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不思議な女の子


「……だれと一緒に来てるの?」

少年は優しく話しかけてくれた。

「ううん…ひとり……」

さすがに。

この辺り治めてる人の娘で勝手に城抜け出して今ここにいます、とは言えない。

「迷子?」

鈴はちょっと視線を逸らして。

小さく。

「ちがうもん…」

言ってみたけど。

少年は笑って。

「図星じゃん。」

鈴はちょっとむぅっとする。

少年は。

「家がどこかとかって分かったりする?」

家がどこかは分かる。

あの山の上にあるお城。

「…わかるから…ちょっと休んだら自分で帰れる…」

と言った時。

ぐうぅ。

鈴のお腹が鳴った。

今まで街歩きに夢中になりすぎて、気づいていなかったが。

今日は。

朝餉を食べてから何も食べていない。

「……あ。」

お腹が空いていたことに今更ながら気づいた。

少年は何も言わない。

鈴が顔を上げると。

少年は肩を震わせていた。

「…あっはは…!」

ついに吹き出した。

「笑わないでよっ!」

鈴が不満げに言うと。

少年はもっと笑った。

「ごめんごめん!

お腹空いてるんだったら、露店でなんか食べるか。

…あ、俺裕次郎な。」

「わたく……あたし、鈴ね!」


鈴は裕次郎に手を引かれて大通りに出る。

さっきまで露店に並んでいるものをいろいろ見ていたが。

お金もなく来てしまったから何も買えなかった。

裕次郎が鈴に訊く。

「いつも露店では何食べるの?」

鈴は少し考える。

この通りで見てきたものは、全部自分が食べたことがないものだった。

「…食べたことない。」

鈴が言うと。

裕次郎は、びっくりした顔をした。

「え?

今まで一回も?」

「うん、お店のごはん食べたことない。」

露店のものを何も食べたことがないなんて。

どこかのお嬢様なのだろうか。

裕次郎は少し考えたけれど。

結局考えるのをやめた。

「じゃあ、うまい串焼き屋知ってるから行こうよ。」

鈴の瞳が。

きらっとした。


じゅぅ、と音がする。

香ばしいいい匂い。

右と左に石があって、そこに棒が二本かかっている。

その上に串に刺さったお肉がいっぱい置いてあって。

それをおじさんがくるくるひっくり返してる。

「おぉぉ…!」

興味津々の鈴。

裕次郎がおじさんに話しかける。

「おっちゃん、串焼き二本ちょうだい。」

「小僧、なんだって?おっちゃんだってぇ〜?」

おじさんが冗談めかしたように言う。

「はいはい、お兄さん串焼き二本くださいな。」

「よろしい。」

鈴は。

赤くて動いているものの上に置いてあるお肉が焼けていくのが不思議だった。

指を突き出してみる。

赤くて動いているものは触れなかった。

そして。

指先がものすごく痛くなった。

「ひゃぁっ!?」

「鈴!?」

「熱かった…!すっごい熱いよ裕次郎!」

「何言ってんだ!火なんだから当たり前だろ!」


裕次郎は鈴の手首を掴んで。

井戸へ連れて行く。

裕次郎は、鈴の指にびしゃりと水をかけた。

「わっ!つめた!」

鈴が楽しげに言う。

…不思議な子だ。

火傷だって痛いはずなのに。

むしろ、鈴は楽しんでいるようだ。

まるで今まで何も知らなかったみたいな。

普通の子供なら、火くらい触ると熱いのはわかるだろう。

今だって。

普通の子供は、冷たい水を触ってあんな声は上げないだろう。

露店で何も食べたことがないのも。

見れば見るほど不思議な子だ。

「おーい小僧!

金だけ払って商品置いてくとか何事だぁ!」

露店のおじさんが串焼きをニ本持ってこちらに歩いてくる。

「大丈夫かぁ?

お嬢ちゃん、自分から火に触るなんていい度胸じゃないか。」

豪快に笑いながら、おじさんが言った。

「だってお肉が焼けるなんて不思議だったんだもん…」

鈴は笑って言った。

…不思議なのは、鉄板じゃなくて君だよ。

裕次郎は思った。


「おいひぃっ!」

鈴は肉を口いっぱいに頬張った。

城では肉は出るけれど、こんなにおいしいお肉ははじめてだ。

裕次郎は隣の鈴を横目で見る。

口元が緩んでいて。

足をぱたぱたさせている。

…可愛いな。

ふと。

そう思った。

なるで小動物みたいだ。


いつの間にか。

鈴を横目で見る裕次郎の頬も緩んでいた。



ようやく登場、裕次郎。

まだちっちゃいくせに達観してます。

お兄ちゃんムーブが可愛い。


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