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三様

俺たちは魔獣鎧ルーベイドを手に入れ、旅を再開した。


フルプレートメイルを着込んで旅するような人物は目立つということで、ルーベイドには歩いてついて来てもらうことにした。

幸いルーベイドは二足歩行可能で、ちょうど子供ぐらいのサイズだから、マントとフードを着せた。これで傍目には、動く鎧だなんてわからないはず。


しかし、このルーベイドは本当に凄いよな。冷静に考えると伝説級のアイテムなのでは……?


「そもそも魔獣鎧とはどのようなものなのでしょうか? ゴーレム? リビングメイル? どちらとも違う感じですよね」

フォウナが横を歩くルーベイドに質問する。それは俺も気になってはいた。


「はっはー!良い質問です、マスター。ワタクシ、ゴーレムとリビングメイルのハイブリッドなのであります!」

ルーベイドは簡単に説明してくれた。


ゴーレムというのは核が本体で、魔法の力場で体のパーツを操っている。だから俺たちが倒したあのゴーレムのように、体の一部がふわふわと浮かんでいるような構造が可能だ。

それに体はただのパーツにすぎないので、いくら攻撃されてもダメージはない。核を壊されるか、魔力切れを起こさない限り活動する。

ただ、知能のようなものはなく、設定された行動をとることしか出来ないし、細かい作業も無理。


リビングメイルも核があるのは同じだけど、魔力で見えない肉体のようなものを作り出して、それで動かしている。

生き物が体を動かすのと同じような仕組みで動いているので、繋がっていないパーツを動かすような真似はできないが、人間のような精密な動きが可能だ。

さらに脳の機能を再現することで知能を持たせることも可能なのだ。


つまり、ゴーレムは決められた行動を繰り返す機械のようなもので、リビングメイルは意思を持って行動する召使いのようなものといった感じだ。


ただし、所詮は人間が作るものなので、通常リビングメイルは小動物並みの知能しか持たせられない。


その点、流石はドワーフの名工、リビングメイルに人並みの知性を与えることに成功していたようだ。

セバスチャンも発声がおかしかったが、普通に話すことが出来たもんなぁ。


そしてルーベイドはさらにすごくて、高い知性を持っていて精密な動作も可能なうえ、ゴーレムのように力場を操作して体のパーツを自在に操れるという。


「それだけではありませんよ!ワタクシ、鎧としても超・優・秀! 能力上昇の各種バフを持っていますし、魔力結界でデバフも防げます。物理防御も魔法防御もトップクラス!まーさーに、無敵!」

楽しげにステップを踏み、クルクルと回って見せるルーベイド。

ここまで感情豊かなのも凄い。


しかし高性能なのは認めるが、ちょっとウザいなぁ……。



ちなみにグリムは分類的にはゴーレムの一種だったらしい……。


**********


俺はルーベイドの話が一段落したところで、ルミナスと脳内会話をした。

『レオンたちはセリナが回復したので、街を出て真っ直ぐこっちへ向かっているようです。だいたい二日分くらいの距離は離れていますね』

(セリナの方は本当に大丈夫なの?)

『大丈夫そうですね。ここはウェイン少年に感謝です。彼が頑張ってくれました』

(ウェイン? あの小僧か……。レオンはこういう時は役立たずだものなぁ……)

とりあえずセリナが立ち直ってくれたのは素直に嬉しい。ウェインには素直に礼を言いたいが、全て解決するまで無理だろうなぁ……。


あとは——

(ところで、今日は小ルミナスの姿が見えないが?)

俺は気になったことを尋ねてみる。

(なんかダンジョンでは普段よりも妙にハイテンションで飛び回ってたよね)

『それは言わないで……。ちょっと反省してますから……』

ルミナスのテンションがすっごい下がった。

『やっぱり小さい姿になったりすると、形に引っ張られて子供っぽくなってしまうみたいで……。あの姿の私は別人と考えてほしいです』

(アレはアレで可愛いけどね~)

俺は思わずニヤニヤしてしまう。

「どうしたんですか、カイル。何か面白いものでも見えました?」

急にフォウナが声をかけてきた。ヤバい、顔に出してしまった。

「いやぁ、いい天気だと思ってね」

適当にお茶を濁す。フォウナは屈託なく笑った。

「そうですね!気持ちいいです!」

『そうですね!気持ちいいです!じゃないわよ!』

いきなり目の前に小ルミナスが現れる。

びっくりして目を見開いたが、そのまま欠伸に移行して誤魔化した。幸いフォウナは気づかなかったようだ。

(おいルミナス!いい加減にしてくれ!)

