42.イエロースライムの生態
イエロースライムの生態を観察。
イエロースライムはブルースライムほど大きく成長せず、3mほどで成長が止まり、その後は破裂することもなく、プラントの中で薄く広がったり、縦に伸びたりといった伸縮を繰り返していた。
イエロー同士が縦に伸ばした身体の先をくっつけると、触れた部分がポロリと取れて、それがまた新たなイエローとして成長していく。つまりは、明確な繁殖行動をして、個体を増やしていく生物なのだということがわかった。
しかし、元のスライムは子(?)を産み落とすと、その分、小さくなってしまい、再び成長することもなく、20cmほどまで小さくなった成体は核が割れて消滅してしまった。
キアリーの自宅のダイニングテーブルには、「イエロースライム研究」の集大成とも言える3種類の干しイエローが並べられていた。
【幼体パターン】: 鮮やかな黄色。みずみずしく、見た目は一番美味しそう。
【3m未出産成体パターン】: 少し色は薄いが、程よく水分が残り弾力がある。
【1m縮小成体パターン】: 子を産んで縮んだ親スライム。表面がカサカサにひび割れている。
そして、テーブルの特等席には、約束を果たされて上機嫌なギルドの受付嬢エレンの姿があった。
目の前には、オークさんの家から届いたばかりの極上ミノタウロスステーキと、ミノ姐たちの濃厚チーズが鉄板の上でジュウジュウと音を立てている。
「ふふふ……約束、ちゃんと守ってくれましたね、キアリーさん♪」
「は、はい! エレンさん、今日はこちらの『干しイエロー』の食べ比べのご協力もお願いします!」
キアリー、アーサー、ステラ、マック、そしてエレンの5人で、まずは薄くスライスした各パターンの干しイエローを試食してみることにした。
まずは【幼体】から。
「……ん。食感はぷるっとしてて悪くないですけど、ちょっと味が薄いですね。料理のアクセントとしては主張が足りないかも」
ナイフとフォークを動かしながらエレンが分析する。
次に【1m縮小成体】。
「ぶほっ……!! し、塩辛ぁぁぁっ!?」
一口食べたアーサーが思わず水をガブ飲みした。
「フォッフォッフォ……これは凄まじいのう。水分が抜け切って旨味どころか塩分が凝縮しすぎて、まるで塩の塊をかじっとるようじゃ」
マックも苦笑いしながら頷く。
そして最後に、本命の【3m未出産成体】を削り、熱々のミノタウロスステーキの上へふりかけ、さらにそのまま一口スライスして口に運んだ。
「「「「……!!!?」」」」
「……美味しい……ッ!!」
エレンの目がパッと輝いた。
「口に入れた瞬間、濃厚なコクと、深い旨味が広がります! ステーキの脂と混ざり合うと、肉の味が一段上の次元に引き上げられますわ!」
ステラも絶賛し、上品に頬を緩ませる。
3メートルまで育ち、かつ交配(出産)を行う前の成熟個体。
これこそが、一番水分と旨味のバランスが取れた黄金のタイミングだったのだ。
「うーん……でも、大満足ですけど、まだまだ改良の余地はありますね」
エレンは肉を美味そうにほお張りながら、プロの美食家のような目つきで付け加えた。
「3メートル成体の味は素晴らしいですが、削った時のノリやすさや、おつまみとしてスライスした時の『熟成期間』をもう少し工夫できれば、王宮の晩餐会に出しても恥ずかしくない超高級珍味になりますよ!」
「なるほど……熟成期間と、干す前の下処理ですね……!」
キアリーのメモを取る手が止まらない。
単なる「危険モンスター」だったイエロースライムが、キアリーの観察眼とエレンの鋭い舌によって、誰も食べたことのない「至高の高級珍味」へと着実に昇華されていく。
「スライム実業家・キアリー」の探究心とビジネスは、まだまだ留まることを知らなかった――!




