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その恋、賭けですよね? ~天然で無防備な彼女を、執着系彼氏が全力で囲い込もうとしたら周囲も癖が強すぎました~  作者: ぶるどっく


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第七十九話



 彰良の腕のなかで、安心したように眠ってしまった葵。


 そんな葵を、心の底から幸せそうに抱き締めて離さない彰良。


「……普通、そこは"不安にさせてごめん"だと思うけど?」


 そんな二人の一連のやり取りを、生暖かい目で見守っていた凛が呟く。


「間違っていない。」


 葵の顔に掛かった髪を優しく整える。


「俺は、嫉妬して貰えて嬉しかったからな。

 それに、不安にさせたことに対する謝罪は、その状況に関する情報を提示した上で言わなければ意味がない。」


「……お前らしいよ」


 ため息をつく。


「でもさ…………葵ちゃんって、言い方は悪いけど……幼すぎないか?」


 彰良と凛よりも歳上の筈の女性。


「なんてゆーか……普通って言い方はダメかもだけど、嫉妬なんて分かるだろ」


 普通に生活して、恋して。


 今時、中学生だって付き合った別れたで、喧嘩する時代だ。


「…………葵先輩は、十六歳で時間が止まっていたようなものだ。」


「は?」


 安らかに眠る葵が苦しくないように体勢を整える。


「元々、末っ子長女だから兄三人に守られていた。

 更に、友人関係も希薄のようだから恋愛を含む情報量は少なかった環境。」


「………」


「そんな状況で、初めて恋人になった相手に……くだらない賭けの対象にされていた。」


 目を細める。


 ソイツが目の前に現れたら……絶対に殴る。


「……それだけでも、苦しかっただろう。

 だが……更に、そのことをクラスメート全員に笑い者にされた」


「……マジかよ」


 凛の胸にも怒りが込み上げる。


「それから、高校に通えなくなったそうだ。

 家族に恵まれていたから……自分は、まだ幸せ者だと言っていた。」


「…………」


「俺には……葵先輩の苦しさを全て分かるとは言えない。

 しかし、苦しみを乗り越えて……一人で生きて死ぬと覚悟を決めた……」


 誰にも、頼らない……頼れない。


 教養は身を助けるとばかりに知識を詰め込んで。


 老いて、死ぬまでの間も、死んだその先も迷惑をかけないように。


 命を削るように、必死でお金を貯めて。

 

「傷付いた心に必死で鎧を纏って。

 他人と関わらないように生きて来た葵先輩。」


「……恋愛どころの話じゃないじゃん……」

 

 頭を抱える。


「お前さ……恋愛初心者の癖に難易度がバカ高い、神の領域過ぎる相手を選ぶとか……」


「そんなことは問題ではない……と、言いたいが…………。

 俺も……此処まで、自分が恋愛でダメ出しを喰らうとは予測していなかった……」


 沈黙。


 顔を見合わせ、お互いにため息をつく。


「まぁ……うん、頑張れ」


「言われなくとも。」


 寄り添う二人を見て、凛も微笑む。


 どうか……この二人に幸あ……あ!


「彰良、二つ。」


「……?」


「一つ、オレが巳堂だっけ?

 アイツと葵ちゃんの間に割り込んだ時さ……舞だけじゃなくて、葵ちゃん本人が欲しいとか言ってた。」


「あ゛?」


「ガラ悪っ!

 しかも、クリスマスディナーに誘おうとしてたし。」


「……殺す」


「……逮捕されて、葵ちゃんと離ればなれになるぞ」


 殺意溢れる彰良に頬が引き攣る。


 凛の忠告に、真面目に逮捕されずに巽を排除する方法を考えていそうな彰良にため息をつく。


「……二つ、ちょっと相手の名前が分からないけど、たぶん葵ちゃんの知り合いかな……」


 脳裏に浮かぶ……あのインパクト抜群の生き物。


「病院でね、葵ちゃんの採血データ?

 なんか、栄養が足りないし、貧血もあるって。

 だから、ちゃんとご飯を食べさせないと、生理が来たらまた倒れるらしいよ」


「……栄養……貧血……」


「あと、これは……本気か分かんないけど……」


 視線で先を促される。


「"お前を解剖する時には、麻酔は一切使わん"」

 

「っ?!」


「鬼やんだっけ……?

 伝言の伝言だけど、"だから女難の相が出ていると忠告しましたのに"だって。」


「鬼っ……?!」


 血の気が引く。


 まさかの存在の出現に慄く。


「……彰良?」


「……鬼やんとは……恐らく、鬼さんのこと……。

 では……凛が会ったのが、龍さんか……?」


「龍さん?

 女だったし……女医さんかな?

 名乗ることなく、マシンガントークで生物の体はよく出来てるとか、なんとか……。

 ……オレ、そこの華やかな生き物みたいに言われたし……」


「……葵先輩の……交友関係がわからない……」


 項垂れる。


 しかも……麻酔なし宣言まで、されてしまった……。


 ……解剖とは……本気なのだろうか……?


「…………冗談だと、信じたい……」


「いや……流石に、冗談だろ?

 え……冗談だよな……?」


 沈黙が、二人を包む。


「あー……彰良、強く生きろよ」


「…………死んでたまるか。

 まだ、葵先輩と一緒にいたいからな」


 腕のなかで眠る葵を見詰める。


 大騒ぎだったクリスマスまでの数日。


 葵が目覚めたら…………少しでも、葵が微笑んでくれる。


 そんなクリスマスにしたいと、彰良は思うのだった。


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