最終決戦前夜:仲間たちへの「エンチャント」
国全体の魔法インフラが『Mana-OS 2.0』へアップデートされたことで、王都を襲った魔物の群れは瞬く間に撃滅された。
だが、空中を切り裂く黒い亀裂の奥――異空間の狭間には、この世界のバグの根源たる「古代魔王」がその姿を完成させつつあった。
大決戦を明日に控えた夜。
崩れかけた魔導院の工房で、蓮はシルフィとレオンハルトの武器を前に作業を進めていた。
「レン様、夜遅くまで申し訳ありません……」
「いや、明日の決戦に向けた最終調整だよ。魔王軍のバグコードは通常の攻撃じゃ完全に消去できないからね」
蓮はシルフィの愛用する細剣と、レオンハルトの魔導杖に手をかざし、サイバーブレインから特別に開発した「特効パッチ・コード」を注入した。
Plaintext
[Enchant_Patch: Absolute_Defragment]
Target = Silphy_Sword & Leonhardt_Staff
Attribute = Error_Correction_Data
Effect = 100% Anti-Malware / Ignore Defense
「シルフィの剣には、斬りつけた対象のバグデータを直接破壊する『リアルタイム・デフラグ』を付与した。どんな再生能力を持つ魔物でも、切り口からデータごと消去できる」
「斬った端からデータを消去……! ありがとうございます、レン様! この剣で、必ずやお護りしてみせます!」
「そしてレオンハルト。君の杖には『高速並列コンパイル』の補正コードを入れた。君の広い魔力容量なら、複数の極大魔法をノータイムで連続実行(連射)できるはずだ」
レオンハルトは震える手で自身の杖を受け取り、感極まったように頭を下げた。
「無詠唱での魔法連射……! 以前の私なら一生かかっても到達できなかった高みだ。蓮……いや、レン師父! この恩義、明日の戦いにて必ずや証明してみせる!」
「よし、二人とも頼りにしているよ」
蓮は工房の窓から、不気味に赤く渦巻く王都の夜空を見上げた。
(世界のソースコードに潜む最大のバグ『魔王』。……僕のエンジニア人生をかけた、最大のバグフィックス(デバッグ)作業の始まりだ)
静かな決意を胸に、近未来エンジニアと異世界の仲間たちは、世界を巡る最終決戦の朝を迎えるのだった。




