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04-3
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帰国してから一週間、私はユリカと表面上いつものように接した。
元々、シーズン真っ只中のこの時期、私たちは必然会う時間が減る。例年この時期は寂しい思いをするが、今年はそれが逆にありがたかった。
だが、いくら会う時間が減るといっても、一日数回は顔を合わせるわけで。相変わらず、ユリカと会うたびに心を揺さぶられた。そのたびにスケートの調子が狂うほどだ。
「あっ……」
私はトウループに失敗してて転倒した。
「はぁ……」
冷たい氷に手を付いて立ち上がりながら、私は思いっきりため息をつく。
キスしていた。ユリカが恋人でもない、好きでもない男とキスをするとは思えない。だから、多分好きな男が出来たんだろう。
考えてみたら、あれだけの容姿と性格で、今までボーイフレンドがいなかったことが奇跡だ。
いつ男の一人や二人できたっておかしくない。心の奥底ではそう思ってたけど、いつかは現実になるという覚悟も無かったし、現実になったときにここまでツライとは想像もしてなかった。
…………。
コンディションは相変わらずだ。
最悪とまではいかないが、ベストには程遠い。




