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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
2章 宝瀬真百合とコロシアイ
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天谷真子 2










 いよいよはじめの一歩を踏み出す。


「「あ………」」


 いきなり誰かとエンカウントした。


「えっと君は………天谷ちゃん」

「ちゃん付けしないでください」


 さっき早苗の後ろでハァハァしてた、とってもとっても危ない子だ。名前は天谷真子。ただの変態。


「あまやんは、このゲームどう思う?」

「あまやんとも言わないでください」


 ん?何で武器構えたの?


「先輩には、拳銃貰っていましたか?」

「部屋に落ちていたけど、あんな物騒なもの持ち歩けないな」


 それに無許可の拳銃を帯銃するのは法律違反だ。


「先輩。折角ですから真子のために死んでくれませんか」


 どういう折角だ。


「真子のギフト贋工賜杯フェイクメーカーは、知っての通り物を複製するギフトです」


 以前画鋲をたくさん上履きの中に仕込まれた。


「先輩のギフトはどんなのですか?」

「俺が言うと思っているのか?だとしたら天晴れよ」


 脳内がな。


「もちろん思っていません。せめてどんなギフトを持っているか知りたかったんですけどね」


 天谷は躊躇無く引き金を引いた。


 天谷が銃を扱ったことなくて助かった。もし扱っていれば、今頃俺の脇腹に当たった銃弾は心臓に当たって即死だろう。


「いいのか。そんな簡単に撃っても」


 片腹を押さえながら、話しかける。その間に傷も治すんだけど。


「大丈夫ですよ。撃ってすぐ、銃弾を複製しますから」


 つまりいくら撃っても減らない無限の銃弾というわけか。


「やっかいだ。だがしかし、俺と相手するには力不足だな。後輩」


 俺は少し格好つけてみる。


「確かに天谷の贋工賜杯フェイクメーカーは、この空間では厄介な異ギフトだ。だがな、その程度では生き残るのは不可能だ」

「はったりですね。分かりますよ。先輩嘘付くとき格好つけたがりますから」

「…………………」


 俺かっこ悪。


「ん?てか何で天谷がそんなにも俺のこと知ってるんだ。さてはお前俺のファンだな」

「違います」


 即答だった。


「お姉さまに近づいた害虫を排除するために駆除方法を研究したんですよ。敵を知り己を知れば百戦危うからずと孔子も言っていたじゃありませんか」


 格好いいセリフだ。


「残念だったな。そのセリフは孔子ではなく孫子だ。孔子だと論語だな」


 顔がリンゴみたいに赤くなった。


 その表情を見て愉悦感に浸る俺は結構な小物である。


「それともう一つ。残念だが天谷。お前は何も分かっちゃいない。俺のギフトを知らないでどうして敵を知っているといえる」


 敢えて格好いいポーズを取る。


「まあ折角だ。おつむの悪い後輩に先輩が社会科を教えてやるよ」


 この場合歴史と社会観をかけている。


「だったら教えてくださいよ」


 天谷は俺に向かって発砲した。


 残念だが天谷。既にお前は負けている。


 俺は回廊洞穴クロイスターホールを自分の目の前で発動する。


 大体あの後輩。ずっと銃口をこっちに向けたままである。


 それじゃあコースを教えているようなものだ。


 次元に穴をあけて俺に向かってくる銃弾を、拳銃の隣に出現させてやった。


「きゃぁあ」


 強く拳銃を持っていた天谷はその力でバランスを崩した。


 俺はその好機を逃さずに、天谷を押さえ付ける。


「な、言ったろ。お前は既に負けていると」


 俺は精一杯かっこつける。


「は、離してください!」

「分かった」


 解放した。


「………は?」


いつぞやの疑問符である。


「いや何やってるんですか先輩」

「天谷が離せって言ったんだろ」

「言いましたけど、言いましたけどここは畳み掛けるべきでしょう」

「なんのために?」

「今バトルロワイヤルやってるんですよ」


 そっか。天谷はそう思っているんだな。


「残念だったな。俺はそんなの興味ない。法律なら従うが常識には従わない主義なんだ。大体あんないかれた連中の言うこと聞く必要ないって。大体お前じゃ生き残れないのは間違いないし、生き残った所であいつらが生かしておくとは限らんだろ」

「だったら真子はどうしたらいいんですか。こんな行かれた場所で従わない選択肢はないんですよ」


 大声で泣かないで欲しい。


「確かに。今のお前には従わないという選択肢がない。だから俺は従う選択肢を与えよう。一つ、自然の摂理に従って死ぬか。二つ、あいつらに従ってここで飼い殺されるか。三つ目、俺に従って生きるかだ」

