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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

2章 宝瀬真百合とコロシアイ

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四楓院琥珀

「ぐああああああ」

 やっぱり失敗した。全身が痛い。

 まず右足の指が三本無くなった。左腕が骨折した。左太ももには抉られた傷跡がある。

「大丈夫ですか先輩!?」

 天谷は俺を心配する。

「大丈夫。すぐ治る」

 鬼人化オーガナイズを発動させることで、回復力も上がる。

 離れた体の部品を取り集め回復作業に入る。

「それより天谷はどっか痛いとこあるか」
「少し腕に掠り傷を負ったくらいです」

 俺より軽傷だった。

「そうです。先輩のこのギフトで逃げればいいじゃないですか」

 希望に満ちた声で提案する。

「それは俺も考えた。だが見ての通り、僅か五百メートル動いただけでこの有様だ。遠くに逃げるなんて自殺するのとと同じだ」

 天谷は少し落胆したみたいだ。

「それにまだ、ここには十四人の仲間がいるんだ。お前の大好きな早苗もな。だから見捨てるなんて出来るかよ」
「先輩は殺されかけてもまだ仲間だと言えるんですか」
「当たり前だ。てか早苗だって何度も殺されかけたし、時雨やお前だって俺を殺そうとしたことあるしな」

 今さらだ。

「先輩って大物なんですね」
「そうか?結構小物だと思うが」

 さっき天谷に仕返ししたこととか含めるとやっぱり俺は二流だ。

「個人的にさっきの感知タイプのギフトを持った女子、名前なんだっけ?」
「空見伊織ちゃんです」
「その子仲間につけたかった。そうすれば多くのやつに接触できる」

 あいつを仲間に出来なかったのは痛い。

 とはいえ、変に勧誘して死んでもあれだったので今はこれで良しとするか。

「そろそろ治ってきた頃だし、天谷は後ろを警戒。俺は前と左右を警戒するから」
「あの……先輩。ホント一体何の能力ですか?瞬間移動できたりお姉さまみたいにすぐに傷が治ったり。基本一人につき一つの能力ですよ」

 そうだよな。この機会になるといわないといけないよな。

「だが教えない」

 チームワークが乱れる。

 キスする必要があるなんてこいつに教えたら、連鎖的に早苗とキスしたことがばれるわけでこいつが怒るのは自明の理だからだ。

「教えるときが来たら教えるから、今は周囲の警戒を怠らないで」

 はぐらかして俺達は先に進む。



「後ろに一人!」
「ナイスだ。天谷」

 俺は雷電の球ライジングボールで一人をショートさせた。てか、同じクラスの舘前じゃねえか。

「くそ……殺せ」
「嫌だよ。手を汚したくない」

 このあとの交渉の結果、舘前も味方に付いてくれた。

 ただ舘前は、集団行動が苦手らしく一人で行動したいらしい。まあ多くの人数を集めるのだ。二手に分かれた方が無難か。

「先輩。逃げられましたよ」
「そうとも言えるが、あいつは結構良いやつなんだ。きっと良い仕事してくれるだろうな」

 信じるの大事。丸投げじゃないよ。



「周囲の警戒よろしく」
「ラジャー」

 今俺の目の前には交差点がある。前方には誰もいないが、左右から来る可能性がある。

 俺は、壁に張り付いてゆっくりと確認する。

「「……………」」

 早苗とエンカウントした。

「びっくりしたー」

 俺は少し声を荒げる。

「お姉さま……?」

 ガチレズの天谷も驚いた。

「おねえさまあああーー」

 抱き付こうとしている。

「一樹。会いたかった」

 だが当の本人の早苗は俺に抱き付いた。

「ギブギブ。チョーク。首締まった」
「怖かったんだぞ。これで助かる」

 殺気!

「せんぱーい。お姉さまから離れてください」

 こわーい後輩の天谷真子は、また俺に拳銃を向けた。

 俺は少し強めに押しのけて

「よかった。早苗が無事で、天谷も心配したもんな?」

 奥義、笑顔で対象を移す。

「はい。お姉さまも無事で何よりです」

 流石白黒激しい女は違う。

「真子、お前は大丈夫だったのか?」
「はい。先輩のお陰で運良く助かりました」

 なんだろうか。嫌な予感。

 わずかに変なビジョンが写る。

 違う。これは既視感デジャヴ!?

