ループ2 私を攫う奴らを見つけてみた
また私の部屋に戻って来ました。
「あの王子、真犯人よりあの剣の効果を試したいんじゃないかしら。」
あの効果だと、どれだけ切り殺しても、目の前で無傷の人間は出ないと思うけど。
(コンコン)「お嬢様、今日のモラッセ侯爵のパーティには何を着て行きましょうか。」
「青緑のドレスで、ちょっと暑いみたいだから、ショールは無しでお願い。」
折角巻き戻っているんだから、少しは利用させてもらうわ。
パーティに行かないのはあきらめるけど、これくらいはいいわよね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パーティ会場にやって来ました。
外に出れば殴られて、会場にいると飲み物に薬を盛られる。
どうすれば良いのかしら。
料理がおいしそうね、食べてなかったわ。
あ、このローストビーフおいしいわ。こっちは大きめのサイコロステーキだと思ったけれど、何かにつけてから焼いたのね、一噛み毎においしいスープが溢れて(グッ)喉に詰まった。(ドタッ)
「大丈夫ですか?」
い、息が出来ない……助けて……
「何処か休憩室に運ぼう」
持ち上げられた?
苦しい……
運ばれてる……
(ガチャッ) (バタン)
「ここでいいだろう」
(ドサッ)
痛っ、投げ捨てなくても……あ、息が出来る……
この二人が運んでくれたんだ……熊みたいな貴族と狐みたいなウェイターね。
「攫って来る手間が省けたね。」
「ああ、眠らせる手間もな。」
え?眠らせるって、殴ったり、薬を盛ったり?
この人たちが犯人?
ちょっと寝たふりしてましょう。
「ヴァンハークトの姫様も酷い事を言う。マクラフト嬢を殺した罪を、この娘に擦り付けろとはな。」
ヴァンハークト様が黒幕なの?なんで私に罪を着せるの?
「この娘も災難だね、ただ似てるだけで犯人にされるんだから。」
似てるだけって、『そっくり令嬢』とか言われてるのは私の方なんだけど。
「あの姫様の我儘も大変なもんだからな。」
「気に入らない物は全部壊しちゃうからね。」
そんな性格だったの。知らなかったわ。
「おかげで俺たちも仕事が途切れなくて助かるんだが、さっさとやっちまうか?」
「そうだね、気が付く前にさっさとやっちゃおう。」
「そうだな目が覚めて騒がれるのは困る。」
え?え?
(ゴンッ)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「リーズウェル=ヴァンハークト侯爵令嬢。お前は愛する婚約者、マルクト=ハイデマン侯爵令息を、そこのリナリー=マクラフト伯爵令嬢に奪われ、恨んでいた。」
「違います、私はリエル=ハンクト伯爵令嬢です。」
結局こうなるのね。
「リエル=ハンクト伯爵令嬢だと? リーズウェル=ヴァンハークト侯爵令嬢ではないのか?」
「そっくり令嬢?」
「ああ、そっちの令嬢か。」
「ですから、恨んでませんし、殺してません。」
「いや、そっくりなんだから、同じように婚約者を取られているんじゃないのか?」
「婚約者も恋人も居ません!」
うん、同じ流れ。
「そっくりな彼女が婚約者を取られたから、取った相手を恨んで殺したのか。」
「そんな理由で殺しませんって。大体ここには眠らされて連れてこられただけです。」
「誰に連れてこられた?」
「そこの、赤いジャケットに黄色いクラバットを着た焦げ茶の短い髪の人。」
その辺りみんなでキョロキョロしています。
「皆と一緒にキョロキョロしてる、毛深い熊みたいな。」
皆の視線が一人に集まりました。私以外にも熊に見えるのね。
「それから、そっちの扉の方に移動しているウェイター。」
ウェイター他にもいるし、おんなじ服着てるし。
「ちょっと背が低めで、線の細い。薄茶色の短髪で、目が細くて、顎も細くて、狐みたいな。」
あ、狐みたいで振り返った。
「そう、今振り返った貴方。」
振り返ったことで一人に絞れたわ、有難う。
二人が近づいて来る。
「おい、俺はマクマホン伯爵だ、熊じゃねぇ。」
熊の貴族は私の前まで来て名乗ったわ。熊にしか見えないけど。
「そちらのウェイター、名前はなんだ。」
エリック王子が狐のウェイターに聞きます。
「クリス=クィットネンと申します。」
狐のウェイターが畏まって答えています。
「マクマホン伯爵、クリス=クィットネン、リエル=ハンクト伯爵令嬢はお前たちに眠らされてここに運ばれてきたと言っているが、何か言い分はあるか?」
言い分はちゃんと聞くのね。
そういえば私の言ったこともちゃんと聞いてくれたわ。
「いえ、私達はハンクト嬢をこの部屋に運んだりはしていません。彼女の勘違いか、苦し紛れの言い訳かと思います。」
おい熊、誰が苦し紛れの言い訳だって?
