44.ゴールド詐欺
「スライム天日干し事業」の成功により、キアリー社長のもとには連日、さまざまな提案や商談が持ち込まれるようになっていた。
医療を支える『グリーン』
畜産を支える『ブルー』
高級珍味の『イエロー』。
この3大ブランドの経営基盤は磐石であり、キアリーとしては当面の間、この3種を軸にビジネスを展開していく方針を固めていた。
……が、事業が大きくなればなるほど「怪しい輩」もまた集まってくるのが世の常である。
「やあやあ、キアリー社長! 今日は素晴らしい『極上のビジネスチャンス』をお持ちしましたよ!」
プラントの応接室。ヘラヘラとした胡散臭い笑みを浮かべた男が、大事そうに抱えてきたアクリルケースをテーブルの上に置いた。
そのケースの中でぷるぷると黄金色の輝きを放っていたのは――なんとゴールドスライムだった。
「これは……ゴールドスライム!?」
キアリーが目を見張ると、男は待ってましたとばかりに身を乗り出してきた。
「ええ! 伝説の希少種です! これをキアリー社長の技術で繁殖させて干物にでもすれば、王族や富裕層に凄まじい高値で売れますよ!今ならたったの300万ゴールドでお譲りします!社長ほどの技術と資金力があれば、こんな投資、一瞬で回収できますって!」
「……なるほど」
一見すると夢のような話だ。
だが、キアリーの横には、腕を組んだアーサーが鋭い眼光で男を睨みつけながら座っている。
そして何より――キアリーの目には、目の前の「商談」そのものが明確な『罠』として視認されていた。
キアリーがそっと『トラップバスター』を発動させ、男を注視する。
【発動条件】:スライムを男の言い値(300万G)で買う
【効果】: 黄色く着色されたただのブルースライムなので大損する
視界に浮かび上がる、あまりにも直球で情けない詐欺のカラクリ。
キアリーは深々とため息をつくと、冷ややかな視線を男に向けた。
「……これ、ペンキで色を塗っただけのニセモノですよね。ただのブルースライムじゃないですか。さっさとお引き取りください」
「っ……!? な、なに言ってんだ! 本物だよ!!」
「僕の固有スキル『トラップバスター』でバレてますよ。……アーサーさん、追い返してください」
商談が決裂し、詐欺が見破られたと悟った男は、一瞬で顔を般若のように歪ませた。懐からナイフを抜き差し、キアリーへ向かって飛びかかる!
「てめええええ!! 調子に乗りやがって、金出せやぁぁぁっ!!」
「はいはい、毎度どーも」
すっかり慣れっこになったアーサーが、ため息まじりに一歩前に出た。
『パーフェクトウォール』!!
ドゴォンッ!!!
男はキアリーの髪の毛一本にすら触れることができず、アーサーが展開した見えない絶対防御の壁に激突。そのまま自爆する形で弾き飛ばされ、壁に激突して白目をむいて気絶した。
「ふう……またこのパターン。最近、キアリーが儲けてるって聞いて集まってくるハエが増えたわね」
アーサーが気絶した男の襟首を掴んで引きずっていく。
「本当に助かります、アーサーさん。ボク、戦闘力は街の子供以下ですから……アーサーさんがいてくれないと一発で身ぐるみ剥がされちゃいます」
「気にしないで。このくらい朝飯前よ!」
詐欺を秒で見抜く社長の『トラップバスター』と、襲いかかる暴漢を返り討ちにする『パーフェクトウォール』。
すっかり名コンビ(?)となった二人に見送られ、今日も哀れな詐欺師が一人、ギルドの警備隊へとドナドナされていくのだった――。




