美しき魔法剣士との出会い
「た、たった一人で……結界を上書きして、攻撃機能まで付与するなんて……!」
静まり返った村の前で、シルフィは細剣を鞘に収めることも忘れ、震える声で呟いた。
村を覆う黄金の結界は、まるで生き物のように滑らかに波動を刻み、近づこうとする魔物たちを寄せ付けない。
「レン様……あなたは一体何者なのですか? 国立魔導院の首席特級魔導士でも、このような芸当は不可能です……!」
「僕はただの……まあ、エンジニアだよ。仕組み(コード)さえ分かれば、修復も改善も難しくないからね」
蓮は控えめに苦笑いしながら答えた。
「レン様! 村を救っていただき、本当にありがとうございました!」
村長の老人が村人たちを従えて駆け寄ってきた。涙を浮かべながら何度も深々と頭を下げてくる。
「行き場のない旅の途中でしたら、ぜひ当村で羽を休めていってください! 精一杯のおもてなしをさせていただきます!」
こうして蓮は、村のゲストハウスに案内され、温かい食事と温床を提供されることになった。
その夜。
村の小さな広場で、シルフィが月明かりを浴びながら剣の素振りをしていた。
しなやかな身ごなし、研ぎ澄まされた集中力。だが、その刀身に纏う風の魔力はどこか不安定で、刃が空を斬るたびに魔力が霧散している。
「魔力のロスが大きいね。剣に乗せるコードが途切れてる」
声をかけると、シルフィは驚いて振り返り、少し気まずそうに目を伏せた。
「レン様……見苦しいところをお見せしました。私は……剣術も魔導も中途半端で、この村の警備剣士としても力不足なのです。風の刃を剣に纏わせたいのですが、どうしても魔力が維持できず……」
「どれ、ちょっと見せて」
蓮は視界にシルフィの魔力波形をスキャン表示させた。
『対象:シルフィ。使用魔術:付与魔術『ウィンドブレード』。問題点:出力(Output)のフィードバック制御が未実装。魔力が過剰に放出され枯渇している』
「なるほどね。魔力を『流し続ける』んじゃなくて、剣の表面に『ループ処理』で定着させればいいんだ」
「ろ、ループ……?」
「簡単に言うと、魔法の持続処理だよ。ちょっと剣を貸して」
蓮はシルフィのレイピアを受け取ると、指先で刀身をなぞり、脳内のARUIから「最適化されたエンチャント・コード」を流し込んだ。
Plaintext
[Loop: Wind_Enchant]
Target = Sword_Edge
Process = Compress & Recycle Mana
Efficiency = 99.8%
「はい、これで試してみて」
返された剣を半信半疑で握りしめ、シルフィが魔力を込めると――。
――ヒュオオオオッ!!
眩いエメラルドグリーンの風が、レイピアの刀身をぴったりと包み込んだ。
以前のように魔力が霧散することなく、静かに、しかし凄まじい密度の高圧真空刃が刃を覆っている。
「な……なにこれ……!? 魔力が全然減らない……! それに、この斬れ味は……!」
シルフィが近くの訓練用丸太へ軽く一閃すると、丸太は豆腐のように滑らかに両断された。
「すごい……! レン様、あなた様は……私に新しい世界を見せてくれました!」
シルフィの蒼い瞳が、感動と尊敬の念で潤む。
月光に照らされる美しき魔法剣士は、蓮に向かって深く膝をつき、誓いを立てるように真摯な瞳で見つめてきたのだった。




