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幾千回の転生後  作者: しろいあお
第一章
4/12

4.みちしるべ

 先ほどの賑やかな大通りを抜けて路地へ。素朴な佇まいの純喫茶へ移動していた。

 窓明かりの入る席で、二人は対面して座っている。


「では兄弟、仕事の話だ。俺がするのはあんたの助け。その内容は多岐にわたる。

 中でもわかりやすいのは案内、だな」


「案内?」


「そう、案内。レムールがその時々で行かなければならない場所を俺が示す。

 それが一番、君の望みに近づける」


 アイゼが球体を下へ傾け、視線を誘導させると、丸いテーブルには大きな地図があった。

 そこには東西南北に四か所、赤い丸印がされてある。


「まずはこれを見てくれ。もう承知だとは思うが、初めから。俺らの今いる国、シュテルネーアはここ」


 アイゼは人差し指でトントンッと、地図の右、つまり大陸の東部を叩いた。


「なぜシュテルネーアが『偉国』と呼ばれるようになったか、わかるかい?」


 アイゼは前面を地図に向けたままでレムールに訊ねた。

 同様にレムールも地図へ目を落としたまま、素を隠さないで答える。


「確か……『過去の戦役によって失った国力を一代で回復させたから』だったな」


「流石、リサーチばっちりじゃん。んで、その回復させたっていうのが、現国王であるダイン・ツー・シュテルネーア」

 

「ま、今はご乱心中だけどね」とレムールに聞こえないように吐き捨てるアイゼ。


 その濁った言葉を払拭するように続けた。


「彼の働きは実に素晴らしいものだった!

 数多くの教育機関に医療施設など公共機関の増設。一般家庭への魔道具の普及などを行ったね。そのほか舗装された道路や経済発展にも尽力した。

 そして何より老若男女に明るく手厚い法律。

 なんて素晴らしい!

 これなら偉国と呼ばれる筋合い、大アリだね!」


「でも明るいだけじゃない」

 

 今度は頬杖をついたレムールがはっきりと口にした。


「好況、利便、仁政。人にとって過ごしやすくなればなるほど、多くの人が集まってくる。善い奴も、悪い奴も」


「その通り!

 そもそも人の性根は真っ黒なんだから!

 そんな人間が集まれば自ずと形成されるのが裏の顔。

 そういうとこ、行こうとしてたろ?

 止めれてよかったよ。いや、ほんと」


 肩をすくめ冗談交じりに言うアイゼに対し、長くなりそうだったのでレムールは話を促す。


「それで、俺は何をすればいい?」

 

「おぉ、積極的。でも落ち着きな。

 慌てるお前は貰いが少ないってよく言うだろ?

 そんな君にはここを探索してもらう」


 ──言わないが?

 

 と、訴えたいのを我慢して、アイゼが指さす方を見る。

 場所はシュテルネーアよりさらに東、赤丸で記された森。


「ここは?」


「遺跡さ。

 偉国はその豊かさ故に、多くの人が集まる。

 これだけ発展を遂げている国の周囲は当然、ほとんど探索されているはず。

 だけど探索されなかった、調べることができなかったものもある。

 それが、ここの遺跡」 


 確かに、積極的に情報収集をしていたレムールでさえ知り得なかった場所であり、そもそも存在を認識できていなかった。

 そう思い至ったレムールは、真剣な面持ちで静かに聞き入る。


「その遺跡は何故か今朝、急に発見されてね。

 遺跡の内部は謎に包まれているんだ。

 奥に何があるのかもわからない。

 ただ一つ確かなのは、君の望みに近づける『何か』があることだけ。それでも、行くかい?」


 意地が悪い。

 前に進むとわかっていて、こんな質問をするのだから。


「当たり前だ。それが目的の為なら、なんでも」


「Prima! 実に素晴らしい! それでこそだ!」


 周りの目を気にせず、興奮したアイゼがスタンディングオベーションを発揮した。

 しかしレムールは手を挙げ、真っ当な疑問を口にする。


「……だが、なぜそこに『何か』があることを知っている?」


 さっきまでの拍手がピタリと止まり、無言を貫くアイゼ。

 球体の明かりも暗くなったまま光ろうとしない。

 予想通りの応対を見届けたレムールは「ま、だろうな」と席を立つ。

 

「さぁ、善は急げだ。ぐずってる暇はないぞ!」


 急に動き出したアイゼは囃すようにレムールの尻を叩き、出発を促した。

 それを受けたレムールは、机にコーヒー代と今回の案内料を置いて店を出る。


 その積まれた大金と二人きりとなり、見つめ合い、

 アイゼはつぶやく。


「……そうさ、俺は案内人さ。

 お前を死地に追いやる案内人。

 がんばれよ、同類。俺は何があっても、お前の味方だ」

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