「しゃがめ!!!」

 俺は叫んだ。

 二人とも同時にしゃがむ。とたんに銃弾が飛んできた。

「あらあら。どういうことかしら?」

 お嬢様のような喋り方だ。

 そして俺はその声を聞いたことがある。

 確か宝瀬先輩が『琥珀』と呼んでいた三年の先輩だ。

「わたくしの存在を見抜くなんて不可能なことなのに」

 声の方向から右だというのは分かるのだが、それでも全く見えない。

「どこにいる。姿を現せ」

 いや早苗さん。絶対表すこと無いでしょ。

「断りますわ」

 言わなくても分かりますって。

「先輩。名前とギフト教えてくれませんか」
「名前だけなら良いですわよ」

 やっぱギフトは教えてくれないな。ちゃんとそこら辺は分かってる。

「わたくし、四楓院琥珀しほういんこはくと申しますわ。お見知りおきを」
「良い名前ですね。惚れてしまいそうだ」

 嘘っぱちである。名前で惚れる奴なんているわけ無い。

 なのになぜか二人の視線が痛い。

「じょ、冗談はおよしてくださるかしら」

 意外に動揺してくれた。これいけるか?

「四楓院先輩。同盟組みませんか?そっちの方が安全ですよ」

 主に俺達の身が。

「………お断りしますわ。わたくしにメリットがありませんもの」

 いつの間にか、声のする場所が変わっていた。足音も立てないでどうやって?

「メリットならありませんが、もしここで俺達を殺してしまったらデメリットが生じますよ。先輩のギフト、攻撃型じゃありません。だから攻撃はその拳銃に絞られるわけですが、銃弾は足りますか」

 今俺達は三人いる。殺すには最低三発必要だ。

 だが支給されている弾の数は六つ。

「言っておきますけど、俺拳銃捨てましたから、殺しても弾なんて持っていないですよ」

 これは事実である。

「早苗は持ってるか?」
「いや。もう使い切ったぞ」

 残るは、天谷ただ一人だが

「そしてもう一つ、天谷の能力は物を複製することです」
「先輩!何勝手にばらしてるんですか」

 よし。天谷の反応によって信憑性が増しただろう。

「銃弾が一発さえあればいくらでも撃てる。逆を言えば銃弾が一発しか入れていなくても問題ない。賢い先輩なら言いたいことは分かりますよね」
「なかなかやりますわね」

 つまりここにいる俺たち三人を殺した場合、玉の数がマイナス2となってしまう。

 まだ状況が把握できていない状態で、残弾が3にするのは怖いはず。

「いいでしょう。誑かされてあげますわ」

 意外にも先輩はすぐ近くにいた。

 それこそ5メートルもない。

 つまり俺たちはそれだけ接近されても気が付かなかったことになる。

「初めまして。俺は嘉神一樹です」
「名乗ったとは思いますが、四楓院琥珀ですわ」

 挨拶を欠かしてはいけない。

「先輩。俺達の目標は俺達が生き残ることではなく皆が生き残ることです。協力してください」

 俺は頭を下げた。

「いいですわ。確かに冷静になってみれば、この程度の連中に従っているようでは四楓院の名が泣きますわ」

 優しい人でよかった。





「四楓院先輩。そっちに誰かいましたか?」
「いえ。わたくしが会ったのはあなた達が初めてですわ」
「早苗は?」
「………私の所は、三年の先輩方が暴れ出して、かろうじて逃げてきた所だ」

 早苗が逃げ出すとは、先輩たちどんだけ強いんだ。

「じゃ、左から生きましょうか」
「先輩。人の話聞いていましたか?お姉さまが危ないっていっていたんですよ」

 お前こそ人の話聞け。

「だからこそだ。俺達の目標はみんなが戦わないという状況を作り出すことだ。なのに戦っている奴らがいるんだぜ。止めなくてどうする」
「そうですけど……」
「わかった。分かった。早苗と四楓院先輩は天谷と一緒に前進してください。俺は一人で左に行きます」

 なぜかみんな驚いた。

「危険すぎる!やめろ」
「早苗は、俺が負けると思っているのか」
「あそこは危険だと何度言えばわかる!」

 そうなのだろうが

「だから俺が一人で戦場におもむくって言ってんだ。早苗には関係ないだろ」

 まっとうな理論で言い返す。

「それともなんですか。まさか早苗ともあろうものが、怖いのか?」
「ああ怖いぞ。当たり前だろう」

 え?

