48.ホイホイ
(……待てよ? グリコがあんなに高級レタスを気に入ってるってことは……)
キアリーの頭の中で、またしても閃きの電球がピカッと弾けた。
翌日。キアリーはボリスの青果店で仕入れたシャキシャキの高級レタスを持って、アーサーに護衛してもらいながら『黒鉄の迷宮』の第1階層へと向かった。
第1階層のあちこちにある小部屋や廊下の隅に、小さくちぎった高級レタスの葉をそっと設置していく。
「何してるの?ダンジョンの中に野菜のゴミ捨ててどうすんのよ」
不審そうな顔で腕を組むアーサーに、キアリーはニヤリと胸を張った。
「ふふふ、アーサーさん。これはゴミじゃありません……『仕掛け』ですよ!1時間後に戻ってきてみましょう!」
そして1時間後。
二人が先ほどの小部屋を覗き込んでみると――
「「っ……!!?」」
そこには、恐ろしい光景が広がっていた。
置かれたたった1枚の高級レタスの葉をめぐり、どこからともなく集まってきた2〜3匹のグリーンスライムたちが、
『私のベッド!』
『いや、僕の敷布団だ!』
と言わんばかりに、ぎゅうぎゅうに押し合いへし合いしながらレタスの葉の上にすし詰め状態になっていたのだ!
みずみずしい葉っぱの心地よさに完全に骨抜きにされたスライムたちは、キアリーたちが近づいても逃げようともせず、ただうっとりとレタスに頬摺りしている。
「嘘でしょ…!? スライムたちが自分からレタスに群がって、動かなくなってる……!?」
アーサーが目を見張る中、キアリーは落ちている虫捕り網のようなもので、レタスごとスライムたちをスポッと網で救い上げた。抵抗すらされない。超・安全な無血捕獲である。
「やりました……! 名付けて『グリスラホイホイ』の完成です!!」
「マジか……! 捕獲用の麻痺毒も魔法も不要じゃないの!!」
さっそくこの発見をギルドで発表すると、駆け出しの冒険者たちは大歓喜した。
「すごいぞ! レタスの端切れを置いておくだけで勝手にグリーンスライムが捕まる!!」
「剣を振って傷つける必要もないから、生け捕り品質も完璧だ!」
「キアリー社長、レタス代を差し引いても大儲けだよ!!」
こうして、キアリーの「野生グリーン買い付けルート」は爆発的な効率化を達成。
高級レタスという思いがけない「撒き餌(寝床)」によって、スライムプラントには毎日山のようなグリーンスライムが運び込まれ、品薄状態だった整腸薬の生産ラインは一気にフル回転を始めるのだった。




