王立魔導院への招待と旧態依然とした貴族たち
王国の中央に君臨する巨大都市――王都グランゼリア。
その中心にそびえ立つ白亜の尖塔こそが、この国の魔導の頂点であり権力の象徴「王立魔導院」であった。
石造りの重厚な最高評議会議場。
階段状に並ぶ傍聴席には、高級なシルクの法衣を纏った貴族魔導士たちが居並び、眼下の中央に立つ蓮とシルフィを蔑むような視線で見下ろしていた。
「――静粛に!」
議長席で木槌を鳴らしたのは、最高評議長を務める大公爵バロアであった。
その傍らには、以前アストラル領で返り討ちに遭った特級監察官グレモリーが、陰毒な笑みを浮かべて控えている。
「アストラル領より召喚せし平民・レンよ。お前が辺境にて推し進めている『不審な技術』……『サイバー魔導』と称するものの実態について審議を行う」
バロア大公爵が高圧的な声で言い放つ。
「王立魔導院が何百年もかけて築き上げた高貴なる詠唱・陣形理論を無視し、無詠唱で不可解な現象を引き起こしているとのこと。これは伝統ある王国の魔法体系を愚弄し、国家の秩序を乱す異端の行いではないか!」
「異端、ですか」
蓮はため息をつきながら、胸ポケットから「魔導スマートフォン」を取り出した。
「僕がやっているのは、無駄だらけで非効率な古い術式を綺麗に整理し、誰でも安全かつ効率的に使えるよう改善しているだけですよ」
「戯れ言を!」
監察官グレモリーが前に乗り出し、叫んだ。
「魔法とは選ばれし貴族が長い研鑽と詠唱を経て発動させる神聖なる力! それを平民風情がカラクリ箱一つで扱えるなど、魔法の尊厳を冒涜しておる! 即刻その技術を魔導院へ提出し、お前は地下牢へ投獄されるべきだ!」
貴族魔導士たちから「そうだ!」「平民に魔法の真理は分からん!」「押収せよ!」と怒号が巻き起こる。
権威を守ることしか頭にない彼らの姿に、シルフィが怒りで剣の柄に手をかけた。だが、蓮は静かに彼女の肩を叩いて制する。
(なるほどな。技術の発展よりも自分たちの権益保護が優先か。コードで言えば『レガシーシステムの利権を守るために最新OSの導入を拒んでいる』状態だな)
蓮の網膜上で、脳内AIプロセッサが魔導院全体の魔力波形を静かにスキャンしていた。
『警告:王立魔導院の地下深くに存在する「大魔導基幹」に、壊滅的なシステムエラー(バグ)の集積を検知』
(……なるほど。権威に胡坐をかいている間に、彼らが頼みにしている基幹システム自体がパンク寸前じゃないか)
「言い分は分かりました。ですが、僕の技術を押収する前に……その足元のグラグラなシステムをどうにかした方がいいんじゃないですか?」
蓮の冷ややかな言葉に、議場は一瞬で静まり返り、直後に激しい怒号へと包まれたのだった。




