サイバーブレイン全開! 世界のデバッグ
古代魔王は消滅し、王都に歓喜の声が響き渡る。
しかし、天空を見上げた蓮の表情は晴れていなかった。
「レン様……? 魔王は倒されたのですよね……?」
駆け寄ってきたシルフィが不安そうに問いかける。
蓮の視界(ARUI)では、世界中のマナ循環システムを示す全域マップが、依然として不気味な黄色の警告(Warning)で埋め尽くされていた。
「魔王という『最大の感染源』は消去した。……でも、この世界が何千年もかけて溜め込んできた根本的なシステムエラー(バグ)は、まだ世界中に残っているんだ」
『警告:世界環境の総エラー件数:4,294,967,295件。このまま放置した場合、3年以内に世界規模の生態系崩壊が発生します』
「このまま放置したら、いずれまた別の『魔王』が生まれる。……やるなら、今ここで根絶するしかない」
蓮は広場の中心に立ち、両手を空へと掲げた。
「レオンハルト、王都中の魔導師たちを集めてくれ! シルフィ、僕の身体に触れて魔力をリンクさせてほしい!」
「任せろ! 全魔導師、レン師父のシステムに魔力を供給せよ!」
「はい、レン様! 私のすべてをお使いください!」
シルフィが蓮の背中に寄り添い、レオンハルトと王都の魔導士たちが一斉に魔力を蓮へと流し込む。
無限の魔力供給を得た蓮は、脳内の量子サイバーブレインのクロック周波数を、理論上の限界値――100%オーバークロックへと引き上げた。
「サイバーブレイン全領域開放――全権限取得(Root Access)!……世界システム(World OS)のグローバル・リファクタリングを開始!」
――ズバアアアンッ!!!!!
蓮の身体から放たれた虹色のデータ光線が、天を突き抜け、星の軌道へと達した。
王都からアストラル領、コボルト村、さらには人未踏の極地や深海に至るまで、世界全土を包み込む巨大な「デバッグ・グリッド」が展開される。
Plaintext
[Global_Debug_Task: World_OS_Refactoring]
Scope = Global_Environment_System
Process = Erase_Legacy_Errors & Optimize_Mana_Flow
Progress = 20%... 55%... 85%... 99.9%...
Status = COMPLETED! Zero Errors.
「無駄な不具合コードを全て消去、マナの流動を最適化……完了(Done)!」
一瞬の静寂の後、世界全体が祝福するように温かな緑色の光に包まれた。
枯れ果てていた大地には瑞々しい芽が吹き出し、濁っていた川や大気は透き通った浄化の光を放つ。
「世界中の病んだ魔力が……綺麗に澄み渡っていく……!」
「なんて暖かい光なんだ……! 世界が、生まれ変わった……!?」
何千年もの間、この世界を苦しめてきた根本的な「バグ」が、一人の近未来エンジニアの手によって完全に解消(デバッグ完了)された瞬間だった。