「無理です。だって真子と先輩の他にもあと十人以上のギフトがいるんですよ。どうやって生き延びれると言うんですか」

「十分だ。だってそうだろ?俺とお前が居るんだぜ。だったら不可能だって可能にしてやる」


 偽物を作る能力と偽物を得る能力、素晴らしい能力だ。


「本当ですか。本当に先輩に付いていけば、真子は助かりますか」

「当たり前だ。俺を誰だと思っている」


 だがその前にだ。


「いるんだろ。出てこいよ」


 俺は大声で叫ぶ。


「よく分かったな」


 拳銃を向けた男が二人と女が一人。一人はクラスメイトだ。


「あれだけ泣き喚いたら場所を突き止められるのは必至だからな」


 だから泣くのを止めろと言ったのに。


 一人は同級生。名前は湧井。二人目は恐らく天谷と同級生の一年。最後の一人は三年の先輩だろう。


「嘉神、時雨は能力者全員好きだからお前のこと受け入れたが、この際だから言っておく。おれはお前が嫌いだ」

「だからここで殺すってか。止めておけ。何度も言うが、お前らじゃ俺を殺す事なんて出来ないよ」

「三人に囲まれてお前ら二人で何が出来る」


 三年の先輩が入ってきた。


「本当に、ここにいる二人だけと思っていますか。今後ろに俺の仲間がいるとは思わないんですか」


 男子二人は振り向いた。もちろんいないよ。


「君は振り向かないんだね」

「ウチのギフトは感知タイプだからね。背後を取られるなんて有り得ないよ」


 感知タイプ。是非とも仲間に入れたい。


「みんなもどうだろうか?俺とチームを組むのは」


 二人より五人だろう。


「嘉神、お前話聞いていなかっただろ。おれたちはコロシアイをしているんだ」

「言ってたな。だったらどうしたというんだ。いいか湧井、もしもここにいる能力者全員が参加を拒否すればゲームそのものが成り立たない。つまり不成立なんだ」


 プレイヤーのいないゲームなんて有り得ない。


「だから俺は、全員不参加という事態を作りたい。協力してくれ」


 それが俺の考え出した最良の道だ。


「そんな世迷い言余所でやれ!」


 湧井は俺に向かって発砲した。


 第六感で俺は撃たれる前にしゃがんだ。


 轟音。さっき天谷が撃った拳銃とは比べものにならない。


 支給品のあれじゃそこまでの威力は出ないはずだから


「俺のギフトは武装凶化グレードアップ俺が使う武器の威力を上げるギフトだ。聞いていないと思うけどね」

「そんなことないよ。ちゃんと聞いてる」


 だが効いていない。


「駄目だろ。そう簡単に自分のギフト喋っちゃ。倒してくださいって言ってるもんだよ」

「ちっ。そのすました態度が嫌いなんだよ」


 多分あの威力だと、回廊洞穴クロイスターホールは使えない。穴そのものをもぎ取ってしまう。


 とはいえ、この後輩に格好悪い所は見せるわけにはいかない。折角後輩が俺の信用してくれてんだ。答えるのが先輩の役目だろう。


「それで先輩のギフトなんですか」


 湧井のギフトは理解した。後輩のギフトはさっき聞いた。だからあとは三年のギフトだ。


「教えるわけ無かろう」


 そうだろうな。


 ただ何となくだが、


「カウンター」

「なぜそれを!?」

「先輩だけが、引き金の指に力入れていないんですよ。普通いつでも撃てるようにするはずです」


 攻撃系のギフトならば拳銃には頼らない。


 とはいえ攻撃しないギフトなら、ここにノコノコ現れる必要はない。


 防御ならば、受けた後すぐ反撃するために引き金に力を入れているはず。


 以上のことから、攻撃を誘っている、つまりカウンターだと読んだ。


「本命はカウンター技で、こっちの攻撃を誘ってるですかね」

「その洞察力。見事だ」


 先輩は銃を降ろした。


「確かにおれのギフトはカウンター技だ。だから誰かが攻撃しないと効果を発揮しない」


 だったら今からの敵は湧井一人だ。


「だが二年。別に攻撃するのはおれでもいいんだよ」


 訂正。先輩の方だ。


 先輩は、自分の胸に拳銃を向けて発砲した。


 俺はその一瞬で天谷を掴み回廊洞穴クロイスターホールでどこかに逃げた。




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