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幾千回の転生後  作者: しろいあお
第一章
9/13

9.歓迎する遺跡

 レムールが先頭に立って暗い階段を下り、

 通路に入る第一歩目。

 足が地面に触れると同時に、

 全身を駆け抜ける悪寒とプレッシャー。

 咄嗟に身構えるが、周囲は不変で想像したことは何も起きない。

 

 ただの不快感だけを残して、リステラの身を案じた。


「リステラさん、大丈夫ですか?」

 

「?なにがですか?」

 

 しかし、一段上のリステラはそんなもの一切感じなかったようで、何ならすこぶる調子がいいとのこと。

 

 Vサインと共に屈託のない笑顔を送ってくれた。


(さっきは必要以上に警戒していたからな。

 少しは落ち着けたようでよかった)

 

 彼女が平気ならそれでいい、と歩みを進める。

 

 リステラが階段を下り終わり、レムールと同様に床に足を踏み入れた瞬間、

 暗闇だった通路に一息に灯りがともった。

 

 淡い粒子を残しながら薄紫に光る壁は石造りだ。

 

 その光は先導するように、石壁の隙間を何度も走る。


「きれい......」

 

リステラから感嘆の声が漏れた。

 当然の反応だった。

 

 幻想的で神秘的な光景であり、まともな感性なら魅入られるのは必至だ。

 

「ええ、とても美しい魔力ですね」

 

 相槌を打つレムール。

 

 しかし彼は明かりを確認するために一瞥しただけであ

り、すぐに視線を移し周囲へと注意を払った。

 

 安全を確認したレムールは再び先を歩く。

 

 コツ、コツ、と二人分の足音を何白と響かせると、

 不意に石壁の光がうごめきだす。


 唯一気づいたレムールは声を出さず、

 後ろを歩くリステラの注意を手を振って引く。


 視線が集まるのを待っていたかのように、薄紫の光がそれぞれに別れ、集まり、文字を浮かび上がらせる。

 

『よ う こ そ』

 

 そこには場と雰囲気違いな言葉が綴られていた。


 もっと恐々とした場所だと思われたが、存外ここは暖かいようだ。


「ようこそ......

 もしかしてこれって、歓迎されてます?」

 

 リステラがもっともな疑問を口に出す。

 答えなんて出ようはずもないが、相槌は打った。

 

「そうですね。文字だけ見れば、そうなのかと」

 

 呼応するように壁の文字が再び動き出す。


 今度は文章になって。

 

『そうですよ』


『あなたをお待ちしておりました』

 

 文字群とは別に、壁を走る光が矢印を形作り、リステラを指し示す。

 

「え、え、私?何にもわかんないんですけど.....」

 

『何もお伝えできず申し訳ありません」

『今は先へとお進みください』

『どうか気を確かに』

「ご無事で』

 

 魔力の粒子を散らしながら、流れる様に円滑に、羅列された文字が動いた。

 リステラは文字との対話が終る予感を抱き、慌てて質問をする。


「待って待って!じゃあなんで今出てきたの?」

 

 少しの間を空けて次に浮かび上がった文字は、

 少し子想の斜め上だった。

 

『嬉しかったから』

 

 その文字は他の文字より素早く消え、新たに文字が石壁に現れた。

 

『最後に』

 

 続けて無数の矢印を囲むようにレムールへ向け、

 

『お前の素性は知らない』

『が』

『お前の善性をじる』

『託した』

『死んでも守れ』

『いや、死ぬな』

『生きて守れ』

『頼んだ』


 気が付けば文字の色も赤くなっており、強くなった詰気と合わせて真剣さが伝わる。

 それを理解したレムールは故に、ただ一言、同じように真っすぐ答えた。

 

「もちろんです」

 

 その言葉を受けた文字は、

 燃えるような赤色から優しい緑へと変わった。

 

『よし』

 

 納得し、そして霧散した。

 

 静寂が漂い、どこか気まずい空気が流れるが、

 あえてそれを読まずにレムールは切り出す。

 

「先を、急ぎましょうか」

 

「......はい」

 

 何故こちらを知っていたのか。

 何故この遺跡は今になって現れたのか。


 疑問は尽きないが、考えるだけ無駄だと悟る。


 沈黙の中、でも確かにあった暖かさを感じながら引き続き歩く。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 


 歩き始めて数分、長い通路を超えてようやく出口が見えてきた。

 強い光で先は見えないが、状況が変化するのは一目瞭然だ。

 警戒を強めながら出口へと向かう。

 光に飲まれた先、すぐさまレムールは明るさの正体に気づいた。

 

 ────太陽。

 

 そこにあったのはそこにあるはずがないもの。

 青い空、白い雲、光る太陽。

 

 レムールが突っ込むよりも数段早く、リステラが身振り手振り大きな声で叫んでいた。


「なんで遺跡に海があるんです!?

 私たち、確かに地下に入りましたよね?」


「ははは。いや本当。驚きましたね」


「全然驚いてないじゃないですか、もう!

 どうしましょう……」


 遺跡においては明らかに異常な海には、見たところ船も何もなかった。

 あるのは古ぼけた桟橋に寂れた灯台一つ。

 『貧しい漁村』と呼ぶのがふさわしいような場所だった。


「ここ、どこなんでしょう……」


「遺跡の中なんじゃないですか?」


「ちがいますよ!

 それはわたしでも分かります」


 リステラはぷくっと頬を膨らませて抗議する。


「わたしが言いたいのは、この漁村が実際にどこかにあるのかって言うことです!」


「はは、失礼しました。

 しかし僕も多くを見てきましたが、どこがモデルかまではわからないですね」


「ですよね……

 なにかヒントになればと思ったのですが。

 村以外には何もなさそうですし、海を越えるにも船がないので」

 

 先刻の『気を確かに』という文字の意味を思い知らされた。

 だがレムールにとってそれは問題にはならない。


「大丈夫ですよ。僕が何とかします」


「なんとかって?……て、わっ!」

  

 言い出してすぐ、レムールは砂浜を行き、堂々と海に向かい始めた。

 あわや着水。

 だがレムールの靴は濡れることなく、海の上をそのまま文字通り歩いていた。

 

 (そんなことある??)とリステラは目を凝らしてレムールの足元を見る。

 すると、太陽と海に照らされて、まず見えたのは階段。

 それを少し上った先には橋脚のない透明な橋が架かっていた。

 そこでリステラは一つの考えに至る。


「時空操作って、こんなこともできるんだ……」


「コホン。使い方次第ってところですが便利なんです、割と。

 これまでもたくさん助けられてますよ」


 咳払いをしたレムールは、目を丸くするリステラへと手を差し伸べ、橋の上に招待する。

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