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ゆりいろ☆ステップ  作者: アメカワ・リーチ
ゆりいろ☆ステップ①
38/56

06-1



 世界選手権、女子シングル、ショートプログラム当日────

 第二グループが終わったところで、現在の暫定一位は、昨年の世界選手権銅メダリスト、エカチェリーナ・アニシナ。

 彼女は過去世界選手権金メダルの実績もある実力者で、オリンピックの後である今シーズン出場してきた数少ないベテラン選手だが、しかし絶好調とはいかずパーソナルベストからは10点ほどほど低い点数となった。

 三回転三回転を予定した最初のコンビネーションのセカンドが二回転だったのが痛かった。失敗したのか、あえて安全策をとったのか、それは本人にしかわからない。

 さらには、点数が1,1倍になる演技後半でトリプルループがダブルループになるミス。

 技術点で大きく点数を下げた上に、消極的になったがゆえに全体の勢いも落ちてしまった。となってくると、構成点も伸び悩んでしまう。

 ユリカを除けば、アニシナは今大会最大のライバルだった。

 しかし彼女が本来の力を出せなかった今、私が完璧な演技をすれば、その上を行くことはたやすい。

 この後、第三グループの一番滑走にユリカ。

 そして最終グループの一番滑走が私。

 ちょうど第三グループの六分間練習の終わりを告げるアナウンスが流れたところだ。選手たちはリンクから撤退し、一番滑走のユリカだけが残る。

 六分間練習を見るに、今日も絶好調というところか。

 六分間練習の意味は、単なる直前の調整の場、というだけにとどまらない。

 公式練習にしてもそうだが、ここで良い動きをして、難しいジャンプを決めることによって、ジャッジに良い印象を与える。

 とにかくジャッジの主観的が採点に大きな影響を与えるフィギュアスケートという競技において“印象”というのは思いのほか大事なことなのだ。

 公式練習や六分間練習でのアピールはかなり大事になってくる。

 そして、本番の演技においても、難しいジャンプを決めるだけではなく、技と技のつなぎのスケーティングはもちろん、衣装、笑顔まで気を配らなくちゃいけない。

 小さいことの積み重ねがジャッジを、そして観客を楽しませることに繋がる。

 さて六分間練習の話に戻るが、ここで難しいジャンプを決めれば、観客の心もつかむことが出来る。

 難しいジャンプに挑むんだということが伝われば、観客もそれを応援しようと心構えできるというのもメリットだろう。

 人間、突然の爆発よりも、時計の数字が減って行くのを見るほうがドキドキするのだ。そしてそのドキドキが歓喜に変わるとき、大きなカタルシスを得る。それが高得点へと繋がる。

 その点、彼女がトリプル+トリプルを含むいくつかのジャンプにも全て成功し、ジャッジや観客に良い印象を与えたことは間違いない。

 少なくとも、第三グループのなかで、トリプル+トリプルを予定しているのはユリカだけだ。

 演技が始まる前に、彼女はすでに一歩先を行っている。


 今日から一日一更新再開します。


 世界選手権という大舞台。ユリカの隣にいるための戦いです。

 今後ともお付き合いいただければと思います。

 

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