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その恋、賭けですよね? ~天然で無防備な彼女を、執着系彼氏が全力で囲い込もうとしたら周囲も癖が強すぎました~  作者: ぶるどっく


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第百二話



 お口をミッフィーちゃんにした緋月……姉夫婦と律と別れたあと。


 速やかに彰良の自宅へと戻った二人。


「葵先輩」


「彰良くん……あの、何で私はずっと膝の上で抱きしめられているのかな?」


「……………」


 葵の肩口に顔を埋める彰良。


 家に戻った途端に、何故か彰良に抱き寄せられて膝に乗せられた葵。


 背中に感じる彰良の体温に、葵は戸惑ってしまう。


「…………葵先輩」


「うん……」


「葵先輩は、俺のです……」


「え……急に、どうしたの?」

 

 葵の肩口にグリグリと甘えるように頭を擦り付ける。


「んん……あ、彰良くん……?」


 擽ったい中に、少しだけ背中に走る別の感覚。


「……最近、葵先輩を狙う奴が多過ぎます……!」


 低い唸り声と共に絞り出された彰良の言葉。


「え……」


 そうかな……?と葵は首を傾げる。


「(……狙う? 狙われる……?

 えっと……律くん、は多分違うよね……?

 彰良くんの甥っ子くんだし……七歳だもの。

 他に、私を狙うモノ好きなんて……アナコンダ……っ?!)」


 そこまで考えた葵に衝撃が走る。


「私……アナコンダ以外の何に、捕食されかけたっっ?!」


「違いますから。

 恋愛的な意味ですからね」


 ……何がどうなったら、そうなる?


 恐らく、アナコ……巳堂 巽のイメージから捕食に繋がったのだと予測しつつ。


「……今更、葵先輩の魅力に気が付いて寄って来る奴らが多過ぎるんです」


 グリグリと擦り付けていた頭を止めた彰良が、面白くなさそうに唇を尖らせる。


「それは……え、いつ?

 職場……では、そんなことは無いし……巳堂さんと律くんくらいしか……思い当たらないよ?」


 彰良の言う"奴ら"が思い当たらない葵は、不思議そうに首を傾げてしまう。


「律くんは兎も角、巳堂さんの方は本気とは思えないし……?

 踊るのが上手だったから気に入っているだけなら、もっと上手な人に出会ったら気持ちも変わるだろうから……?」


 自分で言ってて微妙な気持ちになる。


「やっぱり、私を異性として見るのは彰良くんだけだと思うの」


「………………」


 鈍い……相変わらず、鈍い。


「……んー……私からしたら、彰良くんの方が…………」


 脳裏に蘇るのは……小夜や凛の姿。


 葵には無い……大輪の花のような美しさの二人。


「……彰良くんのばか……」


「っ……?!」


 何故か拗ねてしまった葵に、彰良が慌ててしまう。


「え、あの……葵先輩……っ?!」


「おりる……」


「だっ……駄目です……!」


「やだ、おりる……!」


 頬を膨らませた子供のように。


 彰良の膝の上から降りようとする葵。


 そんな葵を離したくないと、彰良は抱きしめる腕に力を込める。


「葵先輩……!

 何が嫌だったのか、教えてもらえませんか……?!」


 怪我をさせたりしないように配慮している葵。


 その可愛らしい抵抗を抑えながら、彰良が問い掛ける。


「…………私には彰良くんだけなのに……!」


「え……」


「狙われているのは私じゃないもの!

 ぜーんぶ彰良くんの方だわ!」


「っ……それ、は……」


 彰良が嫉妬したように。


 葵も、嫉妬した……?


「だから……私は、余所見なんてしないわ。

 余所見できるほど……余裕なんて、ないもの……」


 世の中には葵以上に魅力的な女性は沢山いる。


「……彰良くんだけが、大好きだから…………」

 

 恥じらうように頬を染め、視線を逸らして。


「…………いつだって、彰良くんしか……見えないわ……」


 葵の大好きなたった一人。


「…………だから……彰良くんの、ばか……」


 彰良のことを考えただけで速くなる鼓動。


 頬に集まる熱。


 潤んでしまう瞳。


「っっ……葵、先輩っっ!!」


「み゛っ?!」


 彰良の腕の力がぎゅうっっ!と強まる。


「大好きです!

 愛していますっ!」


 堪らないっ!


 可愛くて、愛おしくて堪らないっっ!!


「葵先輩っ!

 俺も葵先輩だけですっっ!!」


「み゛ゃっ?!

 あっ彰良くんっ?!」


 軽々と葵の体を持ち上げ、反転させて向かい合うように抱き締め直した彰良。


「や゛っ……!

 へ、変なところを触っちゃ……!」


「変なところ?

 それは……ここ、ですか?」


「ひゃっ……?!

 彰良くん……!」


「……すみません……ね?」


 頬を染め、潤んだ瞳で睨む葵……いや、睨んでいるのか?

 

 途轍も無く、可愛らしいだけなんだが?


「太ももを撫でちゃダメっ!

 擽ったいし、恥ずかしいのっ……!」


「……分かりました。

 今は、やめておきますね?」


 もう!と頬を膨らませる葵は気が付いていない。


 彰良が"今は"と強調したことを。


「(……駄目だな。

 葵先輩が可愛過ぎて、俺の理性が無くなっている。)」


 恋人になる前は鉄壁の様な理性だった彰良の変化。


 あまりの己の変わりように、彰良は低く笑う。


「(……葵先輩が、恋人同士のスキンシップ自体を嫌がっていないから…………何の問題も無いな。)」


 愛しくてたまらない、と頬を膨らませる葵の頬に口付けながら。


「葵先輩は、本当に素直で可愛らしくて…………困ってしまうほどに愛しい人ですね」


「み゛っ?!」


 耳元で低い掠れた声で囁く。


 顔を真っ赤にして動揺する葵を抱き締めながら、彰良は喉の奥で満足げに笑うのだった。


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