04-7
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やはり最初のコンビネーションはアンダーローテーションをとられていた。
さらにダブルアクセルの失敗も響き、技術点は低めになってしまい、それにつられて構成点も伸び悩んだ。
これがショートの恐ろしいところだ。
僅かなのミスが、技術点のみならず、演技全体のまとまりを失わせてしまい、それが演技構成点に大きく響く。
結果、転倒のような大きなミスは無かったにもかかわらず、パーソナルベストから7点ほど低い点数になった。
直前の精神状態を考えると、まだマシなほうだったのかもしれない。
集中しようと思えば思うほど、焦ってしまっていたことを考えれば、一度も転ばなかったのはむしろ運が良い。
全日本ジュニア女王の内田麻里がトリプルトウ+トリプルトウを含めた完璧な演技をしたこともあって、私は彼女にさえ遅れをとってしまい、ショートの順位は三位。
そして、もちろん一位は三木楓だ。
彼女はコンビネーションがトリプル+ダブルになった(トリプルを狙って結果的にダブルになったのか、安全策をとったのかはわからない)ものの、まとまった演技だった。
スケーティングの質もよく、全体的によく動いていた。全体的にまとまっていて、その点が演技構成点で評価された。
つまり、大技に挑みながらもミス二つを引きずってしまった私とは逆に、手堅く全体を纏め上げた彼女に軍配が上がった。
結果、三木楓との差は5点。
トリプルジャンプ一個分差が付くというかなり厳しい展開になってしまった。
「なに、5点なんて、失敗一つでひっくりかえる。大丈夫だ」
デヴィスコーチは言う。
これは決して希望的に言っているのではない。
実際、フリースケーティングは時間が二分長くなりジャンプの数が多い分、ミスの可能性も高い。
フリースケーティング四分間という長い演技の間の七つのジャンプ全てを成功させるのは至難の技だ。
普通は一つくらいミスする。
けど、それは私だって同じこと。むしろコンディションを考えたら、こっちがミスする可能性のほうが高い。
はぁ、とおもいっきりため息をついてしまう。
ヤバイ状況だ。
世界選手権で優勝どころか、出場すら危ぶまれているのだ。
このままの精神状態では勝ち目は無い…………
「あっ」
衝撃。
どうやら考え事をしながら歩いていたら、誰かにぶつかってしまったらしい。
「ごめんなさ……」
と、顔を上げると、そこにいたのは、
「白石さん……」
三木楓だった。
「ごめん、ぼうっとしてて」
私はぺこりと頭を下げて、そうそうに立ち去ろうとする。が、彼女の手が私の肩をつかんだ。
「ちょっと待って」
語気がやたら強い。まさか、怒らせてしまったのだろうか。もしかしたら、ショートで負けた腹いせにわざとぶつかった、と解釈されたのか?
「話があるの」
彼女の顔を見ると、やたら険しい。
どう見ても怒っているようにしか見えない。
待て待て。ちょっとぶつかっただけじゃないか。そんなことで怒るか? 普通。
「いい?」
なんとなくノーとは言わせせない雰囲気があって、私は気がついたらうなずいてしまっていた。




