科学と魔法が織りなす未来
世界のシステムエラー(バグ)が全消去され、古代魔王の脅威が去ってから数年――。
かつて衰退した辺境に過ぎなかったアストラル領、そして王都グランゼリアは、科学と魔法が高度に融合した「サイバー魔導都市」へと驚異的な発展を遂げていた。
街の至る所には『魔導Wi-Fi』のインフラが完備され、人々は手のひらサイズの『魔導スマートフォン』で遠く離れた家族と笑顔で会話を交わしている。
農地では最適化された自動散水プログラムが瑞々しい作物を育て、空には魔導ホバーターレットが治安を守っていた。
王立魔導院改め『サイバー魔導学院』の大講堂。
教壇に立つレオンハルトは、真剣な眼差しでノートをとる若き魔導士たちに熱弁を振るっていた。
「よいか! 魔法とは神秘に頼るものではなく、世界を構成する論理である! 無駄な長詠唱を排し、安全で美しいプログラムを記述することこそ、真のサイバー魔導士の姿なのだ!」
かつての選民思想に凝り固まった貴族の面影はどこにもなく、誰もが平等に、そして安全に技術を学べる新時代が到来していた。
――そして、青空が広がる見渡す限りの大草原。
心地よい風が吹き抜ける中、蓮とシルフィは一台の魔導エアバイクに腰掛け、彼方の水平線を見つめていた。
「レン様、新しい魔導スマホのアップデート版、国中で大評判だそうですよ」
「ふふ、喜んでもらえて良かったよ。でも、まだまだ改善の余地はあるけどね」
蓮はポケットから端末を取り出し、空中に浮かび上がる世界のリアルタイム・ネットワークモニターを愛おしそうに眺めた。
画面に映し出されるデータストリームは、どこまでも澄み渡り、エラーログ件数は「Zero」を示し続けている。
「ねえ、シルフィ」
「はい、レン様?」
「僕がこの世界に転生してきた時、魔法がバグだらけの未最適化プログラムだって気づいたんだ。……でも今なら分かる。科学も魔法も、人を幸せにするために磨かれていく『美しいコード』なんだって」
「……はい! レン様と出会えて、私は心から幸せです!」
シルフィが胸いっぱいの笑みを咲かせ、蓮の肩に静かに頭を預ける。
蓮は彼女の肩を優しく抱き寄せ、爽快な青空に向かってエンジニアとしての静かな満足感を噛み締めた。
(僕たちのコード改革はひと段落だ。……さあ、次はどんな未知のシステム(世界)を探検しに行こうか!)
近未来のエンジニアと異世界の少女が紡ぐ、科学と魔法の創世記――これにて、完全デバッグ完了(Complete)!




