↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
11章 駿河大学_チキンのトマト煮(もうわけがわからない)
PR
61/69

様子がおかしい

 クリスマスも過ぎ、あっという間に正月になり、そして大学も始まった。

 小早川さんとは一緒にツリーを観に行って以降、特に彼女からの連絡は無かった。俺も自分から連絡をすることはしなかった。でも、俺には分かる。なぜならお揃いのキーホルダーがあるから。

 気持ちは通っている。そんな電子機器の連絡なんて上っ面の物よりも俺達はずっと奥深くで繋がっているんだ。

 そう思いながらボディバッグにつけたペンギンのキーホルダーを眺めていると目的の大学のある最寄り駅に着いた。

 電車から降りると、他の車両から降りてきた人達の流れに乗って改札を出る。

 懐かしいな。

 あぁ……前に来た時と何ら変わらない駅前の風景。高校生の時、ここの駅にある塾に通ってたしな。

 駅前には書店があり、目の前のビルには大手学習塾の看板がいくつも掲げられている。学生の町という雰囲気を惜しみなく醸し出していた。ここはそんなに大きな駅じゃないが利用者は多いんだよな。

 駅前の本屋の入り口付近で立っていると、改札からは次々と見知った顔が出てきた。

 

「お疲れ様ですぞ。ひゅひゅひゅ」

「どうも…………」


 未島と高峰のコンビだった。この2人が一緒にいるのは珍しい。


「電車を降りたらそこにいたんですよ。挨拶は既に済ませてあります」


 カマキリのような顔をして何でも無い事のように高峰が言った。別に言わなくても良い余計なひと言多いんだよなぁ……高峰は。

 この二人に共通する話題なんてあるんだろうか。一人は学歴コンプレックスを拗らせているのと、生まれながらの勝ち組ぼっち。

 会話なんて成立するのか?


「彼のことは美波里女史から聞いておりましてな。我々が卒業しても2~3年間は安心安泰です。なかなかに頼もしい1年生ですな」

「そうですか? 彼、偏差値偏差値うるさいですよ。拗らせてる」

「ひゅひゅひゅ、若気の至りですなぁ。1年もすればすっかり彼も鷹田の学生ですよ。ひゅひゅひゅ」


 意味深なことを言っている風に聞こえなくもないが、大して何にも考えていないはずだ。適当。未島はそんなヤツだ。


「他の人達はまだでしょうか?」


 高峰が神経質そうに腕時計をチラ見した。

 そろそろ時間だけれど……。

 改札からぞろぞろと人が出てきた中に、黒のボディスーツを着て赤いスカーフをしている人物がいた。美魔女だ。

 だから目立つんだって。なんであんなに体のラインが強調される恰好してるんだっての。コスプレ会場じゃないんだよ。学生街なの、この場所は。

 その横に肩まで伸びている髪をおろして青いセーターを着た小早川さんがいた。いつ見てもやっぱり可愛いし、美魔女を見た後の心が浄化された。隣りに地雷みたいな服装の美魔女や珍獣みたいな連中がいる異様な空間の中で、清涼剤というか心がほっとするというか、目の保養というか、とにかく可愛い。


「みんな集まりましたな」

「全員集合は珍しいわね。全員集まれるのは今日が最後かもしれないわね。集まれて良かったわ」


 美魔女が長いウェーブのかかった髪をかき上げながら言った。ふわりと芳香剤のような濃い香りが鼻についた。トイレの匂いかよ。

 

「めでたいのはわかったんですけど……あの、またその格好で校内をうろつく気ですか?」


 あまりの格好に思わず物申すとギロリと美魔女に睨まれた。


「何か問題でも?」

「いや、あるでしょ。だって高峰君が鼻血出してますし。二度目ですよ。鼻血出すの」


 高峰はティッシュで鼻を抑えているが、ティッシュには血がにじんでいた。


「ひゅひゅひゅ、まだまだお子ちゃまですなぁ。夏場なんてもっと過激ですぞ。貝だったこともありましたね。ま、私めは慣れていますが」

「か、貝?」


 高峰の鼻から出ていた鼻血はさらに量を増した。

 しかし美魔女の格好に慣れたらまずいんじゃないか? それは自分の中で大切な何かが欠けてしまった状態だと思う。

 あと貝ってなんだよ。貝って。ホントにどこでそういうの手に入れてるの?

 

「美波里先輩……ボディラインが芸術的過ぎて大学生には刺激が強いかもしれません。お腹も冷えると体に良くないですし……」

「そう?」

 

 すると美魔女は手にしていた薄手のジャンパーを羽織った。だから何で小早川さんの言う事は素直に聞くわけ?


「美波里先輩は何も着てもお似合いなので羨ましいです」

「何言ってるのよ。茉依もこういうの似合うと思うわよ。というか何を着ても似合うと思うわ。ま、バストは少しゆるいかもしれないけど。もし着たいものがあったらいつでも言ってね。貸してあ・げ・る」


 美魔女よ……やけに上からなもの言いだな。この人自分にそんなに自信があるんだな。自己肯定感高過ぎですげーや。

 小早川さんはうんともすんとも言わずににこにことしている。

 小早川さんがそんな破廉恥な恰好するわけな……良いかもしれない。いや、ちょっと待て。想像したらこれヤバいんじゃないの?

 俺も高峰みたく鼻血出すの? 出しちゃうの?

 慌てて邪な妄想をかき消した。


「さ、今日は大学に併設されている博物館に行ってから学食に行くわよ。せっかくだから博物館を見たいのよね。面白い展示があるし」


 そう言って美魔女は先に歩いて行ってしまった。

 鼻血の止まった高峰と、高峰にティッシュを差し出している未島が後に続き、俺と小早川さんが残された。

 小早川さんと目が合い、何か言おうと思って声をかけた。


「おはよう。今日は全員いて何かにぎやかだよね」

「…………」


 小早川さんは何も言わずに行ってしまった。

 え? 何? 何かあった? 

 もしかして俺の声が聞こえてなかったかな? 確かにぼそぼそと言った気もするし。

 いつもとは違う小早川さんの態度に戸惑いつつも俺も後に続いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。