「パーティ会場で、具合が悪くなったご令嬢を空いている部屋にお運びしました。そちらを勘違いしたのではないでしょうか。」
狐、その後気絶させたでしょうが。
「ちょっと、勝手に勘違いにしないでよ。大体具合を悪くしたのは私でも、その前から攫う計画立ててたでしょ。攫って来る手間が省けたとか、眠らせる手間が省けたとか言ってたじゃない。」
「お前、聞いていたのか。」
熊がこっちを向きました。
「聞いてたわよ。始めっから眠らせて運ぶ予定だったんでしょ。」
「別にそんなことは言っていませんよ。ご令嬢の事だとも限らないでしょう。」
狐が今度は反論しました。
「限るわよ。私を運んだ直後に攫う手間が省けたで、他の何を攫うのよ。」
「攫わなくても女がいるから手間が省けたとか。」
熊が変な事言い始めました。
「それ、女性を誰か攫ってくる予定だったってことよね。」
つい、ジト目になってしまう。
「それはただの冗談ですよ。それに攫ったと言いますが、別の部屋へ寝かせただけですよ。ここに連れてきたわけでもありません。」
「投げ捨てるのは寝かせたとは言わないわよ。」
思いっきり痛かったんだからね。
それで喉のつかえは取れたけど。
「けれど、投げ捨てたからと言って、ここに連れてきたことにはなりません。」
狐が真面目な顔で言い切った。
「じゃあなぜ気絶させたの?ここに連れてくるのを気付かれたくなかったんじゃない?」
「気絶してたのなら、私達が連れて来たのか分かりませんよね。」
狐と私がにらみ合う。
「どうやら膠着状態の様ですね。」
そういうと、エリック王子がすらりと剣を抜いた。
「げ。」
「え?」
狐と熊も逃げたそう。
「三人とも斬ることにしましょう。」
「ちょっと待ったぁ。」
「げぇぇぇ。」
「やめてください!」
「確実に無罪の人も斬るじゃないですか。」
「「安心しろ、この剣は『時の天秤』と言って、無罪であれば無傷だそうだ。」
剣を少しだけ持ち上げる。
「だから有罪の確証も無い上に無罪の人もまとめて斬らないでっ」
「無罪なら無傷、有罪なら成敗だ!」
堂々と私達の方に一歩近づく。
「それ、無罪でも死なないから気にせず斬る気よねっ」
「俺、令嬢運んだだけなのに、死にたくねぇぇぇ」
「父さん、母さん先立つ不孝をお許しください。」
え?
「ちょっと、私運んだだけなら誰が殺したのよっ」
熊を問いただす。
「そ、それは……」
熊が狐の方を見る。狐が首を横に激しく振っている。
「ちょっと、あんた自分も死ぬのにしゃべるなってどういう事よ。」
「喋ったら、家族ごと皆殺しだ。俺だけでいい。」
狐が淡々と話す。
熊もはっとした顔をしている。
「喋って犯人を殺してもらえば家族も巻き込まれないわよ。」
家族を殺す時間を与えなければいいわ。
「いや、俺たちが喋っても、言い抜けられるようにしてるはずだ。狡賢いからな。」
嫌な信頼が有るのね、その殺人犯。
「そんなのやってみないと判らないでしょ。」
「やってみて、家族も殺されるのは嫌だ。」
うぐぐ。
「話は終わった様だな。」
エリック王子がゆっくりと私達に向けて歩いて来る。
「こら熊、私の後ろに隠れるな。」
「マクマホンだ。」
「言い返すなら私の後ろから出ろ。」
「嫌だ。」
エリック王子が私の前で、剣を振り上げた。
「では、生き残ったら感想を知らせてくれ。」
そう言いながら剣を振り下ろ…………
ザシュッ
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
三人は多すぎでしょ……
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読んでいただき有難うございます。




