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殺人犯の濡れ衣を着せられて、変な剣で斬られたら、時間が巻き戻りました。  作者: 九幻琴


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ループ8 殺人犯を引きずり出してみた

 他の人が斬られても巻き戻るのね。


 こうなったら真犯人を斬ってもらわなきゃいけないってこと?

 どれだけかかるか分からないけどやるしかないわね。


 とりあえずは、さっき斬られた人を探しましょう。

 斬られるのも何かの縁だし、数少ない巻き戻り仲間だもんね。


「初めまして、ヴルムン=カルツォーニ伯爵子息でしょうか。私はリエル=ハンクト伯爵令嬢と申します。」


 会場中を探し回って見つけたの。

 割と良くある背格好だったのでちょっと時間が掛かったけど。


「はい、私はヴルムン=カルツォーニ伯爵子息ですが、ハンクト伯爵令嬢、どこかでお会いしましたか。」


 カルツォーニ伯爵子息は笑顔で対応してますが少し不思議そう。

 何で声をかけるか分からないよね。


「一方的に見ていましたの。巻き戻りの前に。」


「あなたも記憶があるのですか!」


 食いつきが凄い。一気に距離を詰められた。


「貴方の前に斬られましたの。」


「あなたも斬られたのですか。」


 何故か笑顔に親近感が混ざって来た。

 巻き戻り仲間 改め 斬られ仲間 ですよね。


「ええ、黒幕の手下に捕まりまして、死体の前に置き去りにされたんです。それで『生き残ったら感想を知らせてくれ。』って斬られました。」


「あれ、毎回言うんですか。」


「言います。っていうか本音っぽいです。」


「あれが本音……嫌ですね。」


「嫌ですよ本当に。」


 人の生死の前に死んだ感想って。


「そういえば、死体の前に僕の時は居ませんでしたね。」


 ふと気づいたように言ったの。


「居ると斬られるので頑張って避けました。」


「そうですか、頑張って……」


 何やら考え込んでる。


「どうかしましたか?」


「いえ……もしかしたら、あなたが避けたから、私が斬られたのか……と……」


「あ……すみません。」


 今まで全然気づいてなかった。


「いえ、斬られると判っていれば避けようとするのは当然です。僕だってもうあの部屋には行きません。当然なんですけど……少し、頭を冷やして来ようと思います。」


「どうぞ、考え無しで済みませんでした。」


 気まずい雰囲気の中、離れて行ったの。


 うん、私のせいで彼が斬られたことに全然気づいてなかったよ。

 仲間だなんて浮かれてごめんなさい。




 また同じ事をして、斬られ仲間を作るわけにもいかないし、出来ることをする!


 まずは、ヴァンハークト侯爵令嬢が、このパーティに出てたことを広めるわ。


 でないとあの人のやったことが、全部私がやったことになるもの。殺人もね。


 それから、攫われるのはごめんだけど、他の人が狐の生贄になる前にあの場所に行かないと。他の人と一緒に。


 第一発見者が疑われないためには、他の人と一緒に発見するのが鉄板よね。前世で推理もののテレビをよく見ていて良かったわ。


 だからって友達は巻き込みたくないし、使用人の人がいいかな。狐以外の。



 あのあたりのメイドさんなら部屋に一緒に行ってもらっても変じゃないわよね。


「ちょっといいかしら、休憩したいの、ついて来て。」


「はい、わかりました。」


 メイドさんを連れて殺人のあった部屋に行く。


「すみませんが……」


 声をかけて来た狐は無視する。

 いつも「人殺し!」って声を掛けていたからこの近くに居ると思ったわ。



 そして、そのまま目的の扉を開けると、窓から少し離れた所に桜色の服を着た人が倒れていて、お腹が血で真っ赤に汚れていた。


「きゃぁぁぁぁぁ」


 隣で耳をつんざく悲鳴が上がった。

 連れて来たメイドさんが悲鳴を上げていた。


「人殺し!」


 狐が私を指差して叫んでいた。

 おいっ


「扉を開けて眺めているだけで殺せるわけ無いでしょ。 それともあなたはこの距離から殺せるの? 人殺し! 勢いだけで勝手に指さすんじゃないっ」


 勢いだけで殺人犯にされてたまるかっ




 しばらくすると、エリック王子もやって来て、他の人もやって来て、いろいろガヤガヤした後に、いつもの並びになった。


 違いは私が座り込んでない事。

 容疑者じゃなくて発見者だって事!

