34.報告
地上へと生還した4人は、そのままの足で冒険者ギルドへと向かった。
ギルドマスター室の扉を勢いよく開けると、デスクに山積みの書類と格闘していたデイビッドが、驚いたように顔を上げた。
「おお、生きて帰ったか! しかもなんだその荷物は……って、リュックからめちゃくちゃ美味そうな肉の匂いがするぞ! まさか、第3階層のモンスターハウスを突破したのか!?」
デイビッドが身を乗り出すと、キアリーは少し誇らしげに、しかしどこかシュールな笑みを浮かべながら頷いた。
「はい! デイビッドさん、聞いてください。『黒鉄の迷宮』の真相がすべてわかりました!」
そこからキアリーたちは、デイビッドに対して衝撃の事実を次々と報告していった。
『黒鉄の迷宮』の実態について
迷宮は未踏破の危険なダンジョンではなく、地下に暮らすオーク一家が営む広大な「ミノタウロス農場兼ご自宅」である。
第1階層の資源について
防犯と公害対策用のギミックや罠はすべて撤去・解除されるため、今後マジカルマッシュルーム、ホーンラビット、そしてグリーンスライムは、第1階層でこれまで通り自由に狩って食材にしてよしと許可が下りた。
ミノタウロス製品の流通について
ブルースライムの巨大化による詰まりが解消されたため、ストップしていたミノタウロスの肉やバター、チーズなどの市場流通が今後は完全に元通りになること。
「な、なんだって……!? あの迷宮はオークの農場だっただと……? そしてあの高級肉や乳製品が、また市場に流れるだと……!?」
デイビッドはあまりの斜め上の真実に、デスクに突っ伏してしばらく言葉を失っていた。しかし、リュックから取り出された極上のミノタウロスステーキ肉と濃厚なチーズの実物を目の当たりにすると、一瞬で「最高の結果だ!」と満面の笑みに切り替えた。
「ガハハハ! 最高じゃないか! 危険な討伐クエストが、まさかの一家との貿易交渉になるとはな! お前たち、大金星だぞ!」
デイビッドが豪快に笑い飛ばす中、キアリーは少しだけ頬を染めながら、最後にそっと付け加えた。
「あ、あと……今後、牛舎の干物作りを頼まれたので、キアリーは定期的に雌ミノタウロスの牛舎に顔を出すことになりました……」
その言葉を聞いた瞬間、ステラが意味深な笑みを浮かべ、アーサーが「おいおい、牛にモテモテとはいい身分だな」と肩を叩き、マックが「フォッフォッフォ、お土産のミルクを楽しみに待っとるよ」と髭を揺らす。
こうして、『黒鉄の迷宮』を巡る冒険は、世界一平和で、最高に美味しい大団円を迎えるのだった。




