出しながら、暗黒龍の防壁に向かって体当たりを行う。


だが暗黒龍が展開した防壁は強固で火龍が放つ炎のブレスも、火龍の鋭い爪も防壁に傷を付けることさえできずにいる。


<ええい小賢しい。ならば我の魔力を込めた火弾をくれてやる!>


火龍は、体内の魔力を練り上げるとそれを火弾として暗黒龍に向かって放つ。


だが、それすらも暗黒龍の防壁の前では、巨大な炎の塊となって霧散していった。


<くそ!なぜ我の攻撃がこうも効かぬのだ>


今まで地上での空でも負けなしの火龍であったが、ここまで戦いで苦戦したことはなかったため、焦りの色を隠せずにいた。


ここで火龍は、あることに気が付く。


それは攻撃を行っているのは、火龍のみで暗黒龍は全く攻撃をしてこないということだ。


<お主。まさか龍族同士は戦わぬという古の長老達の決め事を守っているのか?>


その問いかけに暗黒龍は無言で返した。


<古の長老達が決めた事など誰も守ってはおらぬわ!>


火龍と暗黒の戦いを見ていたカルル達は、龍族同士の戦いの場から距離を置き上空からその戦いを観戦していた。


「龍族同士の戦いって凄いわね」


アリスがその光景を食い入るように見ている。


「我らはもう少し離れた方がよろしいのでは?」


アリスの行動とは裏腹にハンドは周囲の状況が良く見えていた。


「この飛空艇なら火龍の攻撃には耐えられるかもしれませんが、乗っている私達が耐えられるかは別の話です」


ハンドに呼応するようにパトリシアもこの状況の危うさを的確に捉えていた。


「龍族同士の戦いを近くで見られる機会なんて無いからちょっと残念だけど仕方ないか」


カルルは、龍族同士の戦いの場から離れるために飛空艇をさらに上空へと進ませる。


だが、その行為は火龍の目には戦いから逃亡する者として映り、それを逃がさずには置けない衝動へと駆り立てた。


火龍は、龍族同士の戦いの場から離れていく飛空艇に向かって突進を始める。


カルルの飛空艇には魔法防壁と物理防壁の魔石を装備しているため、魔獣や飛空艇或いは飛空戦艦との戦いには対処できるものの、龍との戦いを想定はしていないため対処方法など知る由もない。


そう、今までは。


だが新しい飛空艇にはとある魔石を装備したことにより、どんな相手であっても魔力が続く限りその攻撃を避ける手段を手に入れていた。


カルルは、アリス、ハンド、パトリシアにその魔石でどういった操作を行うことで相手の攻撃を避けることができるかを説明した。


そして飛空艇に向かって突進してくる火龍に向かって、飛空艇の周囲にその魔法を展開する。


火龍が空を飛ぶ速さは凄まじくカルルの飛空艇の目前へあっという間に迫り、その巨体を飛空艇にぶつけてきた。


だが火龍の姿は飛空艇を飛び越えてその先へと向かって飛んで行った。


突然、目の前から消えたように見えた飛空艇は、火龍の遥か後方にいて空中で静止したままだ。


<なっ、何をした。我を愚弄するか!>


火龍は、引き返すと再びカルルの飛空艇へと突進をするも再び飛空艇を飛び越え、その先に広がる空を飛んでいた。


<おのれ、我を愚弄するにもほどがあろう!>


火龍は、再び飛空艇へ向きを変えると今度は、その大きな口から数発の火弾を飛空艇に向けて放った。


火弾は、飛空艇に向かって飛ぶと当たる直前に姿を消すとその後方に現れ空の彼方へと飛び去っていく。


<なっ、何が起きているというのだ・・・>


すると、暗黒龍が飛空艇の横に並び火龍に向かってこう言い放った。


<うぬは、縄張りを冒す者を許さないと言ったな。ではあれはどうなのだ>


暗黒龍が見上げた空には、数十を超える炎と尾を引く煙が地上へと向かって飛んでいく姿があった。


<あれは大災害!>


<大災害?違う。あれはこの星の外を飛ぶ隕石が地上へ向かって落下している姿だ。うぬはそんなことも知らぬのか!>


だが、暗黒龍の言葉は火龍には届かない。


<さあ、どうする。うぬの縄張りを脅かす隕石・・・いや、大災害とやらをうぬのブレスで何とかしてみせるがいい。さあ、やってみせろ!>


暗黒龍の言葉に険しい表情を浮かべながら火龍は、飛空艇と暗黒龍の脇をゆっくりと通り抜けると、隕石が落ちるであろう火龍の縄張りへと飛んでいく。


<この勝負、いずれ決着をつける。それまで休戦とする>


<ふっ、随分と都合がよいな。まあよい。いずれ決着を付けるのは了承した>


火龍は自身の縄張りに向かって落下を続ける数十もの隕石を追って大空を全速力で飛んでいく。


そして火龍の姿が空の彼方に消えた頃、地上へと落下した数十の隕石は地上の山々を次々と吹き飛ばし、爆風と噴石をまき散らしながら周辺の山々をさらに破壊していく。


<あの山々の先は、まさしく大災害であろうな>


暗黒龍は、黒く小さな梟の姿となり飛空艇へと戻る。


「梟さん疲れ様」


カルルが梟の姿に戻った暗黒龍にねぎらいの言葉を向けるも、梟はカルルが着る服のフードに潜り込むとあっという間に寝てしまった。


「カルル殿、先程の火龍が飛空艇に近づくことができなかった理由を教えて欲しい」


「あれは空間転移魔法なのですか?」


ハンドとパトリシアは、目の前で起きた現象の説明を求めてきた。


「ああ、あれは飛空艇の前後に空間転移魔法を展開しました。その2ヵ所を繋げておくと、飛空艇の前から近づいてきた物体を飛空艇の後ろに転移させられます」


「空間転移魔法で火龍を転移させられると!」


「はい、ただ空間転移の距離が遠くなると魔力の消費量がもの凄いことになるので飛空艇の周囲でのみで使います」


「この飛空艇も空間転移はできるのですか?」


「それなんですが、僕の飛空艇の空間転移魔法はA地点とB地点を結ぶ方式で、空間連結方式と勝手に読んでいます。

これだと飛空艇が中心になって他の物体を空間転移させるので、この飛空艇自体を転移させることはできません」


カルルは、空間転移魔法についての説明をさらに続ける。


「もうひとつはA地点とB地点の空間を入れ替える方式で、空間入れ替え方式と勝手に読んでいます。」


「これだと遠くへ瞬時に移動できるのですが、空の上であっても転移先に標高の高い山があったり、積乱雲の中や雷雲の中に転移すると大変なことになるので、危なくてやりたくはないです」


「だとすると障害物の多い地上で空間転移魔法を使うのは、かなりの危険を伴うということですか」


「空間転移先がどんな場所か分かっているなら別だけど、仮に転移先に人がいたとしたらその人の体は分断されて死ぬんじゃないかな」


カルルの言っていることを理解したハンドとパトリシアは、空間転移魔法の便利さと危うさについて理解したようだ。


カルルの新しい飛空艇は、飛空艇レースに参戦するべくヴィスターク王国へと向かった。


そこは、惑星防衛システム内で戦った兵士達を送り込んだ敵地でもある。


そのため、カルル達は細心の注意を払いつつ行動することが求められた。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:264

 1000艇まで残り736


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※予備として収納の魔石に保管

 ・飛空艇試作四号艇 ※カルルが使用



◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)

・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)

・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)


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