06-5
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自分でも驚く。
練習でもここまで上手くいくことはない。
何一つ滞りなく演技を終えた。
息も上がっていない。
そして、それだけの演技をしたという証拠────観客たちの惜しみない拍手が、ただ私だけのためにに送られる。
文句なしのスタンディングオベーション。
無数の花束がリンクに投げ入れられる。これは事前に用意されているものなので、今日の演技の出来とは関係ないが、しかしそれは同時に私にかけられていた期待がそれほど大きかったことの裏返しでもある。
ヒューヒューとあちらこちらから聞こえる口笛。さすがは北米。控えめな日本や、ヨーロッパの会場とは桁違いの盛り上げりだ。
「良かったぞ! 裕樹! 良くやった!」
「うん、ありがとうコーチ」
コーチとしっかりと抱き合う。
「ここまで上手くいくと明日が不安だな」
ショートが上手く行き過ぎると、フリーで大失敗するというはよくある話だからだ。もっと、私にはそれはあまり当てはまらない。だからこそコーチも気軽に今みたいに言うことが出来るんだが。
キスアンドクライにゆっくりと座り込で、カメラの向こうのファンに手を振った。
会場からは、当然のように高得点を求める煽り。
しかし、中々点数がでない。
やはり、ユリカが良い演技をしたから、どちらが上か、判断に迷っているのだろう。
…………。
……。
ようやく点数が出る。
「テクニカルエレメンツ」
得点に会場は大いに沸き立つ。
ユリカとほぼ同じ点数。
私がやや上だが、ほとんど差はない。ジャンプの構成という意味ではまったく互角なのだから当然だろう。
大事なのはセカンドマーク。
各項目十点満点で行われる全体の評価。
「プログラムコンポーネンツスコア」
またも大きな拍手で迎えられる。だが――――
「現在の順位は第二位です」
その差、僅か0,3で私がユリカの下になった。




