表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Saki & Koshi 〜番外編〜  作者: ゆいき
11/13

コーシとサキの親子遠足 7

ターミナルは見たこともない人の数で溢れていた。


「コー、こっちだ」


サキの声で我に返ると、コーシは出来るだけ平静を装って歩き出す。

腕を組み堂々と立つサキの姿は、こんな場所でも一際光る。

しかも沢山の視線を集めながらも、慣れたサキは歯牙にも掛けていない。


「すげー…神経だよな」

「ん?なんだよ、コー」

「別に…」


サキはシャトルの時と似たようなカードを手渡し審査門のくぐり方を説明した。


見上げるほど高い天井、無機質な中にも小粋なデザインが盛り込まれた壁。

使い方が検討もつかない溢れる機器類。

あちこちで使われている見たこともない素材。

ここにきてコーシはやや不安になったが、そんなことサキには絶対悟られたくない。


長い列に並び審査の順番を待つ間、なんとか要領を自分で掴もうと、何気ない顔を装いながら周りの動きをつぶさに観察した。


サキは黙り込んだコーシにそっと苦笑した。

はたから見たらふてぶてしく立っているだけのように見えるが、サキにはコーシがやや緊張していることがよく分かった。


「…変わらないな」


思わずひとり言をもらす。

コーシは昔から新しいことに取り組む時はまずとことん観察する。

なんでも適当にこなすように見えて、実はものすごくあれこれ熟考しているのだ。

順番が回ってくると、サキはさり気なく先に足を運びコーシのお手本になるように審査門に入って行った。


無事に審査が済んだコーシは一息つくと懐を漁った。


「あ…。煙草取り上げられてたんだっけ」


ここは火気厳禁だ。

審査ではコーシの煙草とマッチは一時お預かり品となってしまった。

がっくりと肩を落とすと窮屈さにため息をつく。


「おい、コー」


少し前を歩いていたサキが振り返り、大きな窓ガラスの向こうを顎でしゃくった。

つられて視線を向けたコーシは、それを見た瞬間固まった。


立ち止まった足は再びゆっくり動き出すとその速度を上げる。

とくんとくんと脈打つ心臓だけが耳元で鳴り響いた。

ガラス窓に軽く手を付いたコーシは、眼前に広がるその大きくて優美な機体に食い入るように見入った。


「…宇宙船…」


それは想像より遥かに大きな船だった。

膨らんだ飛行機のようなこの機体が、どうやって宇宙を飛ぶのかなんて想像も出来ない。

銀色のボディに赤いラインが散りばめられた船は、コーシには威風堂々と佇んでいるように見えた。


これが、今から星の向こうへ自分を運ぶ。

なんだか不思議な気分だ。

コーシが瞬きも忘れて見入っていると、サキが後ろから声をかけた。


「こいつはホープスター。半月かけて二つの星を回って帰るお手軽な旅客機だ。本格的に遠くへ行こうと思ったらこの倍以上の宇宙船になる」

「ホープスター…」


希望の、星。

今のコーシにとったら、なんだか自分にぴったりの船に思えた。


ガラス窓から動かなくなったコーシを、サキは一歩後ろから眺めていた。

我を忘れて目を輝かせているコーシの横顔を見るのは、本当に久しぶりだ。

心ゆくまで付き合ってやりたかったが、残念なから搭乗のアナウンスがそれを遮った。


「コー、行くぞ」


短く言うと、動こうとしないコーシを促す。

コーシは後ろ髪を引かれながらもその場をゆっくりと離れた。


「…サキ」

「ん?」


興奮した瞳のまま、コーシは珍しく少しだけ笑顔を見せた。


「すっげー、楽しみ」


こんなに心が踊ったのは、昔パワーレンチを手に入れた時以来だ。

サキは楽しそうに笑うと、コーシの背中を軽くはたいた。


「そうだな。期待は裏切らないと思うぜ?」


にやりと笑うと悠々と連結橋に向けて歩き出す。

コーシはさっきまでの憂鬱などすっかり吹き飛んで、軽い足取りでその後に続いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