表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/59

10 風林火山(1)

私の父がいつも 私に言っていたわ。

「お前は王の妻に相応(ふさわ)しい。 お前に比べたら 他の女はクズだ 」


そうよ 、皆が私の言うこと聞いていればいいのよ 。

なんでも私の思い通りにできるはずだった 。

こうなったのは誰のせい?

ミラは爪を噛んだ。






執務室で、エルベルトは、ため息ばかりついているテオフィデールを心配?していた。


まさか、誰にも屈しない兄のこんな姿を見るなんて、複雑な気持ちだった。


複雑というのは、つまり心配でもあり、面白いのだ。


心配してる風を装って話しかける。

「陛下、大丈夫ですか? 今日も市様は、あっという間に自室に戻られましたね?」


「うむ・・」


「一体どうされたんですかね?陛下、市様に何かされましたか?」

テオフィデールが下を向いたのを良い事に、エルベルトは分かりきった事を聞きながら、吹き出しそうになるのを堪えていた。


「う、」

返事に(きゅう)するテオフィデール。


ニコラが王に助け船を出す。

「陛下はきっと焦ったのでしょう」

「うっ」


ニコラの助け船は沈没した。


宰相アイレスは、ニコニコその様子を見守っている。


テオフィデールは辺りを見渡した。心配げなルイスと目が合う。

「ルイスは結婚しているから、女の事はよく知っているだろう?」


「まあ、ある程度は」


「市が俺の事を、どう思っているのか知りたいんだ。ルイス、聞いて来てくれないか?」


エルベルトとニコラは

(明らかに人選ミスだ!)

と思ったが、何も言えなかった。


「任せて下さい。陛下」

意気揚々とルイスが部屋を出て行く。


アイレスは相変わらず、ニコニコとルイスを見送った。






市は未だに1枚目のハンカチの刺繍をしている。


(針仕事は苦手じゃのう)

しかも、近頃はすぐ別の事を考えてしまって、余計に失敗するのだ。


また集中力が切れ、考え事をして、指を針で刺してしまった。

「痛っ」

侍女のマリーが慌てて手当てする。


(先日の事が頭から離れぬ。どうテオに接すれば良いものか)


ノックが聞こえ、返事するとルイスが入ってきた。


「珍しいの、ルイス。何用ですか?」


「市様、単刀直入にお尋ねします。陛下の事をどの様に見ておられますか?」


マリーは(何てデリカシーのないい質問なの)と思ったが、マリー自身もとても気になっていたので、ルイスに注意する事なく、市の答えをドキドキしながら待っていた。


「どのようにとな? うーん、

王は献身的に領民の事を考えておるし、先日の人喰い馬の時も、とても頼もしいと思うた」


「そうなんです。剣術も強くて、我々騎士も、誇りに思っています」

ルイスは我が事のように胸をはる。


「政治の面でも、税の事、貿易の事、なかなか良き(まつりごと)

》をしておられる」

市は王都を思い浮かべて、テオフィデールの辣腕(らつわん)ぶりを評価した。


「そうです。港の整備は陛下の代で、更によくなったんです」

ルイスは市の意見に深く頷く。


マリーは、本題からどんどんずれて行くのを止められない自分が

、歯痒かった。(違ーう)


しかも更にずれる。

「じゃが、未だ磐石(ばんじゃく)ではない。やはり、この国の土地を育てる治水。それと、人を育てる為の専門知識を学ぶ学校が足りぬ」


「 うーん。治水と学校ですか。

良い事を聞きました。早速、陛下に 進言しに行きます。イヤー、誠に良い意見が聞けた。ありがとうございました」


ルイスが部屋を出るのを見送ったマリーは、ため息しか出なかった。

(はー、やっぱり、そんな答えしか出ませんよね)


執務室に戻って来たルイスの話を聞いていた3人の数分後・・・

テオフィデールを筆頭に、皆は首を振りつつため息をついた。

(やはり人選ミス)


テオフィデールは落胆の色を隠しながらも、少し、その話に興味を持った。

「治水と学校か。市に直接聞きたいので、呼んできてくれ。」

ニコラがすぐに市の部屋に向かった。


テオフィデールに呼ばれた市は、先日の事もあり、少し緊張していたが国の事を話し出すと、すっかり忘れていた。


そして、いつものテオフィデールと市に戻っていた。


「この国では、男も女も共に入れる学校があり、とても素晴らしい事じゃ。私の国では誰もが入れる学校がなかったので、羨ましい限りじゃ」


「俺が市に教えてやろう。何を学びたい?」


「本当かの? 教えて欲しい事があるので、また今度教えて下され」


テオフィデールは嬉しそうに頷く。


市は、戦国の『足利(あしかが)学校』を考えていた。

足利学校は、専門性の高い学校だった。


「この国の学校は、基礎までで終了してしまう。その上を目指す学校がいると思うています。

武・知・医・政の専門知識を学ぶ学校じゃ。

そうそう、この国の魔法の才能を伸ばす学校もいるの」


アイレスが乗り気になってくれた。

「ほう、それは人材育成にぴったりですね」


「昔、武田信玄という方がおられてその方が『人は石垣、 人は城、人は堀、情けは味方、 仇は敵なり』と仰って、常に領民の意見を聞くお方であった。先ず、国力は人の力です。個々の適正に合った才能を伸ばし、豊かな人材を育てましょう」


「厄介な王様を支える、執事の学校があっても良いのではないか?」なにやらニコラがモゴモゴ言っている。


テオフィデールは横目でニコラを見ていて、何か言いたげだったが口を閉じた。


「我が国で一番高い山、セルブス山は豊かな伏流水で人々の生活を支えているが、一度に多くの雨が降るとトパー川が氾濫(はんらん)をしてしまう」


「でしたら、やはり治水が必要です。信玄公は川流域に住む人々の意見を聞いて、川を観察して信玄堤、万力林を作っておられました」


「湾岸整備をして、貿易も順調に行っている。治水と専門的学校か。国が豊かになるには必要な事だな。まずは治水だ。その、『万力林』と言うのを今度説明してくれ。それと、用意を調え次第、氾濫がおきる川を見に行くが、市も行くだろう?」


「もちろん、見ておきとうございます」


テオフィデールを真っ直ぐに見て返事をする市。


「所で市、先程から名前が出ている武田信玄とは知り合いか?」


「兄とは敵対していたので、お会いした事はないです。でも有名な方だったので知ってますし、功績も残っております」


「会ったこともないのか。そうか、そうか」


それを聞いて安心したテオフィデールは、視察準備に取り掛かった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