平和の訪れと新たな契約
世界規模の『グローバル・デバッグ』から数日。
王都グランゼリアには穏やかな陽光が差し込み、街は壊滅の危機を乗り越えた歓喜と活気に満ち溢れていた。
王立魔導院の大ホール。
かつて蓮を「異端」と見下していた評議長バロア大公爵をはじめ、貴族魔導士全員が蓮の前に膝を折り、深く頭を下げていた。
「救世主レン殿……! 我々の無知と傲慢さを、どうか許していただきたい。貴殿がもたらした『サイバー魔導』こそ、この世界の未来を照らす真の知恵であった……!」
「頭を上げてください、バロア評議長。僕はただ、エンジニアとして不具合を直しただけですから」
蓮は爽やかに微笑むと、改心した天才魔導士レオンハルトと向き合った。
「レオンハルト。君に頼みがあるんだ」
「私に……ですか、レン師父!? 何なりとお申し付けください!」
「王立魔導院の教育カリキュラムを刷新してほしい。古い冗長な詠唱理論から、安全で効率的な『コード型魔導学』へシフトするんだ。君がその初代名誉教授になってくれ」
「私が……! 承知いたしました! レン師父の教えを、この国のすべての魔導士に広めて見せます!」
こうして王国には新たな『サイバー魔導省』が設立され、レオンハルトの主導のもと、科学と魔法が調和した持続可能な新時代への第一歩が踏み出された。
――そして、その日の夕刻。
王都を見渡す小高い丘の上で、蓮は澄み渡る風を受けながら佇んでいた。
「レン様」
足音を忍ばせてやってきたのは、可憐な旅装に身を包んだシルフィだった。
「コボルト村もアストラル領も、そしてこの王都も……すべてがレン様のおかげで幸せに包まれています。……ですが、これからレン様はどうされるのですか?」
「そうだね。世界の基幹システム(World OS)は安定したけれど、まだまだ最適化したい場所がたくさんある。未知の大陸や、世界中に眠る古代遺跡のコードも調べてみたいんだ」
蓮はシルフィに向き直り、優しく手を差し伸べた。
「だから……これからも僕の隣で、僕の専属セキュリティ(ガード)としてついてきてくれるかい、シルフィ?」
「――はいっ! 喜んで! どこまでもお供いたします、レン様!」
夕日に照らされる中、二人は笑顔でしっかりと手を握り合い、生涯のパートナーとしての新たな契約を結んだのだった。




