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あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
11章 駿河大学_チキンのトマト煮(もうわけがわからない)
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爆弾って……?

 一番後ろからみんなの後をついて行き、到着したのは博物館の入り口だった。


「ここはね、刑罰に関する展示があるのよね。刑罰、あぁん、ゾクゾクしちゃうわぁ」


 美魔女が両手で自分を抱きしめ、頬を桜色に染めて恍惚とした表情を浮かべている。

 この人、そういう感じなんだ……やっぱり怖いし、趣味でいろいろやってそうだよな。聞かなかったことにしておこう。あと誰かそろそろこの人を規制した方が良いと思う。


「私は何度か来てるんだけど、せっかくだし展示を見てからお昼が良いかしらと思って。来た事無いでしょ?」

「刑罰の博物館なんて行った事無いです。さすが大学の博物館ですよね」

「戦争博物館とかはあるけどね。なかなか珍しいよね」

「…………」


 俺は近くにいた小早川さんに話を振ると、無言で何の反応もくれなかった。えぇ? 何で?

 そして彼女は前の方にいる美魔女に質問をした。


「写真は撮って良いんでしょうか?」

「確か大丈夫だったはず。ダメなところにはダメって書いてあると思うわよ」

「珍しいものがあったら撮ろうかな」

「なかなか来ようと思って来れるところじゃないしね。良いんじゃない? お勧めは鉄の処女。串刺しよ串刺し。ふふ……茉依も目覚めちゃうかもしれないわね」


 茉依"も"って何だよ。"も"って。あんたは目覚めてる側の人間なんかい。

 獲物を見るかのようなギラついた瞳で美魔女が語っている。この人、存在がアブノーマルなんだよなぁ……。着てる服(?)からしてアブノーマルだもんな。俺からしたらその服を串刺しにしてどっかのゴミ箱に捨ててやりたいよ、まったく。

 それにしても俺、何か空気みたいな扱いじゃない? 無視されてない? 気のせい?

 背中に嫌な汗を感じる。暑い時に出る汗ではなくて悪寒に近い、冷たい汗だ。冷たい汗が背中をつぅと肩甲骨から背骨を伝い腰まで下りてきた感じのヤツ。


「串刺しはさすがに……でも、少しなら、デコピンとか……ですかね」

「もしかして相手に罰を与える話をしてる? そんなものは単なるご褒美よ。罰にならないわ。茉依は甘いわね。骨の髄までわからせるのよ。完膚なきまでに屈服させるの。心も……あ、この人に逆らえないなって。うふふ……」

「美波里先輩、行きましょう」


 何の会話してんのこの人。怖いよ。

 小早川さんと美魔女は2人で博物館の中へと入って行ってしまった。しかしやっぱり小早川さん、何か俺に対して冷たくない?

 館内へと入って行った2人をどこか落ち着かない気持ちで眺めていると、後ろから未島に声を掛けられた。

 

「おやおや。今井氏、あなた小早川女史に何かしましたかな?」

「いや、別に特には……」

「あれは確実に爆弾ついてるフェーズですね」


 未島の横で高峰も話に入って来た。顎に手をあてて思案げな表情をしている。わざとらしいポーズをしてうっとおしいな。


「選択を間違えたんじゃないですかね? 爆弾つきましたね。警戒モードですよ。今井さん」

「爆弾って何だよ……」

「ひゅひゅひゅ、まぁまぁ。我々の気のせいかもしれませんし、まずは入りましょう」


 未島に肩をぽんと軽く叩かれた。

 俺に心当たりは無いが、何だか様子がおかしい気はする。連絡を俺から取らなかったから拗ねてる……とか? え、それなら言ってくれたらいくらでもさぁ……するじゃん? それこそ電話だって良いわけだし?


「俺は忠告しましたからね。爆弾が爆発するとヤバいですよ」


 未島に続き、高峰もわけのわからない事を言って博物館の中へと入って行ってしまった。

 心にずしんと何かがのしかかったような重さを感じるが、とりあえず博物館へと入る。俺は何もしてないし……。

 いや、俺達はお揃いのキーホルダー買ってるし。小早川さんも今日付けてるだろ? 強いて言えば俺から連絡を取らなかった事に対して拗ねているんじゃないかなと思う。そうだったか。乙女心は難しいな。乙女心と秋の空ってね。季節は冬だけどな。

 

 常設展示は地下2階にあるらしく、みんなで連れ立って階段を降りた。

 平日の午前中の為、誰もおらず、美魔女と小早川さん、未島と高峰がペアとなって展示を見学し、1人あぶれている俺はゆっくりと自分のペースで展示を眺めていた。

 フロアの真ん中に来ると、そこの場所が美魔女が特にお勧めする刑罰部門の展示のようでおどろおどろしい展示物が静かに、そして存在感を放ち置かれている。

 これがさっき美魔女が言ってたヤツかよ……。

 あまりの物々しい雰囲気にごくりと唾を飲み込んだ。

 木製の展示物が置かれている中に、ヒトの形、女性の形をした黒色の像が置かれている。像は左右に開かれる仕組みで像の中は空洞。左右の扉には長い釘のような物が突き出している。

 どうやらこの女性の形をした像の中に人を入れて左右の扉を閉める仕組みのようだ。釘が異様に長い……これ、釘は体を貫通するんじゃないのか?

 あと、この像。女性だけど聖母マリアとかそういうのをモチーフにしてるんじゃ……。聖母マリアってキリストの母親だろ? そんなモチーフの物に串刺しにされるって一体どうなってるんだよ。悪趣味過ぎて胃がムカムカしてくるような気がする。

 苦痛を与える事への想像力に戦慄を覚える。人間の所業じゃないだろ……これ。何をしたらこの中に入れられるんだよ……。殺人とか放火とか?

 肝を冷やしていると、遠くから声が掛かった。


「そろそろ行くわよ。見学は終わり」


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