 ここ、大きな違いだよ。


「リエル=ハンクト伯爵令嬢、リナリー=マクラフト伯爵令嬢の死体を発見したそうだがその通りか?」


 エリック王子の言葉が違う。何よりちゃんとリエル=ハンクト伯爵令嬢って言ってる!


「はい、その通りです。」


 『違います。』って言わなくていい!嬉しいっ


「発見時の状況を詳しく教えてくれ。」


 はいっ喜んでっ


「ちょっと休憩したくなったので、そちらのメイドを連れて、この部屋の前までやって来ました。

 扉を開けると、彼女が血を流して倒れているのが見えたんです。

 それで、メイドが悲鳴を上げていると、後ろからこのウェイターが『人殺し!』って指を指して来たので、『扉を開けて眺めているだけで殺せるわけ無いでしょ。』って言い返したんです。」


 狐の頓珍漢な指摘も言っておこう。多分先に言った者勝ち。


「後はだんだん人が集まって来て、今になってます。」


 うん、人が集まってるなしか覚えてないよ。


「なるほど、部屋から出て行った者など見なかったか?」


「いいえ、誰も見ていませんが、殺した心当たりなら。」


 後ろでざわめきが起きているが気にしない。

 生贄を出さないと、この王子なら第一発見者が怪しいとか言い出しかねないからね。


「誰だ?」


「リーズウェル=ヴァンハークト侯爵令嬢です。」


 ざわめきに驚きが混じる。いきなりだしね。


「何故だ?」


「死んでいるリナリー=マクラフト伯爵令嬢が、婚約者の浮気相手だからです。そして今日、このパーティにいらしていた様ですから。」


 ざわめきが大きくなった。

 動機の方?今日居たって方?


「探せ!」


「あ、もう帰ってるかも、お隣ですし。」


 うん、帰ってるから、庭をつたって。


「呼んで来いっ」


 王子の権力って凄いね。



「この女だ、この女が部屋から出て行くのを見た!」


 ヴァンハークト侯爵令嬢がやって来るのを待っている間に、素っ頓狂な大声が割り込んできたよ。

 大声を上げたのは、熊。指さしているのは私。狐といい熊といい、往生際が悪いわね。


「どういうことだ?」


 エリオット王子が熊に話を聞いている。

 ちゃんと皆の話を聞くんだ。


「この屋敷の裏庭を散歩していたら、丁度この部屋の窓からこの女が出てくる所を見たんだ。」


 腰くらいの高さの、人ひとり余裕で出られそうな大きさの窓だからね。所で…


「私、あなたの事を良く知りませんが、私とヴァンハークト侯爵令嬢の見分けがつくのですか?」


 見分けがつかないならこの場合の目撃情報ではどちらかが出てきたことにしかならないし、見分けがつくのであれば私が良く知らない以上、ヴァンハークト侯爵令嬢を良く知る間柄と言う事になる。


「そ、それは」


 熊の額から汗がにじみ出した。

 目もキョロキョロと落ち着かない。


「リーズウェル=ヴァンハークト侯爵令嬢がやって参りました。」


 入口から声が響き、ヴァンハークト侯爵令嬢が姿を現す。


 真っ白なドレスに、大ぶりの白い髪飾りをつけて。


「こっちです。この服の人が窓から出て来たんです。」


 熊が勢いよく私の方を指差す。


「この青緑の服を着た人が、死んでる人を殺しそうな目で睨んでいたのを見たわ。」


 ああっヴァンハークト侯爵令嬢がやってたことが私に降りかかるっ


「そういえば、休憩すると言いながら、この部屋を迷いなく開けていました。」


 メイドさんまでっ


「そうか。」


 エリック王子が剣を抜きながら、私の方にやって来る。


 悔しい、追い詰められなかった。


「この剣は『時の天秤』と言って、無罪であれば無傷だそうだ。」


 私の手前で立ち止まる。


 ヴァンハークト侯爵令嬢は優雅に微笑んでいる。


 次はその笑顔を崩してやる。


「生き残ったら感想を知らせてくれ。」


 そう言いながら剣を振り下ろ…………




  ザシュッ




 チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク





 次はこうはいかない……





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 



読んでいただき有難うございます。

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