魔王降臨:世界のバグとの戦い
王都グランゼリアの上空。天を焦がす不気味な黒紫色の亀裂が割れ、そこから地獄の咆哮とともに巨大な異形が舞い降りた。
『――グオオオオオオオッ!!』
全身をノイズと壊れたソースコードの文字で覆われた巨躯。何千何万の怨念とバグデータが集積して生まれた存在――「古代魔王」の降臨であった。
「ハハハ! 見よ、この姿を! この世界が何百年も溜め込んできたエラーデータそのものが、我が王の力となったのだ!」
空中に浮遊する魔王軍幹部が歓喜の叫びをあげる。
魔王が腕を一振するだけで、空間がバチバチと歪み、接触した建造物がデータごと虫食いのように消滅していく。
「データ侵食か。攻撃自体が破壊属性じゃなく、世界のコードを削り取るバグそのものだな」
蓮は脳内の量子サイバーブレインを全開にし、視界に魔王の全身スキャンデータを描画した。
Plaintext
[Boss_Target: Ancient_Demon_King]
Type = System_Corruption_Bug
HP = Infinite (Data_Regeneration)
Defense = Absolute_Error_Shield
「再生能力が無限……普通に物理や魔法で殴っても、エラー修復処理で一瞬で元通りか」
「ならば、私の魔法でその再生を上回るまでです!」
レオンハルトが前へ飛び出し、蓮にチューンナップされた魔導杖を突き掲げた。
「『並列コンパイル』実行――極大氷結魔法『絶対零度』、および極大爆炎魔法『プロメテウス』――同時・連続無詠唱発動!」
ドババババババッ!!
本来なら一行の詠唱に数十秒を要する極大魔法が、まるでマシンガンのようにノータイムで放たれる。
氷と炎の嵐が魔王の巨躯を飲み込み、肉体を激しく削り取っていく。
「ぐあっ……!? なに……この極大魔法の連射速度は……!?」
魔王軍幹部が戦慄する。だが、魔王の傷口はすぐさま黒いノイズとともに修復されていく。
「無駄だ! 我が王は世界のバグそのもの! データを消去しない限り死ぬことは――」
「データを消去すればいいのですね!?」
疾風のごとく空を駆けたのはシルフィだった。
蓮の『特効パッチ』が施された細剣を握り締め、魔王の心核へ向かって一直線に突撃する。
「『リアルタイム・デフラグ』――切り裂け、風の刃!」
閃光のような一閃が魔王の胸元を穿つ。
斬られた部位の黒いノイズは、再生することなく綺麗な光の粒子となって消失していった。
「な……なに……!? 再生コードが打ち消されているだと……!?」
「よし、シルフィ、レオンハルト! そのまま心核のバグデータを露出させてくれ!」
仲間たちが切り開いた道。蓮は脳内の処理能力を極限の限界突破へと解放し、最終コードのコンパイルを開始したのだった。




