↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/59

42 カピス島(3)

昨日の医師の診断とカイルの知識の結果、邪気を浴びるとより早く病状が悪化すると判断した。


魔植物は普通の植物と違って、、大地の魔素から栄養をとって育ち、その魔植物が大きく育つと、コアも大きくなる。

その魔植物の大きさによってコアの大きさもそれぞれ違う。

なので、魔族の住む大陸では、その魔植物が枯れて朽ち果てた中からコアがよく見つかる。


市の体にあるコアの大きさは、それほど大きいものではないようだ。

つまり、邪気を貯める容量も多くはないというのが、医師の判断である。



それで、出港準備を大急ぎで進めた。カピス島を予定より早く出港し、海賊の結論を聞きに行くことになった。


ユーグは逸早く、シェルドナールに帰国して、療養して欲しいと市に懇願した。


「しかしの、ユーグ。まだコアの最終暴走迄、まだ時間の余裕がある。故に最重要課題は海賊の解決だと思うています」


昨夜、市は立ち直れない程落ち込んでいた。傍で見ていたユーグが心配する程に、市の顔は青ざめていた。

しかし、一晩寝たら元の、元気な市に戻っていた。


そして、今ユーグとこれからについて、意見が割れて揉めているのだ。


騒ぎを聞き付けたカイルが、二人の間に割って入る。


「ユーグ様、魔王様には直ぐに会いに行けません。その間、無駄に時間を過ごすより、海賊の件を片付けておくほうが良いでしょう」


そう言って、カイルがスッとユーグに近付き、耳打ちする。

「考える時間を与えると、悪い方にばかりの考えてしまいます。市は海賊の事を考えてて貰う方が良いでしょう」


「あっ」ユーグが納得して、カイルの顔を見る。


その様子を、訳がわからない市が不満気に腕を組む。

「何の話をしておる?」


「市様のいう通り、アビスの島に行きましょうと言う話をしていました」


ユーグの険しかった顔が、急に優しく穏やかになった。あれ程反対していたユーグが、なぜ急に海賊の解決優先を許可してくれたのか気になるが、市の思惑通りになったのだからいいかと思い直す。


「ユーグが、アビスの所に行ってくれるなら、異存はないかのう」


「では、出港準備にかかります」

ユーグはくるっとカイルの方を向き、

「カイル、昨日の件ですが忘れてますよ」

そう言って、子供にメッとする程度にユーグはカイルを軽く睨む。


「市の・・市様の件は覚えてます」

カイルからの『様付け』に、市はぞわっと鳥肌が立った。


「カイル様からいきなり『様』を付けられると気持ちが悪いのう。何故です?」


「あー・・それはそのーこれからの事を考えて様付けしろと・・」

カイルが言いにくそうにユーグを見る。


「なるほどのう」

カイルの様子から察した市は、その言葉だけに留めた。



船を、アビスが待っている島の方へ帆を進めた。


市達を出迎えてくれた海賊達の表情は、前に訪れた時とは全く違っていた。


海賊達の苦渋の決断に、どんなに重い雰囲気で迎えられるのだろうと思っていた。


しかし、船を着岸した時から笑顔で挨拶され、ほっこりしたムードの中アビスと対面している。


「思ったより早く来てくれて良かったよ」

アビスが軽い感じで話す。


「では、結論が出ていると言う事ですね?」

ユーグがホッとして、聞く。


ユーグは逸早くこの会談を終わらせて、市を療養させたいので、この状況に喜んだ。


「魚が売れない以上、漁師は続けられない。海賊稼業もそこのお姫様に叩き潰される。となれば、残された道は1つしかないだろう?」


「私は、魚が売れるまでの手助けをしたいと言うのじゃが・・」

はて?そんな事を言った覚えがないと言う呈で、首を傾げた。


「はいはい。まぁ、そういう事になったので、お世話になります」


海賊達の顔は、これからの希望に顔が明るい。

(この顔を、曇らす事のないようにせんとのう)

市は気持ちを引き締めた。


「海軍の海兵隊員は家に長い間、帰れぬ事も多い、危険も多い。その分給料は、先日提示した分になる。それを踏まえた上で、海軍の海兵隊員か、海軍所属の水先案内人になるか言って欲しい。勿論そのまま漁師に残る者も、魚の買い取りをします」


ずっと海賊をしていただけあって、危険と言う言葉に躊躇(ちゅうちょ)はなく、海兵隊員を希望する者が多かった。


「じゃあな、市さん。今度会ったら『市様』って呼ぶね」

アビスが別れる時に、私とユーグにウインクして手を振った。


市はトルベツに戻って、トルベツ海域の魚に関する、通商協議を見直しを考えていた。

しかし、既に交渉管がシェルドナールから向かっているという報告を受け、市はトルベツに寄港せず、一路シェルドナールへと帰ることになった。


市はトルベツの貿易商のホセに会って、船を借りたお礼を言いたかったがその役目も、他の人に取られた。


甲板でむすっと海を眺めている市の横にユーグが立った。


「随分とご機嫌斜めですね?」


「何だか中途半端な気がしてのう、最後まできちんとしたかったと思うて、不貞腐(ふてくさ)れております」

海を見ながら、面白くなさそうにほっぺを膨らます。


「しかし、シェルドナールでは爆発寸前のお方が待っておられます」

その言葉に、市の耳が真っ赤になった。

市が何かを言いかけて止める様子を見て、クスッとユーグは笑う。


「うん?・・こちらに船が向かって来る」


トルベツ海域の最南端を航行中のこの船に、一隻の船が近寄ってくる。


リベルだ。


色々あったが、トルベツの宰相ヤクプが頑張ってくれたお陰で、これからは良い国交が構築出来そうなのだ。


ここで、問題を起こしては今までの苦労が水の泡となる。


リベルの乗船をにこやかに受け入れる。


「市、表情が固いが、私はただのお別れの挨拶を述べに来ただけだよ。」

本当にそうだったらしく、リベルは憑き物が落ちたような爽やかな顔で笑う。


「無理矢理ではございましたが、滞在中のもてなし、ありがとうございました」

嫌みを含んで市が返す。

ふふっとリベルが笑い、次にユーグに向き直す。


「ユーグ、どこに居ててもお前は俺の弟だ。何かあったら頼って欲しい」

リベルがギュッといユーグを、抱き締めた。


(本当はこれが言いたくて、ここまで来たのか。天の邪鬼(あまのじゃく)なリベルが漸く本音を言えたようじゃ)


「ありがとう。兄さん」

ユーグがオズオズと頬を真っ赤に染めて、兄の背中に手を回した。


2人は最後に握手を交わし、離れた。

リベルが去り際、市にそっと話す。

「ユーグがずっと持っているメデューサの

刺繍(ししゅう)のハンカチなんだが、もう一度ちゃんとしたのを刺繍してやってくれ。兄としての頼みだ」


「?」


「じゃあな!」

市が驚いてるうちに、さっさと船を乗りかえて離れていった。


(メデューサじゃなーい)

と市は心の中で拳を握ったが、ユーグがあれをまだ大切に持ってくれている事に申し訳なく思った。


帰ったら、また刺繍の先生に来てもらおう。しかし、あの苦行が始まると思うと、ため息も出た。




区切りが良いところで終わった為、短くなってしまいました。

すみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。