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その恋、賭けですよね? ~天然で無防備な彼女を、執着系彼氏が全力で囲い込もうとしたら周囲も癖が強すぎました~  作者: ぶるどっく


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第四十八話



 文化ホール内にあるステージ。


 客席には、それぞれの教室で教鞭を執る日本舞踊の先生達。


 それぞれが教える生徒の中から、娘鹿子道明寺を踊るに相応しい生徒を連れて来ていた。


「あの……お母さん。

 物凄く…………居た堪れないというか……」


 日本舞踊の家元だけでなく、次期家元であるご子息まで来ているとなれば……どうなるか?


「なんか……すごく場違いなんだけど……」


 答えは、シンデレラの舞踏会並みに着飾った若い女たちの群れである。


「……選ばれる必要は無いから、ちょうどいいと思ったけど……」


「……逆に、悪目立ちしてる気が……」


 失敗しちゃった……と、撫子は頭を抱える。


「あらあら……相変わらず、立花さんは余裕がお有りになるようね」


 その時、人波の中から声を掛けてきた者がいた。


「……えっと……かわ……いや、骨川さん……」


 撫子が目を泳がせながら、答える。


「白河院よっ!

 貴女っ! まだ私の名前を覚えていませんのっ?!」


「……惜しかった……」


「惜しくありませんわっ!

 "かわ"しか合っていませんわよっ!

 何処から来ましたの"骨川"は?!」


 どちらかと言えば、ふくよかな体を揺らして撫子へ白河院と名乗った女が怒る。


「古風なお名前だとは覚えていたので……骨皮筋右衛門的な……」


「そこっ?!

 どうして、そんな覚え方ですの?!」


「どうして…………興味が、薄いから?」


 何処までも真面目に答える撫子に、白河院の体がバイブレーションする。


「……ふっ……ふふ……貴女はそうやって昔っから!

 どうして……貴女みたいな人が家元のお気に入りなんですの……!」


「個人的には、宗玄さん以外に欠片も興味がないので放っといて欲しいものです。

 ……ぶっちゃけ、昔から……あの手合いの男は面倒極まりないし、好みでも無いというのに。」


「こら、待ちなさい。

 出してはいけない本音を出すんじゃありませんよ。」


 葵に聞こえないように、ボソボソと呟いた撫子の本音。


 それがしっかりと聞こえた白河院は、ため息交じりに忠告する。


「貴女という人は……まったく!

 ……まあ、良いですわ。

 いくら鈍い貴女とは言え、気が付いているでしょう。」


 白河院が視線だけで周囲の若い女たちを指し示す。


「……今回の代役選びは、あくまでも建前。

 いつまで経っても結婚しない若様に、業を煮やしての花嫁選びの場ですもの。」


「……は?」


 苦虫を噛み潰したような白河院の言葉に、撫子がキョトンとする。


「あ、なた……まさか……」


 頬を引きつらせる。


 口元に手を当て、ふるふると震えた指先を撫子へと白河院は向ける。


「当然っ……気が付いていましたわ。

 …………すみません……嘘です、まったく分かっていませんでした。」


「お、お母さん……?!」


 一瞬だけ格好つけようとして、すぐに諦めた撫子。


「お母さん……!

 私、そんなの聞いてないよ……?!」


「ごっ、ごめんなさい……!

 私も骨衛門さんの言葉で気が付いたのっ?!」


 どうしようっと慌てる撫子と、泣きそうな葵。


 ……まさかの一対多数の集団お見合い。


 そんな場所に、彰良に送ってもらうことになるとは、葵は夢にも思っていなかった。


「誰が骨衛門よっ!

 骨川より酷くなってるじゃないの?!」


 混乱する撫子に突っ込む白河院。


「あ、あのっ!

 いつも母が、ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません!

 私は、娘の葵と申します!

 大変申し訳ないのですが、どうか私にお知恵を貸してくださいませんか?!」


 涙目の葵は、必死な形相で撫子の後ろから一歩前に出て白河院へ挨拶をする。


「…………立花さんの娘さんにしては礼節を持った方ね……。

 よろしくてよ。

 私も鬼ではありませんし、花嫁候補争いの好敵手が減るのは良いことです。

 この私に、教えてもらえることを、心より感謝なさいな。」


「ありがとうございます!」


 偉そうな物言いと自分でも分かっている白河院の返答。


「…………普通に良い子ね……。

 私の名前も、間違わないし……」


 そんな自分に対しても、しっかりと頭を下げる葵に白河院の好感度が爆発する。


「あの……私、お付き合いをしている方がいて……!

 母から、舞台の代役を選ぶだけと聞いていたから、この場に来たんです!」


 知らなかったとはいえ、お見合いのような場所に来てしまった葵。


「……可哀想だけど……一応、代役の候補名簿に名前が載っているから、立ち去るのは……。

 しかも、貴女のお母様は家元のお気に入りだから……言い難いけれど、名前は覚えられていると思うわ。」


「そんな……!」


 顔を歪める葵の背中を、撫子が申し訳なさそうに擦る。


「……良いわ……一つ、知恵を出しましょう。」


「知恵……?」


 葵の悲しげな顔に一筋の希望が差す。


「貴女の恋人さんは近くにいるかしら?

 近くにいるのならば、貴女のお母様のお弟子さんの一人とでも言って中に入れてしまいなさい。

 その上で、誰かに聞かれた際は、結婚秒読みの婚約者とでも言ってしまいなさい。」


「はい!」


 急いで葵はスマホを取り出し、あきらへとメッセージを打つ。


「立花さん、貴女も!

 こんな可愛い娘さんを泣かせるような天然爆弾に巻き込むんじゃありませんよ!」


「……ごめんなさい……えっと……後白河さん」


「何処の院政政治よ?!

 わ・た・く・し・はっ!

 白河院 響子ですわっ!!」


 真っ青な顔でスマホを触る葵の側で、白河院の叫びが響くのだった。


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