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終章 王道

「懐かしい・・・。このお母様にいただいたお人形。ずっと持っていてくれてたの?」

 夕日をまるで呑み込んだかのように鮮やかなオレンジ色に染まった水面はキラキラと輝いていた。

「ええ。あの時の貴方の宝物です。」

「・・・そうね。あの時はお母様に会えなくて淋しかった。」

 そして美珠は顔を上げ、水面に映る少しぼやけた自分達を見つめた。はっきりと姿が見えない分、幼いころに戻った心地がした。

「幼いころに見て・・・夢でも何度も見たのよこの光景・・・。ずっと結婚相手があなただったらって思ってきたの。」

「もし・・・珠以は本当に死んでいて・・・国明という男しかいなかったら、あなたは本当に国明を愛せましたか?幸せになれると?」

 隣で空を見上げていた珠以はさりげなく尋ねた。

 けれどそれは国明としての心の中にずっとあった疑問だった。

 美珠が幼馴染である珠以か、それとも六人の騎士団長の国明かどちらを愛し選んでくれたのか。

「きっと、二人が別人で国明さんと珠以どっちがすきなのかと尋ねられれば、今の私は珠以と答えたでしょう。でも・・・国明さんは、何にでも逃げ腰だったあのメッキをかぶった私に何でもおっしゃってくださった。馬鹿姫とまで・・・おっしゃって。」

 美珠はいたずらっ子のように珠以を睨み付けた。すると珠以は国明として出会ったころのように美珠を上から見下ろした。

「本当に馬鹿姫でしたからね。・・・正直、あの美珠様に苛ついていました。こんな方じゃないのに。本当はもっと明るく溌剌としていらした方なのに、まるで深窓の姫君で・・・。でも時々昔の美珠様が顔を覗かせていて・・・だから、元に戻って欲しかった。戻らないのなら、それを得て欲しかったのですよ。そうでなければいつかあなたは重臣たちに飲み込まれてしまいますから。」

「その分隠すものは何もなかった・・・。あなたはすぐに私の心に入ってきて・・・。絶対に国明さんが好きになる。好きになってると何度も思いました。だから・・・もし、三年後に同じ質問をされていたら、私は国明さんを選んでいたでしょう。」

 すると珠以はすねたように水に手を浸し、水面に映る自分の顔をかき消した。

「三年で国明は珠以を超えますか。そうなると珠以としては複雑なものですね。命よりも大切な姫は、すっと現れた嫌味な男に持っていかれてしまうのですから。」

 そして珠以は気づいたように笑った。

「何の心配でしょうね・・・。これ、私は国明でもあり、珠以でもあるんです。」

「ええ、それに私今、すごく幸せなの。私の愛するたった一人の人とまたこんな風に時間をもてるなんて。」

 美珠はうっとりと水面を見つめながら珠以の腕の中にもたれていた。珠以はそんな美珠の頭を優しく撫でた。

「来年こそは、この国一の剣士となってみせます。そして美珠様にふさわしい男に。」

「もう、あんなヒヤヒヤするのは嫌ですよ。」

「はい。美珠様。」

 わざと怒った顔を見せる美珠に可愛さを感じつつ微笑んだ。

「国明さん。」

「はい?」

「珠以。」

「はい。」

すると美珠は嬉しそうに前を向いた。

「嬉しい。」

その一言美珠の一言が珠以も嬉しくさせた。

美珠はそんな珠以の笑顔に幸せを感じ、体の向きを変えた。

珠以は自分を見上げるほんの少し恥ずかしそうな美珠の頬に触れ、唇に唇を寄せようとした。

「そんな簡単に一番になれるかな。あいつ私の存在忘れてんじゃないの?」

「珠以にとったら珠利の存在なんて取るに足らないからねえ。」

「んだと!このヒヨコ!も一回言ってみな。」

「何だよ!このがさつ女!」

 珠以が直前で目を開け、慌てて振り返ると珠利、相馬を初め各騎士団長がそろって自分達を見ていた。

珠以は顔を真っ赤にして美珠から体を離した。

「ああ、もう見つかってしまったではありませんか。いいところだったのに!」

「魔央さんの言うとおりですよ!もう、相馬さんたちが騒ぐから。私もいちゃつき方の研究したいのに・・・。」

「いや、初音。私はこんな公然ではいちゃつかないぞ。」

「え?なんで?お兄様ひどい!」

「それに、お前の一番になるっていう夢は俺が阻んでやるさ。俺も強くあり続けたいからな。忠誠を誓うあの方の為に・・・。美珠様申し訳ありません。結婚が遅くなってしまいますが。」

 聖斗は美珠に笑いかけた。

そして暗守もその聖斗の言葉にフッと空気を漏らした。

「来年は面白くなりそうですね。今から楽しみです。」

 美珠は微笑み立ち上がると夕日に照らし出された王城を見つめた。

 戦闘で損害を受けた王城からは時折、王城を守る者たちの掛け声や、侍女たちの何気ない笑い声、復興に力を注ぐ人職人のかけ声が聞こえていた。

 風が美珠の髪をなびかせた。

「私にもこの国を一つにして平和にするという目標があります。皆さんと命がけで戦い守ったこの国を・・・。もう桐のような思いをする人間を出さぬために。」

美珠は振り返ると皆の顔を一人ずつ見つめていった。皆の瞳が輝いていた。

「これから、皆さんの力をもっともっともっと借りてゆくことになります。どうか、私に力を貸してください。」

 美珠はもう一度王城に向き直り、そして自分の隣に立った珠以と手を握り合った。

 これから自分が守るべきもの、目標が明確に目の前にあった。

そして達成するための仲間が後ろで自分達を支えてくれている。

「まだ私達の国づくりは始まったばかりなんですから。」

長い間お付き合いいただきありがとうございましたww

はじめたころはこれだけたくさんの方にアクセスしていただけるとは露にも思わず、とても喜んでいます(T0T)


また続編が載せられれば、お付き合いくださいw

では、暑いですがお体には気をつけて^^

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