「死ぬのは誰だって怖い。ここにいる真子や四楓院先輩だってそうだ。だがなぜ一樹は死にいこうとする」

 そうか。そういうことか。

「これだったんだな。何となく嫌な感じがするのは」

 早苗はもちろん天谷や四楓院先輩は命をかけて戦っている。

 だが俺は、自分のことを死ぬとは思っていない。

 口映しマウストゥマウスを含めた5つのギフトがある俺は、普通に戦ったら負けることは無いと心のどこかどもっている。

 要は慢心しているのだ。

 慢心こそが最大の敵なのに俺はその敵に負けてしまっている。

 みんながピンチの中で一人だけ余裕ぶっているのは、考え方によっては格好いいだろう。

 俺もそうなってみたいものだが、生憎俺は脳天に銃弾をぶち込まれたら死ぬ。

 心臓をつき抜かれたら死ぬ。

 毒を盛られたら死ぬ。

 そんな人間が一人で余裕ぶっているのは恥ずべきことではないだろうか。

 いや、むしろ全体の規律を壊す悪とすらいえる。

 そういう人間はむしろいない方がいいのではないか?

 いや。そうに違いない。

「すみません。どうやら俺は無駄に四楓院先輩を巻き込んでしまいました。ですがどうか、戦わないでください。もしも早苗と天谷を殺したら俺が死んでも殺しますから」

 そして俺はそれだけ言って早苗が元いた先輩方がいる方に一人で向かう。

「待て!私も……」
「来るな。早苗は俺なんか構わず、後輩を守ってくれ」

 こっからは男一人の戦争だ。





「お前……何のようだ」
「いっぺん死んどけよな」
「な……俺のギフトが効かないだと!?」
「ふざけやがって」

 これじゃ、何も守れない。だからこそ俺は油断した。油断しきった。緊張の糸は解れきった。

「後ろがお留守だぜええ」

 背後から撃たれた。

 口から真っ赤な液体が流れ出す。痛い。物凄く痛い。

 みんなこの痛みをかけて戦っているのか。忘れてた。定期的に死にかけないと忘れるよな。

 ああ。景色が歪み出す。出血多量だろう。これは死ぬな。

「バカか貴様は!」

 早苗の声が聞こえる。ははは、幻聴が聞こえるな。

 それにしても幻覚も見える。怖いなあ。

「って早苗じゃねえか」

 何となぜか早苗がいた。

 そして早苗はコロシアイが終盤でもないのに鬼神化オーガニゼーションを発動している。あれ体力著しく減ると言っていたのに。

 そのため、一瞬で片が付いた。いくら俺でもあれには勝てない。

「起きろ。一樹!」

 俺は急所を刺されている。回復するより先に出血多量で死ぬだろう。

「なんできたんだ」
「心配になったからに決まっているだろ」

 成る程。早苗は自分以外の手で俺が殺されるのが嫌だそうだ。

 すっげえ嫌われてるな。もはやこれは愛のレベルではないか(笑)

「ああくそ……これが死ぬことかよ」
「喋るな。止血したら助かる!」

 無理だというのは俺が一番分かっている。

「死ぬのは怖くないが、やり残したことがあるな」

 たった一つの後悔。死に瀕した者が残す怨念。

 生にしがみつこうとする俺が、たった一つの遺言を早苗に残す。

「言うな!何も言うな!!」

 泣き喚く早苗を無視して、俺は一言、自分の意思を託した。

「最期に、女の子の腋舐めて死にたかった」

 こうして俺は息を引き取った。



全くどうでもいいことですが去年の大会の優勝者は四楓院さんです。
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