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固有スキル『トラップバスター』と新しい街で暮らし始めた僕の話  作者: けろ
キアリーと固有スキル

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6.ミミック

いくつかの通路をマッピングし終え、3人は行き止まりにある小さな部屋へと辿り着いた。

部屋の中央には、古びた木製の宝箱が不自然に二つ、並んで鎮座している。

「キアリーちゃん、これなんか怪しいわよねぇ。確実に罠の匂いがプンプンするわ」

アーサーは腰を落とし、ロングソードの切っ先をいつでも突き出せるよう構えた。

キアリーは二つの宝箱をじっと見つめ、視界の中で明滅する紫色のラインを慎重に読み解いていく。


発動条件:左側の箱を動かす

効果:魔物ミミック。倒すと右側の箱が宝箱になる。

解除条件:右側の箱を開けると、こちらも箱になる。


「……はい。しかもこの罠、すごく巧妙です。左側はミミックですが、先にこっちを倒すと、右側が本物の宝箱に変化します。逆に、もし右側を先に開けようとすると、連動して左のミミックも、右の中身も、全部『ただの箱』になって消えちゃう仕組みです」

「……なんですって?」

アーサーだけでなく、後ろで控えていたマックまでもが、信じられないといった様子で目を丸くした。

「なるほど、左の擬態魔ミミックを先に処理せねば、右の本物も手に入らんというわけか。……若きトラップバスター君、お主の目は本当に底が知れんな」

マックが感心したように深く頷く。

「じゃあ、とりあえず左のミミックをさくっと片付けちゃえばいいのね! いくわよ!」

アーサーが鋭く踏み込み、ロングソードの剣先で左側の宝箱を小気味よくツンとつついて刺激した。

刹那、宝箱の蓋がガバッと開き、血のように赤い大きな舌と、ズラリと並んだ鋭い牙が剥き出しになる。ミミックが正体を現した。

「ギシャァァァ!」

「うるさいわね、アタシの美貌に傷がついたらどうすんのよ!」

アーサーの華麗な剣技が、一瞬にしてミミックの牙を削ぎ落とす。間髪入れず、背後からマックの詠唱が響いた。

「――『ライトニングボルト』!」

激しい雷光が暗い小部屋を照らし、ミミックの巨体を真っ芯から撃ち抜いた。焦げた匂いをさせながら、ミミックは完全に物言わぬ箱へと戻り、ドサリと床に倒れ伏す。

その瞬間、室内にカラリ……と、右側の宝箱の内部で「何かが具現化して収まった音」が静かに響いた。キアリーの予言通り、連動罠が解除され、本物の宝箱へと変化したのだ。

「やったわね! じゃあ右側を開けましょ……って、キアリーちゃん、何してるの?」

アーサーが振り返ると、キアリーは倒れたミミックの死骸の横にしゃがみ込み、神妙な顔でつついたり匂いを嗅いだりしていた。

「……うーん、やっぱりダメか。このミミック、毒素は検出されないんですけど……繊維が硬すぎる……うん、これはパスですね」

「……キアリー君、お主はさっきから、魔物を『食えるか食えんか』でしか見ておらんのか?」

マックが呆れたようにツッコミを入れると、キアリーは「だって、もったいないじゃないですか」と、はにかんだような笑顔を返した。


キアリーが「安全」と太鼓判を押した右側の宝箱に、アーサーが慎重に手をかけ、その蓋をゆっくりと押し上げた。

中から現れたのは、部屋の明かりを鈍く反射する、大量の硬貨の山だった。

「……って、なーんだ、これ全部『銅貨』じゃないの。金貨の一枚でも入っていれば最高だったのに、がっかりだわぁ」

アーサーは肩をすくめて大げさにため息をついた。しかし、その口元はどこか緩んでいる。

それもそのはず、箱の中にぎっしりと敷き詰められた銅貨は、ざっと数えても1000枚以上。ダンジョンのたった1階層目で手に入る報酬としては、完全に規格外の「破格のボーナス」だった。

「フォッフォ、贅沢を言うでないよアーサー。これだけあれば、今日のご飯は豪勢にいけるじゃろ。何より、キアリー君のおかげで無傷で手に入ったんじゃ、感謝せねばな」

マックが愉快そうに髭を蓄え、用意してきた大きな革袋に銅貨をジャラジャラと余すことなく詰め込んでいく。かなりの重量になった袋を、アーサーは「よっこいしょ」と軽い手つきで肩に担ぎ上げた。

ちょうどその時、アーサーの手元で、ギルドから支給されていたマッピング用の魔導羊皮紙が淡い光を放ち、1階層目のすべての構造が綺麗に描き出された。

「よし、これでマッピングも完了ね! この下に降りる階段も見つかったけれど……アタシたちの今回の依頼はここまで。深追いは一流のすることじゃないわ、今日は大人しく街に帰りましょ!」

「そうですね。……あぁ、早くこのウサギ肉とキノコを食べたいですね。」

キアリーは自分のリュックにずっしりと収まった「ウサギ肉とキノコ」を愛おしそうにぽんぽんと叩きながら、なんとも呑気な声を上げた。

「あんたって子は、本当にブレないわねぇ!よし決まった、今日の晩ご飯はキアリーちゃんのお部屋に突撃よ!アタシが美味しく調理してあげるわ!」

「えっ!? ボクの部屋ですか!?」

「ワシも極上のエール(酒)を持って混ぜてもらうとしようかねぇ、フォッフォッフォ」

思わぬ先輩たちの「突撃晩ごはん」の宣言に慌てるキアリーを真ん中に挟み、3人は賑やかな笑い声を洞窟に響かせながら、夕暮れ時の明るい地上へと向かって歩き出した。

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