『い〜~っだ!』捨て台詞を残して消える。

完全に子供だ。開き直りやがって。

全く困った女神様だ……。


**********


レオンはとても不機嫌だった。

カイルを追う旅を再開したわけだが、のっけからずっとこうだった。

仲間のことをちっとも見もせずに、ノシノシと先を歩いて行く。

「ちょっとレオン!いい加減にしなさいよ!」

遅れ気味のチェスタが声を上げたが全然聞く耳を持たない。

「好きにさせときなさい。ああなったらどうにもならないわ。ホント、子供なんだから……」

セリナは諦め口調でチェスタを諭した。


原因は街を出る前に立ち寄った武器屋だった。

レオンはフォウナに愛用のロングソードを奪われたままなので、代用品を探しに行ったのだ。

しかし、代わりになるような物など簡単に見つかるはずがない。

店の品を片っ端から手に取ってはナマクラだ、二流品だとケチを付けるので追い出されてしまったのだった。


セリナはため息をついてレオンの背を、正確には腰の辺りを見つめる。

今、レオンの腰にあるのはその辺で拾った、ただの木の棒だ。

「頭にきたから、あのクソ魔族(フォウナ)から取り返すまでこれでいく」と言い張っていた。

実際、レオンの実力ならそれ(木の棒)で、たとえハイレベルのモンスターが相手だとしても普通に戦えてしまうのだが、魔王と戦おうという勇者がこれでは格好がつかない。

早くなんとかしなければ、と悩むセリナであった。


**********


その頃、魔王城の会議室では今後の人類との戦いの趨勢を決める重要な話し合いが行われていた。


その場にいたのは、

千年を生きる吸血鬼、鮮血の不死者クロード。

魔王軍随一の知将、大悪魔アダダイダ。

破壊の化身、獣王ベィヨン。

魔王軍四天王と呼ばれる、魔界の実力者たちだ。


まず口を開いたのはクロードだった。

「今回集まって貰ったのは、グリムの事だ」

黒鋼の処刑人グリム。本来ここにいるべき四天王最後の一人。

「内偵をしていた者が確認をした。破壊されたグリムの鎧と魔剣が、王城の地下に封印されていたとのこと。残念だが、本当にグリムは死んだとみて間違いないだろう」

沈痛な面持ちのクロードに対して、ベィヨンの反応は冷ややかだった。

「へっ! 負けたとは聞いていたし、今更死んだとか言われてもねぇ」鼻で笑うベィヨン。

アダダイダに表情はない。目をつむり黙っている。

クロードが話を続ける。

「しかしだな、死んだ事がはっきりした以上、なんらかの対応はせねばなるまい。その事実が魔界に広まれば、影響が出る」

「影響ねぇ……。元々みんな好き勝手に生きてるこの魔界で、四天王が一人減ったところで問題はないと思うがねぇ」

ベィヨンの言葉にアダダイダが口を開いた。

「いいや、ベィヨン。クロードの言うことにも一理はある。やはり魔王軍には四天王が似合うからな」

腕を組み、うんうんと頷く。

「三天王では駄目なのだ。やはり四天王でないとな。“四(シ)”は“死(シ)”とも繋がる。響きの格好の良さが段違いだ」

「わかっているじゃあないか、アダダイダよ……」クロードがニヤリと笑う。

はぁぁぁ……とベィヨンが大きくため息をついた。

「……そんなくだらない話を続けるなら俺は帰るぞ」

立ち上がろうとするベィヨンをクロードが慌てて止める。

「待て待て! 本題はこれからだ。実はすでにグリムが死んだことで問題が発生しているのだ」

クロードはテーブルに地図を広げる。

「お前たちもグリムの縄張りは知っているだろう? 魔界の南側、人間の王国との境界付近だ。 今、この辺りでグリムの後釜を巡っていざこざが起き始めている」

「ちょうどいいじゃねぇか。勝った奴を新しい四天王にしちまえば問題は解決だろ」

「だが、どいつもこいつも中途半端でなぁ……。とても四天王の器とは思えんのだ。それに、一番の問題は後継者争いではなく人間どもなのだ。

 ……どうもこっちの混乱に乗じて攻勢に出る気配がある。四天王不在のうちに領土を奪う気なのだろうな……」

「けっ!人間らしい浅ましいやり口だぜ!」人間嫌いのベィヨンが毒づく。

クロードはベィヨンとアダダイダの顔を交互に見つめた。

「そこでだ、お前たち二人に、ちょっと出向いてもらいたいと俺は考えている。

 一人は人間の相手だ。国境を超えようとするバカな人間どもを蹴散らすのが仕事。

 もう一人はグリムの後釜の方をなんとかする。どうもグリムの兄弟分とか言ってる奴がいて、一応最有力の候補らしいから、どれほどの奴なのか確かめてきて欲しいのだ」

ベィヨンは顔を歪めて笑うと勢いよく立ち上がった。

「人間の方は俺がやってやるぜ。最近ちょっと退屈していたからな。人間相手に憂さ晴らしだ!」

ボキボキと指を鳴らす。やる気満々だった。

アダダイダもゆっくりと立ち上がる。

「グリムの後継者争いは気になりますね。四天王を名乗るにふさわしいかどうか、私がしっかりチェックしましょう」

表情こそあまり変化はないが、声は楽しそうだった。

「そうかそうか、二人が動いてくれるなら安泰だなぁ!」

クロードも二人の様子を見ながらわざとらしく笑う。この男もまだなにか企んでいそうであった。


薄暗い会議室に三人の笑い声が響く。

それは笑い声でありながら、なんとも不気味で不安げな響きであった。


物語が一段落したところで、次回は番外編を投稿する予定。

本編後半の執筆がちょっと煮詰まっているので、気分転換に書いてます。

レオンとカイルとセリナが三人で旅をしていた頃のお話です。数話で終わらせる予定。

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