EX-2
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エキシビジョン。
大会の後に行われるお祭りのようなもので、基本的にその大会の上位入賞者を中心に行われる。
午前中に共同パートの合わせをして、夜本番に臨む。
今は私たちは自分たちの練習を終えてたので、二人で控え室で休むことにした。
一夜明けてみても、まだ興奮は収まらなかった。それどころか、それに付随する現実をしっかり認識しだして、こんどは明確な歓喜も沸いてくる。
世界が輝いて見えた。
ユリカはいつものように笑っていた。
私たちはいつもそうだった。
どっちが勝っても、次の日には笑い合って、そして次は勝つと決意を新たにしてきた。
でも、これからは?
わからない。
五輪を三年後に控えた今、それがこの後どうなっていくのか、それはわからなかった。
「これで今シーズンも終わりだね」
「うん」
部屋には誰もいない。近くに人がいる気配もなかった。だから私は吐露することにした。この一年の思いを。
これが、私たちが次の“ステップ”に進むために必要なことだと思った。
「今年は実は私ちょっと大変だったんだ」
そう言うと、ユリカは一瞬驚いて、そしてすぐにいつもの優しい顔に戻った。
「うん、知ってたよ」
「そうなの?」
「当然だよ。親友だもん」
その言葉に、私はほっとした。
私は彼女のことを親友だと思ってる。ううん、それ以上にも。
でも、彼女の方も本当にそうなのか。自分の愛のベクトルと、相手のそれが、同じだとは限らない。大きさが違うかもしれないし、そもそも方向が違うかもしれない。
「でも裕樹が相談してくるまでは、黙ってようと思ってた────なにがあったの?」
ユリカは私に微笑みかけた。
「あのね」
私はこの一年のことを彼女に話した。
いままで言えなかったこと。世界選手権が終わった、すべてが終わった今だから言えること。
そして────
「私ね、今までは頑張ってきたは、スケートが好きだからじゃなかった」
告白。
親友だからこそ。包み隠さず、今の気持ちを伝えると決めた。
「ユリカに憧れたから。ユリカと一緒にいたかったから。ユリカと一緒にいられるから。それが私がスケートを頑張ってこれたのは、それが理由。それだけが理由だった」
初めてあったあの日から。私はずっとユリカのことをだけをみてた。本当はスケートと真剣に向き合ったことなんてなかった。
「今もそう。ユリカと一緒にいたい。ユリカの近くにいたい。それは変わらない」
やっぱり、ユリカなしの人生なんて考えられなかった
「けど──」
「けど?」
「今はユリカと向き合うんじゃなくて、同じ先を見ていたい」
それが私の決意だった。
去年まで一緒にいられればそれでよかった。
でも今は違う。ユリカと本気で競って、そして気がついた。
私はスケートが好きだ。
ユリカと同じくらい好きだ。
「だから私は五輪で金メダルをとる────ユリカを倒す」
ユリカは私の告白を、私の決意を黙って聞いていた。




