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その恋、賭けですよね? ~天然で無防備な彼女を、執着系彼氏が全力で囲い込もうとしたら周囲も癖が強すぎました~  作者: ぶるどっく


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第八十二話



 ソファの上に、大きな塊。


 大きな体を膝を抱えて丸めた成人男性。


「…………うぅ……」


 首筋まで真っ赤に染め上げて、羞恥に悶える。


 言葉にならない鳴き声とも、うめきとも言えない声。


 膝を抱えて丸め、頭を、顔も葵から見えないように。


「…………ひきょう、です……!」


「わぁ……彰良くん、可愛いね」


「っ?!」


 にこにこと。


 羞恥に悶え、葵に見えないように真っ赤な顔を隠す彰良。


 そんな彰良の頭を嬉しそうに、幸せそうに撫でる葵。


「…………」


 恥ずかしくて堪らない様子なのに。


 チラチラと葵の存在を確認している彰良の視線。


「(……なんだろう……この気持ちは……?)」


 葵の心に不思議な感情が芽生える。


「(…………前も……そう、彰良くんが……紫苑お兄ちゃんのことを誤解したとき……。

 真っ赤になって……今みたいに丸くなったとき…………。

 恥ずかしがる彰良くんが……可愛くて堪らなくて……)」


 ちょっと突付いたら、動揺して泣きそうな彰良の表情。

 

 羞恥に染まった顔で、葵を上目遣いで見る彰良。


 恥ずかしくて堪らないのに……葵から離れたくないと、羞恥に耐えて震える姿。


 葵よりも、遥かに大きくてしっかりとした体格の彰良が。


 普段は理性的で、冷静沈着な彰良が……葵の前でだけ冷静さを欠いて、心が乱れる姿。


「……そう言えば……」


「……?」


 唐突に、何かを思い出したように喋りだした葵。


「前ね、紫苑お兄ちゃんが言ってたの。

 …………好きな子の可愛すぎる仕草を見ると、虐めたくなるって。」


「な゛っ?! 葵先輩っ?!」


 驚く。


「ぅ、あ……」


 勢い良く顔を上げた彰良の……すぐ目の前に、笑顔の葵。


 予想外の事態に固まる。


「真っ赤になって、彰良くんったら……とっても可愛い」


 固まった彰良を抱きしめて。


 葵は、赤く染まった彰良の顔を至近距離で堪能するように目を細める。


「会社でも思ったけど……。

 本当に、食べちゃいたいくらいに可愛い、って……彰良くんのことね」

 

 ゆっくりと、彰良の耳元に唇を寄せる。


「大好きよ……私の、彰良くん」


 囁かれた艶を含んだ声。


 鼓膜を震わせるリップ音。


「い゛っ?!」


 彰良の肩が飛び跳ねる。


 葵の唇が触れた耳を片手で覆い、泣きそうな動揺した表情。


「あおっ……ま゛っ…………も、許して……もらえません、か……」


 荒くなりそうな息を耐える。


 掠れて、普段よりも低くなった声が震える。


 ドクドクと脈打つ鼓動。


 頭に血が上り、視界が狭くなる。


 ……これ以上はっ……本気で、理性がっ……!


「うん、困らせてごめんね」


「え……」


 彰良に触れていた葵の体温が……スッと離れる。


「ちょっと……その、急に近寄り過ぎちゃったよね……?

 驚かせちゃって、ごめんね……」


 申し訳なさそうな表情と声音。


「あ、いえ……」


 すんなりと離れた体温に、彰良は逆に戸惑う。


「あ、の……」


 体の奥に渦巻く熱を、高めるだけ、高めて……


「ん?」


「っ……何でも、有りません……!」


 高めた熱の責任も取らずに離れた葵。


 何かを言いたいのに、何を言えば良いのか……わからない。


「彰良くん、朝ごはんを何か用意するね」


「だ、めです!

 ……葵先輩、熱は下がっているみたいですが、昨日はあんなに辛そうでしたから。

 今日は一日しっかりと休むべきかと……!」


 自分が作ります!とソファから立ち上がる。


「でも、彰良くんも顔が赤くて調子が悪そうに見えるよ……?」


「……俺、の顔が赤いのは体調不良ではありません……!

 だから、俺が朝食を準備します……」


 心配そうな葵の言葉に、彰良が視線を逸らしながら答える。


「本当に、大丈夫……?」


「大丈夫です……!」


「そっか……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね。」


 眉を下げた葵に、気付かれないように彰良はため息を付く。

 

「……ねえ、彰良くん……?」


「はい」


「あとで……また、彰良くんに引っ付いても良い?」


「っ?!」


 盛大に何も無い所でコケた。


「えっ?!

 彰良くん、大丈夫?!」


 慌てて彰良へと駆け寄る葵。


「だ、だいじょう、ぶ……です……」

 

「やっぱり……体調が悪いんじゃ……」


「(……言えない……!

 葵先輩の言動に……振り回されているなんて……!)」


 男の沽券にかけても、葵にバレたくないと…………頭を抱えるのだった。



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