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その恋、賭けですよね? ~天然で無防備な彼女を、執着系彼氏が全力で囲い込もうとしたら周囲も癖が強すぎました~  作者: ぶるどっく


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第八十八話



 寝室の床にぺたりと座り、クリスマスプレゼントを並べていた葵の背後。


 いつの間にか忍び寄っていた彰良の声。


「っ……な、え……?!」


 口から心臓が飛び出しそうな勢いで驚いた葵。


 勢い良く振り向けば、目を丸くした彰良がすぐ側にいた。


「あっ、ああ……彰良、くんっ?!

 えっ?! 忍者?! 忍者の末裔なのっ?!

 私っお命頂戴されるのっ?!」


 歪な指輪やマグカップを彰良に見られたかもしれないと焦る。


「そこまで驚かなくても……。

 自分の家系が忍者の末裔とは把握していませんので、恐らく違うかと。」


 あまりの葵の驚きように丸くしていた目をスッと細め、葵の手へと視線を戻す。


「それで、その指輪は……俺の、ですか?」


 慌てて指輪を握り込み、ラッピングされたマグカップも、旅行鞄に突っ込んだ。


「違っ!

 これは違うのっ!」


 指輪を握り込んだ手を背中に隠して、笑顔で乗り切ろうとする。


「え、えっと……彰良くんの誕生日プレゼントにネクタイピンを作った時に……」


 何と言えば……彰良のために作ったとバレずに、この場を乗り切れる?


「あー……女性向けばっかりも……えっと、アレだから……?

 その……だん、せい向けのワイヤーアクセサリーに挑戦してみよっかなって……」


 彰良から……目を逸らす。


「さっき!

 それを思い出して!

 ハンドメイドの販売サイトに登録しようって思ったの!」


 彰良の眉がピクリと動く。


「だから……これは、彰良くんにあげるものじゃなくて…………えっと、売りもの……」


 尻すぼみになる。


 だって…………売れるはずがない。


 彰良のことを考えて作った指輪。


 試作品とはいえ……彰良のためだけに作った指輪。


「……えっと……」


 そんな指輪が手元に有るだけでも、葵は幸せなのに……売れるはずがない。


「……そうですか……残念です」


「……っ……」


 彰良の悲しげな表情に胸が痛む。


「では……俺が買います。」


「え……?」


 悲しげな表情を一転させて、輝かんばかりの彰良の笑顔。


「え、何を……」


「葵先輩、その指輪は売るのでしょう?

 では、その指輪を一目見て気に入った俺が買います。」


 満面の笑顔。


 だが、いつもの彰良の笑顔ではないと葵は感じ取る。


「それで、いくら支払えば購入できますか?」


「……彰良、くんに……売るつもりは……」


「俺以外の誰かにならば、その指輪を売るのに…………俺には売れない理由を教えて頂いても?」


「ぅ……そ、れは……」


 手の中の指輪をぎゅっと握る。


 彰良と視線を合わせることが出来ない。


「……葵先輩」


 床にぺたりと座り込んで、彰良から顔を背けている葵の頬に優しく触れる。


「……すごく丁寧に作られていると感じました。」


「っ……」


 ゆっくりと葵の体を引き寄せる。


「葵先輩が一生懸命に作った気持ちが込められている」


「あ、の……」


 後ろに隠していた葵の手を捕まえ、体の前に優しく誘導する。


「もし……その指輪に、ネクタイピンに込めた想いと同じものを込めているならば……」


「…………っ」


 葵の力のこもった手に、彰良は優しく手を重ねる。


「俺は、その指輪を俺以外の誰かに渡すことは許容できません。」


 絶対に渡さない。


 葵が彰良への想いを込めて作ったならば……尚更に。


「……でも、ね……初めて作った物だから、彰良くんにプレゼントするつもりは無くて……」


「…………」


「ネクタイピンは上手く出来たけど……この、指輪は……私のお守り代わりにでもしようかなって……」


 思ってたの……とか細い葵の声。


「葵先輩は、総務課の誰もが頭を抱えた……俺が耐久性で選んだ指輪を喜んでくれました」


「それ、は……」


 不安げに揺れる葵の瞳。


「ネクタイピンをもらった時にも言いましたが……忘れてしまいましたか……?」


「っ……」


 優しく微笑み、彰良は葵と額を重ねる。


「……葵先輩が、俺のためを想って作ってくれた指輪が…………俺は、欲しいです」


 葵の潤んだ瞳。


 まだ……揺れている。


「それでも売ると言うならば、止めません。

 俺に売ってくださらないと言うならば…………この指輪を購入した"誰か"から買い戻します」


「え、買いもどす……?」


 にっこりと微笑む。


「はい。

 例え、何十万、何百万でも、買い戻しま……」


「み゛っ?!

 だっ!ダメっ!!

 そんなもったいないことしちゃ駄目だよ!!

 もったいないお化けが来るよっっ!!!」


 もったいないと涙目になる葵へ、彰良は微笑む。


「この世界に唯一無二の指輪です。

 お金を積めば買えるならば、幾らでも支払いましょう。

 そして、それだけの価値が有ると俺は確信していますから」


「っ……………!」


 彰良の笑顔に、葵は何も言えなくなる。


「渡したくても…………彰良くんの指に入るか……わかんないもん」


「それは……」


「私……彰良くんみたいに、指の太さを測ってないもの……」


 俯く。

 

 彰良に渡せないと思った理由は……サイズの問題もあるのだ。


「プレゼントです、って渡して……指のサイズに合わなかったら……意味がないもの……」


「……その時は、ネックレスにすれば良いかと。」


 彰良の言葉に、葵は目を丸くする。


「……そっか……その手も、有るのか……」


「はい。

 指輪として嵌めることが出来なかった場合は、ペンダントトップにします。」


 だから……


「だから、旅行鞄に隠したマグカップも含めて俺にください」


「っ……気が付いていたのっ?!」


 驚く葵に彰良は苦笑する。


「葵先輩、申し訳ないのですが……割と最初から俺は背後にいましたよ?」


「う……うそ……」


「嘘ではありません。

 "私のマグカップは〜"の辺りには普通にいました。」


「……誰か……嘘だと言って……」


 よりにも拠って、プレゼントを渡す相手に全てが筒抜けだったというオチ。


 葵は、頭を抱えて項垂れるのだった。


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